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21世紀の資本主義とわたし

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"資本主義"っていう世の中と、そんな世の中を毎日普通に暮らしているわたし達の何気ない風景を短編小説にしました。
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ゲーム実況Part1

ゲーム実況Part1

ゲーム狂いの悪友は数ヶ月前からYouTubeに動画を投稿している。口が悪くて態度もデカい。でもエイムが抜群にいいので、流行りのFPSやTPSのスーパープレイ集と短い解説動画を立て続けに投稿すると、すぐ右肩上がりにフォロワーが増えていった。賛否両論ありつつも、歯に衣着せぬ物言いがわりと人気の秘訣らしい。友人は言う。

「この、ここの箇所をマーカーみたいに囲って矢印つけたいんだけど、クソみたいにムズい

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piece of cake

「さて」

と、わたしは諦めてノートパソコンを一旦閉ざして、向かいに座る夫へと、向き直る。

「お疲れ様」

おそらく夫は、今日の分の日課が無事終了したのだと思ったのだろう。しかし残念ながらわたしが発したのは、そんな一区切りの「さて」ではなかった。お疲れ様に至るには、まだ前途は多難である。さて……。

「まだ終わってません。今日の更新分」

「そうか。じゃあプレお疲れ様」

かれこれ半月程は続けた

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スターバックス同盟

スターバックス同盟

「山井さぁ……」

と、彼女は正面で同じく黙々と作業に勤しむ彼に話しかける。話しかけられた方の彼はPCのディスプレイから目を離さずブラインドタッチも休めずに、答える。

「何」

「ちょっと聞いてもいい?文法」

「条件は?」

「数学の宿題、写させてあげるよ」

「……分かった、じゃあ10分だけ」

と、彼はようやく手元の作業を一旦休止し、彼女へと顔を向ける。やや痩せ型で小柄めの黒髪の彼は、ごく

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いつかパリに行ってみたいっていう時のいつかって、いつ?

いつかパリに行ってみたいっていう時のいつかって、いつ?

「英語よりもフランス語のほうが耳に馴染むっていうか、抵抗感ないよね」

というまた唐突な一言から、今日も会話が始まる。とある会社の昼休み。アラサーアラフォーあたりの女性4人のグループで、毎日あれやこれやと日替わりで話題が飛び交う。今日はどうやら語学のお話らしい。カップ麺とおにぎりを交互にほうばりながら、事の発端である彼女は続ける。ちなみに彼女曰く、「英語は"はうわーゆー、あいむふぁいんせんきゅー"

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もういない未来の自分と、わたし

もういない未来の自分と、わたし

こんばんは。もうすっかりこんな時間です。おそろしいことに、新しいiPhoneをAppleストアで買うだけでこんなに手間取ってしまうなんて。わたしは予定就寝時間があと1時間に迫る中、それでも筆を取るのです。今のご時世、筆は取らずとも文字は打てるし、なにより打った矢先に世の中へ発信できちゃうのですから、大したものですね。筆も紙もいらない、これで最後に読み手がいてくれれば、わたしも立派な物書きですね。う

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