音楽にさらわれたあの子の記憶(15分日記)

亡くなった男の子が夢に出てきた。
今年の夏に突然いなくなってしまった年下の男の子。


彼が好きだったミュージシャンが久しぶりに新作をリリースしたから、ここ最近はずっとこの子に心の中で話しかけることでチャットを送る代わりにしていた。
だからなのかな。

とはいえ夢の中ではとくにそのミュージシャンについて話はせず、
ただ、ただ、ふつうにあのときのように
「そこにいる」だけだった。


突然死は寂しい。
寂しいが、ほんとうにいきなりのあっけなさなので
どこか「生きている」温度も残る。


先日、舞台で活躍していた私と同世代の俳優が突然この世を去ったニュースが流れた。
彼の役者仲間たちは突然のことに動揺し、悲しみ、
でも、だからこそ、「生きなきゃ」と云った。


きっと泣いたあとは、仲間たちと笑い合える。


年齢を重ねると、つながりが増えると、
好きなものが増えると、それだけ
「自分以外の突然」
に立ち会う瞬間も、多くなる。


そういう突然から人生を学んでいきたい、なんて思っていない。
できれば起こらないでほしいから。


でも気づいていくんだ。



あの子のことは好きだった。
誰にも話したことはないけれど、
年齢が近かったら、「ほんとうに」好きになっていたかもしれないと思ったことさえあった。


去年の夏。
終電を逃した新宿、友人の女性と温泉施設で一泊したとき
お湯に浸かりながら、こんな話をした。


「あの子、なんで若いのにあんなにカルチャー詳しいんだろうね」

「ほんと不思議ですよね。ていうか、ララさんにはあの子みたいな人が合いそうですね」

「え。そりゃたしかにいい子だけども─」

「─あの子が同年代だったら良かったですね」



一度だけ飲んだことがある。
偶然同じライブのチケットを取っていた日。
それも、席まで近かった。


もちろん「完全に」なにもなく、握手さえしなかった。
向こうはもちろんのこと、私も、何もないことが当たり前だろうと思っていた。



ほんとうは、年齢がいちばんの理由じゃなかったかもしれない。

「そうなのか」「そうじゃないのか」
その人を見ていれば どう思われているのかは
なんとなくわかる。



それでも別れの合間のすこしの時間、なんとなくの余韻に浸り、喋り続けた。

そう、音楽が 最高だったから。


あの日のライブは最高だったよね。


23時過ぎ、九段下駅の入り口の手前で、
「どう別れるのが適切なのか」笑顔で考えながら、
「じゃあまたね」
と手を振った。


きみと音楽の話をするのが好きだった。


ありがと。
じゃあ、また夢でね。


(所要時間 18分)



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