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日記:国会図書館で赤染晶子『じゃむパンの日』を読む
国会図書館へ行くと、なぜか国会図書館で読もうとした本ではなく国会図書館へ持って行った本(空き時間に読む用)の読書がはかどるので、その感想を書きたくなります。今回は赤染晶子『じゃむパンの日』(palmbooks, 2022.)。
国会図書館へ行き、マンガを読む人の集いを見かける今日も今日とて国会図書館に行った。前回同様、鹿の毛玉について調べるためだ。
前回は目新しくて、いちいちきょろきょろしてい
津村記久子『苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?』
私は毎日日記をつけていて、「前日こねたパン生地が発酵してあまりにもふくらみ、タッパーの蓋を自力でこじ開けているのを発見した」などしょうもないことをせっせと書いては、それでも夜寝る前に「これもあれも書けていない」と思いつつ眠りに落ちています。頑張って日記を書いても、全部を記録できないなら意味がないのでは? そもそも誰にも読まれないし……
などとつらつら考えている中で、津村記久子『苦手から始める作文
海の無い街、夜の汽笛
海のない街にある私の部屋には、毎晩汽笛が鳴り響く。
引っ越してきてからしばらく経ったある晩、ぼおおおん、と巨大な腹に響く音を初めて聞いたとき、これは幻聴だと思った。隣の部屋にいる同居人と「聞こえた?」と尋ね合い、私の耳の問題ではないと胸をなでおろす。
まるで船の汽笛みたいな音だが、近所の川では汽笛を発するような船は見かけないし、あったとしても夜中に朗々と轟音を鳴り響かせていれば近所から非難轟々
7/25 玉ねぎの味噌汁
父方の祖母はサラダの生野菜の断面という断面に塩水を塗る人で、夏休みに父の実家に帰るたび、私はトマトもきゅうりも全部しょっぱいからやめてくれ、と文句を言っていた。私が母の料理を残すと怒る父もその時は一緒に文句を言っていて、彼も祖母の前では子どもなんだなということを人生で初めて認識した。塩には食中毒や退色を防ぐ意味合いがあったのだろうが、それでもあれはしょっぱかった。
一方で、祖母が作る玉ねぎの味噌