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はじまりは歴史から

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2023年ポーランド総選挙の総括

2023年ポーランド総選挙の総括

 2023年10月15日に行われたポーランド総選挙ではこれまで8年間政権をとり続けてきたPiS(法と正義)が得票数では最多となりながらも連立を組めず、過半数を取ることができないため政権運営がほぼ不可能という結果になった。他方で最大野党のKO(市民連合:市民プラットフォームを中心とする連合)はPSL(農民党)とポーランド2050から成る第3の道、それに新左派とともに連立を組むことで政権奪還に成功する

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ウクライナ農産物輸入禁止の表と裏

ウクライナ農産物輸入禁止の表と裏

ポーランドがウクライナからの穀物を含む農産物の輸入を禁止すると4月15日に発表したことが問題になっている。
 ポーランドがウクライナからの農作物の輸入およびポーランドを経由することを禁止すると発表すると、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリアも追随して禁輸を言い始めたからだ。この動きに対し欧州委員会は、今回のポーランドの一方的なウクライナへの禁輸は、EUの法に反するもので、認めることはでき

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バイデン大統領のポーランド滞在日程

バイデン大統領のポーランド滞在日程

キーウを電撃訪問したバイデン大統領は、ポーランドから入国だったようです。バイデン大統領のポーランド訪問は明らかだったものの、その日程についてはなかなか定まらなかったのはそのためか。

今日、doRzeczyにバイデン大統領のポーランド滞在中のおおまかな日程が記載されていたので、こちらにも載せておきます。参考になれば。

バイデン大統領ポーランド訪問の主な日程(括弧内は日本時間):

2/21 ワル

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ミサイル着弾は火種になり得るのか

 ポーランドにロシア製ミサイルが着弾し、ポーランド市民が2名亡くなってからちょうど1ヶ月になる。それがロシアからの攻撃によるものなのか、確認されるまでは世界中で話題になり、各国のメディアでも大きく取り上げられた。その後、ポーランドでも米国をはじめとする西側諸国でも、ミサイルはロシア製ではあるがウクライナから撃たれた迎撃ミサイルの一部がポーランドに着弾したという見方が強まった。それとともにメディアで

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2022年5月22日、ポーランドのドゥダ大統領がウクライナ国会で行ったスピーチの要旨

2022年5月22日、ポーランドのドゥダ大統領がウクライナ国会で行ったスピーチの要旨

2022年5月22日にウクライナの国会でポーランドの大統領、アンジェイ・ドゥダが行ったスピーチの要旨です。ポーランド語から要旨を訳したもので、完訳ではありません。

ロシアの侵攻が始まった数時間後の2月23日にここにいた。その時、ポーランドはウクライナをとり残すことはしないと言った。4月上旬に、破壊された町、ウクライナの悲劇を見た。世界が自由で公正であるためには、ウクライナを放っておいてはならない

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在ポーランドウクライナ大使が語ったこと

在ポーランドウクライナ大使が語ったこと

アンドリイ・デシチツァ在ポーランドウクライナ大使がポーランドのメディアに語ったこと。
ロシア軍はウクライナから撤退しなくてはならない。交渉の最初からロシアはウクライナの降伏、クリミアの譲渡、非ナチス化、非武装化を望んでいた。時間の経過とともにロシアが言うことは少しずつ変わってきた。2月24日の戦争勃発行前の行政国境に同意し、少しずつ要求を取り下げている。
なぜプーチンが戦争を始めたか説明するのは難

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ロシアのウクライナ侵攻で見えた現実

ロシアのウクライナ侵攻で見えた現実

ロシアはウクライナ侵攻では、容易くキエフを陥落し、短期戦で勝利をおさめる読みだったのだろう。だが、そうはいかず、すでに10日以上経った今でもキエフ陥落は達成できていない。ドネツクとルガンスクを手に入れることは予測してもウクライナ全土を戦火に巻き込むことになろうとは、ほとんどの人が思っていなかったのではないだろうか。ロシアの攻撃が始まり、一部の国を除く全世界がプーチン大統領に対抗するまでに発展した。

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ロシアのウクライナ侵攻

ロシアのウクライナ侵攻

ウクライナ情勢についてまとめた論考を書こうと準備をしているところでしたが、急速に情勢が変化していくなか、最新の情報をコメントを交えて更新していく方が良いと思ったので、そうすることにします。
すでに日本でも報道されている通り、プーチン大統領がウクライナへの「軍事作戦」の開始を発令した。そのなかで、プーチン大統領は「『軍事作戦』の目的は『住民の保護』でウクライナを占拠する気はない。だが『非軍事化』と『

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不法移民流入で揺れるポーランド・ベラルーシ国境

不法移民流入で揺れるポーランド・ベラルーシ国境

EUの東の国境でもあるポーランドとベラルーシの国境では、イラクを中心とする大量の不法移民が停留し、その流入を阻止する状態がすでに3ヶ月以上続いている。そしてその状況は悪化するばかりだ。これはロシアのプーチン大統領の後ろ盾によるルカシェンコ氏の策略だという点で、ポーランドの与野党、EUの間で考えは一致している。だが、移民を入国させるべきか、移民の人道的扱い、支援という点では与野党、EUの間で意見が割

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トゥスクの帰還

トゥスクの帰還

これまで何度もポーランドの政界へ復帰することを匂わせながらも戻ることのなかったドナルド・トゥスク(元ポーランド首相、元EU大統領)が、トゥスク曰く「100%戻ってきた」。市民プラットフォーム(PO)の会場は興奮に包まれ、反政府系メディアでの報道も「救世主」への期待感に溢れていた。市民プラットフォーム(PO)の党首、ボリス・ブトゥカの人気が低迷し離党者も増えていた市民プラットフォーム(PO)としては

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ノルドストリーム2に関する雑感

ノルドストリーム2に関する雑感

「歴史は繰り返される」と言われるように、現在起きている状況を見て過去の類似した出来事が脳裏に蘇ることはよくある。
ノルドストリームについては2006年に当時、国防相だったラドスワフ・シコルスキが、ノルドストリームの建設を批判するとき、リッベントロップ・モロトフ協定を引き合いに出した(その後、シコルスキは考えを180度転換する)。リッベントロップ・モロトフ協定は独ソ不可侵条約締結時に交わされた独ソ間

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ノルドストリーム2建設に対する米国の制裁解除が引き起こす脅威

ノルドストリーム2建設に対する米国の制裁解除が引き起こす脅威

アメリカのバイデン大統領は、トランプ前大統領がノルドストリーム2の建設に対して課していた制裁を解除する決断を下した。バイデン大統領は「ノルドストリーム2の建設には反対だ」と述べたものの、制裁を解除することで認めたも同然で、実際にノルドストリーム2が開通すれば、これは地政学的には大きな意味を持ち、中東欧諸国に暗雲をもたらす可能性も高い。

多くの問題を孕む建設

 周知の通り、ロシアのガスはこれまで

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妊娠中絶問題と「女性のストライキ」

妊娠中絶問題と「女性のストライキ」

ポーランドでは人工妊娠中絶がほぼ全面的に禁止となり、女性の権利と自由が奪われたことへの抗議デモが激化している。10月22日の憲法裁判の判決とはどういう内容だったのか。今回のみならず、これまでも何度か問題にあがっていた人工妊娠中絶の問題点は何なのか。激化とともに暴徒化している抗議デモ主導者の要求とは?そして政府はこの問題にどう対応すべきだったのだろうか。私見とともにまとめてみた。

憲法裁判所の判決

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ベラルーシの現状と今後についての私見

ベラルーシの現状と今後についての私見

私はベラルーシの専門家ではありませんが……ポーランドのメディアでも連日報道されるベラルーシの状況を読み、考えたことを「はじまりは歴史から」のツイッターでツイートしたので、それをここにもアップします。私の考えは最後に追加したNewsweekの筆者とは異なりますが…。
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ベラルーシの大統領選の不正行為に反対した市民運動は、今後どのような展開を見

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