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日記:野菜を焦がす

最近、折に触れ野菜を焦がしている。
別に失敗しているわけではなく、単に料理のさいに野菜に焦げ目がつくまで火を通すのがちょっとしたマイブームになっているのだ。

きっかけはTwitterで見かけたまいたけのパスタのレシピだった。

レシピの通り、まいたけが焼けるのを待っていると、これが存外に楽しい。じゅうじゅうという音、漂ってくる香ばしい香り、満を持してまいたけをひっくり返すと見える素敵なこげ茶色。焦がすことで味にもコクが出るのだから、ほぼほぼ五感を網羅したと言っていいエンターテイメントだ。
(ちなみに、まいたけは石突きを取る必要なく手で裂けるという点で私の中のベストきのこ第一位である)

思えば小さい頃も、家事の手伝いなんて一切しなかったけれど、玉ねぎをバターで炒めるフライパンの番だけは買って出た。番といっても、木べらでときどき焦げ付かないように混ぜるだけだ。ふわっとたちのぼる玉ねぎの素敵な香りをむさぼるように吸い込めるという役得ほしさに、母が玉ねぎを炒めだすとすかさずキッチンに飛んで行って「私みておくよ」と言っていた。今思うと普通に料理の邪魔だが、追い払いもしなかった母には感謝している。

そういえば一人暮らしと同時に自炊をはじめたころは、ひたすら肉に片栗粉をまぶして茶色く揚げ焼することに熱中していたな、と思い出す。きつね色に焼けた食材はそれだけでおいしそうだし、しかも「粉をまぶす」というひと手間を加えることが、あの頃はなんだか料理上手の証のような気がしていたのだ。
実家を出て数年が経ち、自炊が日常と化すとすっかり忘れていたが、あの頃は毎回夕食を作るたびにちょっとはしゃいでいた。今、野菜を焦がしながら少しだけ高揚感を取り戻している気がする。

今日は有賀薫さんの「焦がしキャベツスープ」の真似をして、白菜を焦がしてスープにする予定だ。白菜を熱した油の上にあけ、じゅう、という音ともに素敵な香りがただよいだす瞬間がもう待ちきれない。


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