迷いこんだ猫のお話15
「そう言う事だ。」
「君が今日の出来事をどの様に考えるのか。過去の出来事と紐付けて考えて、今この現実があるのは必然と考えるのであれば、それは運命と呼べるんじゃないのかな。その結論に至るかどうかは、君次第だ。」
あの日、河川敷でモグラと出会わなかったら
三毛猫の存在に気付かなかったとしたら
あの日、もしも違う道を歩いていたら
幼い頃に仲間と出会わなかったら
自分が群れから抜け出さなかったとしたら
全ての出来事を挙げていけばキリが無い。
ただ、
あの日河川敷でモグラと再開したから
三毛猫と再び出会ったから
仲間と出会い、そして群れを離れる決断をしたから
今この現実がある。
今を生きているんだ。
どれか一つ違う選択を取っていたら
別の行動を取っていれば
今を生きていなかったかもしれない。
全ての出来事のその先に今がある。
俺は運命と言う言葉など微塵も信じていなかった。
生を授かり、やがて死ぬ。
その一生の中で起きる出来事など誰も予測出来ない。
しかし全ての出会い、偶然、その先に転んだ出来事によって生死も変わってくるのだ。
土に転がる割れた鈴の破片。
猫へ放たれる鋭い光は、ランプの灯が破片へ反射し生まれている。
…運命を遠ざけていたのは
自分自身だったのかもしれない。
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