迷い込んだ猫のお話し④

モグラと再会し、三毛猫の集落に誘われてから1年が経過した。猫は既に、その集落の中で黒猫と同等、あるいは上に立っていると言っても過言ではない程の地位に上り詰めていた。河川敷で声を掛けられ初めての忍びに同行してくれた三毛猫は今となっては猫の右腕となっている。ただし敬語で会話をすることは一切無かった。そこは猫なりの三毛猫への気遣いでもあり、優しさなのかもしれないが、三毛猫にも僅かながらにプライドがあったのだ。

いつも様に河川敷で白いミニバンが停まるのを待ち伏せしていた。その白いワゴンは数十キロ離れてた海鮮市場へ向かう車だった。三毛猫とともに新しい潜伏先を開拓した猫は、既に多く獲物が集まる"聖地”への潜伏を実現していた。

白バンが猫の数メートル前方で停まった事を確認するとと、猫はいつもの様に勢いよく荷台部分へと飛び乗っていった。その瞬間、猫の目にどこか見覚えのある灰色の小動物が目に飛び込んで来た。猫はそれがすぐに、やはりかつての仲間だったネズミである事が分かった。

「まさかこんな場所で再会するとはね。まあ、君の事だから特に変わりは無いと思ってたけどね」

モグラと言い、この1年間でかつての仲間に2度も再会した事ははたして偶然なのだろうか。猫はそんな疑問が頭に浮かびながらも、今日もいつも通り日常を過ごすべく、その事は気に留めずに足を運んで行った。


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