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迷いこんだ猫のお話15
「そう言う事だ。」
「君が今日の出来事をどの様に考えるのか。過去の出来事と紐付けて考えて、今この現実があるのは必然と考えるのであれば、それは運命と呼べるんじゃないのかな。その結論に至るかどうかは、君次第だ。」
あの日、河川敷でモグラと出会わなかったら
三毛猫の存在に気付かなかったとしたら
あの日、もしも違う道を歩いていたら
幼い頃に仲間と出会わなかったら
自分が群れから抜け出さなかったと
迷い込んだ猫のお話 14
「教えて欲しいんだ。その鈴を扱ったお前ならその運命てやつを少なからず分かっている筈だろう。俺には分からなかったんだ。何を持ってして運命と言える事なのかを。動物が生きていく事に根拠を持ち、説明をつける事など不可能では無いのか?俺は、自分から独りになる事を選んだ。そして同時に、その運命についてひたすらに考えてきたんだ。しかし答えは出なかった。その実態、真実をを掴む事が出来ずにいた。だけどお前に救われた
もっとみる迷い込んだ猫のお話Ⅻ
薄暗い空気の中に響き渡る2匹の動物の鳴き声。今、その鳴き声は彼らにとって、互いの生命と価値観について定義する"言葉"となっている。
「 ここまで来たら教えてくれ。まず、その鈴は一体何なのか。そしてお前はそれを誰から、どの様にそれを手に入れたのかを」
「その鈴は大切に想う人を持つ者だけが手にする事が出来る鈴なんだ。そして、その者の命を救う為に一度だけ効果を発揮するんだ。僕は元々その鈴を持っていた
迷い込んだ猫のお話Ⅺ
複数の眼差しが無造作に転がっている銃弾に向けられた。
全員が息を呑みその眼差しが突き刺さる銃弾の先には、血溜まりと共に1匹の猫が死体となって横たわっている。辺りを染める鮮血の光沢が、無惨にも猫が絶命した事実を鮮明に表している。
周囲にいる誰もがその様に考えていた。
その血溜まりの丁度中心部転がり落ちている銃弾ー
視覚に映る光景はそれだけであった。
いない。
猫がいない。
ある筈の猫の
迷い込んだ猫のお話し⑩
周囲一帯を不穏な空気が支配していた。三毛猫に裏切られ、かつ今までの三毛猫の行動は全て計画に基づいて行われていたと分かった猫は、内側から湧き出る怒りで震え上がっていた。
「絶対に許さない。奴は、他人の気持ちを踏みにじり俺を踏み台として利用した。”君も独りなんだね?”ふざけるな。貴様は一人の生物として他者と共存して生きていく事は出来ない。独りで生きて行くことの真理は、他者との共存を超えた先にあるもの
迷い込んだ猫のお話⑨
思い返せば合点が全てに行った。
細長い一本道で目の前に現れた三毛猫。
あの時、三毛猫は目視で自身と猫の体格差が殆ど無いことを確認していた。三毛猫が考える作戦の実行にはこの確認作業は必須だった、
そして、三毛猫は自身もかつては孤独であった事、今は集落で地位を築き確かな居場所を得ている事を話し、僅かながらにも猫の気を引いた。集落では一度ケチがついている三毛猫にはそこまでしてでも"生贄"を確保しな
迷い込んだ猫のお話⑧
薄暗い空気の中で僅かに出来たブロック塀の隙間に身を潜めた猫は、自分を狙う敵の視線を僅かに逸らす事に成功した。これまで他の動物たちと群れをなす事を嫌い、独りになる事を選び生きてきた猫はこれまでも数々の修羅場を経験してきた。今この瞬間は、そんな過去の経験など微塵も役に立たない程遥かに過酷な状況だと思えた。しかし辛うじて首の皮一枚繋がって逃れられているとするならば、その経験は皮肉にも孤独に生きていた事に
もっとみる迷い込んだ猫のお話⑦
薄暗い路地裏での集会を終えそれぞれが各自の潜伏先へと散っていく中、猫は三毛猫と横並びで話し込んでいた。
「今からする僕の話を、明日初めて現地に行く君は真剣に聞いて欲しいんだ」
突然に神妙な面持ちで三毛猫から話かけられた猫は、真っ直ぐに三毛猫の目を見て聞き込んだ。
「単刀直入に言うと、市場への潜伏は死と隣合わせなんだ。」「僕はあの日、自分の存在が見つかった時、奇跡て何を逃れて帰ってくる事が出来
迷い込んだ猫のお話⑥
全てが順調だった。それは今日の任務を完璧に遂行出来ているからだけでなく、モグラと別れてから三毛猫達と出会い、黒猫のグループに入り今の自分の地位を築く事が出来ている事実に対して言えることである。居場所が無く彷徨っていた自分が誰かに必要とされ、ましてや今は集落の中心的存在となっている。何より充足感を感じているのは、親に捨てられてから誰にも相手にされていなかった自分が周囲から認められている事だった。更に
もっとみる迷い込んだ猫のお話⑤
まだ薄暗い市場の一角にブロック塀が数段積まれている。潜伏先でこの場所は猫の定位置となっていた。軽快な足取りで物陰に隠れた猫は今日も"その時"を待ち構えていた。
大号令とともにせりが始まる瞬間がある。その瞬間に一気に裏へ回り獲物を確保し、更にその裏口へ待ち構えているもう一匹の猫へ獲物を渡しいく大胆な手法が猫の手口だった。猫自身が立案した手法ではなく、三毛猫から現状これが有効かつ安全なやり方はこれし
迷い込んだ猫のお話③
22時を過ぎた。店内から客はいなくなり、店主が店じまいの準備を始めた。「一旦ここを離れよう。大丈夫、別に僕らは住み込んでいる訳じゃないし、散歩に行っていてまた明日になれば戻ってくると信じ込んでるから」
2匹は店を出て路地裏狭い道に戻って来た。「ここでタイミングを伺うんだ。店仕舞いをしてシャッターを降ろすまでの間に店主が目を話す時間がある。その隙にまた忍び込んで、今度は魚とキャットフードを咥えて裏
迷い込んだ猫のお話②
改めて思い返すと、モグラとの突然の再開は猫に取って衝撃的な出来事だった。それでも二、三言の言葉と共に立ち去ってしまったのは、孤独に慣れ切った今の自分を変える程のインパクトは無かったからだ。
まだ幼い時。土手添いの猫の散歩道にいつも穴を掘る突き進む姿を見かけていた猫は、見た事も無いその生物に強い興味を抱いてた。
それまで猫は産みの親と共に暮らしていた。散歩や食事も母親と共にし、母親から受ける愛情
迷い込んだ猫のお話①
その猫はいつもの様に、草木が生い茂る砂利道の上を歩いていた。今日はいつもより足が重い。地面に鎖をつけられている様な感覚だ。それでも少し日陰で休んでからその猫はまた、歩きはじめた。どこに向かっているかは分からない。それでも飼い主がいない野良猫にとっては、少しでも孤独を紛らす事が出来ればそれで充分だった。
いつから自分は独りになり、来る日も来る日も寝床と餌を探し歩く様になったのか。はっきりとした事は