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好むもの記

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好きなものの記録。基本雑記です。
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日記:野菜を焦がす

日記:野菜を焦がす

最近、折に触れ野菜を焦がしている。
別に失敗しているわけではなく、単に料理のさいに野菜に焦げ目がつくまで火を通すのがちょっとしたマイブームになっているのだ。

きっかけはTwitterで見かけたまいたけのパスタのレシピだった。

レシピの通り、まいたけが焼けるのを待っていると、これが存外に楽しい。じゅうじゅうという音、漂ってくる香ばしい香り、満を持してまいたけをひっくり返すと見える素敵なこげ茶色。

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日記:国会図書館で赤染晶子『じゃむパンの日』を読む

日記:国会図書館で赤染晶子『じゃむパンの日』を読む

国会図書館へ行くと、なぜか国会図書館で読もうとした本ではなく国会図書館へ持って行った本(空き時間に読む用)の読書がはかどるので、その感想を書きたくなります。今回は赤染晶子『じゃむパンの日』(palmbooks, 2022.)。

国会図書館へ行き、マンガを読む人の集いを見かける今日も今日とて国会図書館に行った。前回同様、鹿の毛玉について調べるためだ。

前回は目新しくて、いちいちきょろきょろしてい

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津村記久子『苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?』

津村記久子『苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?』

私は毎日日記をつけていて、「前日こねたパン生地が発酵してあまりにもふくらみ、タッパーの蓋を自力でこじ開けているのを発見した」などしょうもないことをせっせと書いては、それでも夜寝る前に「これもあれも書けていない」と思いつつ眠りに落ちています。頑張って日記を書いても、全部を記録できないなら意味がないのでは? そもそも誰にも読まれないし……

などとつらつら考えている中で、津村記久子『苦手から始める作文

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はじめてパンを焼く

はじめてパンを焼く

長年、パンを焼くのは「きちんとした人」だと思っていた。分量をきちんと量れる人、小麦粉だらけになったキッチンの収拾をつけられる人(小麦粉の袋、絶対閉めるときにばふって粉が舞いませんか?)という「きちんと」だけではなく、自分の生活を「きちんと」営める人、あるいはパン作りという行為そのものを愛している人。

なんというか、パン作りはおしゃれな雑誌に載っているもので、私に手の届くものではなかったのだ。そう

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海の無い街、夜の汽笛

海の無い街、夜の汽笛

海のない街にある私の部屋には、毎晩汽笛が鳴り響く。

引っ越してきてからしばらく経ったある晩、ぼおおおん、と巨大な腹に響く音を初めて聞いたとき、これは幻聴だと思った。隣の部屋にいる同居人と「聞こえた?」と尋ね合い、私の耳の問題ではないと胸をなでおろす。

まるで船の汽笛みたいな音だが、近所の川では汽笛を発するような船は見かけないし、あったとしても夜中に朗々と轟音を鳴り響かせていれば近所から非難轟々

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『私の生活改善運動』 / ウズベキスタンのクッションカバー

『私の生活改善運動』 / ウズベキスタンのクッションカバー

「生活の先輩」に出会えるエッセイ昔からエッセイが好きでした。例えば向田邦子や米原万里、C・W・ニコル。小学生の頃、中学受験向けの塾に通うのは苦痛でしたが、国語の教科だけは必ず小説か随筆の抜粋を読むことができる楽しい時間で(問題の出来はともかく)、彼ら三人にもその時出会っています。当時は冒険や自立した都市での生活、海外へのあこがれなどがないまぜとなって貪るように読んでいました。

大人になって、曲が

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錠剤をシートからぷちり、と取り出す瞬間が好き

錠剤をシートからぷちり、と取り出す瞬間が好き

ニコルソン・ベイカーの小説『中二階』的な、とても些末なことが好きだという話を書きます。

毎日、低用量ピルを服用している。もうかれこれ2年くらいだろうか。私にはピルを飲むときの、ごくごくささやかな楽しみが2つある。

(私は生理痛の痛みや煩わしさからピルを服用しており、その点でものすごい恩恵を受けている。ただ、ここで書くのはシートから薬を取り出す時のごく一瞬についてだ。)

①新しい錠剤シートに曜

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7/26 えのきわかめ

自炊をするようになってから5年以上経つ。1年目は「きょうの料理ビギナーズ」を観たりして技術を磨こうとしていたが、2年目以降はもっぱら手間がかからないことに特化し、最近はもはや肉と冷凍野菜を炒めたものだけ食べている。

それすら面倒臭くなったときに登場するのがえのきわかめだ。
えのきの石づきだけ落とし、長さを半分に切る。切ったえのきは耐熱ボウルに入れ、同じボウルに乾燥わかめをバラバラと流し入れる。ラ

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7/25 玉ねぎの味噌汁

父方の祖母はサラダの生野菜の断面という断面に塩水を塗る人で、夏休みに父の実家に帰るたび、私はトマトもきゅうりも全部しょっぱいからやめてくれ、と文句を言っていた。私が母の料理を残すと怒る父もその時は一緒に文句を言っていて、彼も祖母の前では子どもなんだなということを人生で初めて認識した。塩には食中毒や退色を防ぐ意味合いがあったのだろうが、それでもあれはしょっぱかった。

一方で、祖母が作る玉ねぎの味噌

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7/24 外出先でサンダルからスリッパに履き替える時焦らぬ人になりたい

夏の暑い日、どうにか気力を絞り出して炎天下の中出掛けなければならない時。ただでさえ顔の半分をマスクで覆わなくてはならないので、できれば身につける衣服の面積を最小限にしたい。とすれば、真っ先に外す候補に上がるのは靴下だ。素足でサンダルは素晴らしい。ちょっとばかし足の甲が日焼けしたって、足の通気性がいいのは最高だ。

というわけで、私は夏の間、歩き回ることがあらかじめ分かっているとき以外は好んでサンダ

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