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「ティファニーで超食を」だけでは評価できない、愛すべきトュルーマン・カポーティ

美しい言葉。美しい顔。美しい魂。人に理解されること、評価されることを拒み、自分が好きなもの、心揺さぶられるものだけに没頭したトュルーマン・カポーティ。

現代アメリカ文学の寵児にして早熟の天才作家と呼ばれ、さらにゲイを公言したセレブリティのアイコンとして、文学界と社交界を席巻した。

この天才作家と時をともにした人々の証言をもとに、彼の生い立ちや未完の問題作『叶えられた祈り』執筆の裏側を解き明かして、その複雑な人間性に迫った文芸ドキュメンタリー『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』は、高く評価された。

https://youtu.be/S5B7QIvTbOE

https://youtu.be/S5B7QIvTbOE

1924年9月30日にアメリカ・ニューオーリンズで生まれたカポーティは、両親の別居による複雑な家庭環境のもとで育ち、10代半ばに憧れの街ニューヨークへ移住。19歳の時に執筆した初めての作品『ミリアム』が、優れた短編小説に贈られる権威ある賞、O・ヘンリ賞を受賞し、その若さもあって「恐るべき子ども(アンファン・テリブル)」と呼ばれた。

1948年に『遠い声 遠い部屋』で本格的に作家デビューを果たすと、「天才的な」文才はもとより、裏表紙を飾った彼自身の肖像が大きな話題になった。「文学界にあらわれた“美しき時代の寵児”」として、作家トルーマン・カポーティは一躍有名になる。

『遠い声 遠い部屋』アメリカ発売時の裏表紙。カポーティの肖像が全面に使用されている。

さらに短編集『夜の樹』、オードリー・ヘップバーン主演で映画化された、『ティファニーで朝食を』を発表。

また、アメリカの片田舎で実際に起きた殺人事件を題材に、およそ5年間にわたる関係者への取材を経て執筆された『冷血』は、カポーティ自身が「ノンフィクション・ノベル」と呼び、新たなジャンルの小説として賞賛された。


チャーミングでお茶目、毒舌の激しいトルーマン・カポーティの周りには、いつも有名人や社交界の大物が集まり、その華やかな交友関係で、彼自身もニューヨーク社交界におけるセレブリティのアイコンとして知られるようになる。

Capote (2005) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers - YouTube

有名なのは、1966年に彼が主催した「黒と白との舞踏会」。ハリウッドスターや政治家など500名を超える世界のセレブが集まり、招待客のリストがニューヨーク・タイムズ紙で公開されたことでも話題になった。

“世界で最も新作を待たれる作家”となったカポーティ。いよいよ彼は、100万ドルという莫大な契約金を受け取り、新作『叶えられた祈り』の執筆を始める。

社交界のセレブたちを描いた同作は、彼の最高傑作となるはずだった。けれど1975年に第一部が発表されると状況は一転。「ニューヨーク社交界の裏側を暴露する内容だ」と大きな非難を浴び、カポーティは追放されるように社交界を追われたのだ。

その後彼はアルコールと薬物漬けの日々を送るようになり、1984年に、59歳の若さで死んだ。

トルーマン・カポーティのことを考えると、なぜか中原中也を想う。
チャーミングで、愛嬌があって、カミソリのような切れる感受性を持ち、そして、有り余る才能をすべて生かせないで死んでしまったこと。




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