マガジンのカバー画像

エッセイ

48
サブカルや日常のあれこれをキリスト教の視点から書いています。
運営しているクリエイター

#おかえりモネ

おかえりモネ 1

おかえりモネ 1

ドラマに「石ノ森章太郎ふるさと記念館」が出てきました。物語の舞台のひとつ、登米が漫画家石ノ森章太郎の生誕地だからです。代表作「サイボーグ009」の元ネタはアルフレッドベスタ―のSF小説「虎よ、虎よ」。デュマ作「モンテクリスト伯」(巌窟王)から着想を得てSF仕立てにした作品です。題は非国教会派のプロテスタントに属した詩人ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢と経験の歌」の一節「虎」から。
また現代まで続く

もっとみる
おかえりモネ 2

おかえりモネ 2

おかえりモネで、あすなろの木のエピソードが描かれました。おそらくこの元ネタは物語の舞台となる気仙沼大島出身の詩人、水上不二の詩「アスナロウの木」です。この詩は後に曲がつけられて、NHK「みんなの歌」でも流れました。水上は故郷気仙沼大島(ドラマでは亀島)を「みどりの真珠」と形容しています。

ドラマと関係あるところでは主人公の妹が通う学校のモデルは気仙沼向陽高校です。実際にも高校生が「サンマの缶詰」

もっとみる
おかえりモネ 3

おかえりモネ 3

ドラマに「登米能」が出てきました。登米能が演じられる「森舞台」を作ったのは建築家の隈研吾氏。高輪ゲートウェイ駅をデザインされた方ですね。カトリックの修道会、イエズス会が母体となって誕生した栄光学園の卒業生です。医師であった祖父がクリスチャンだったからでしょうか。
学生時代に倫理のクラスを担当して下さった大木章次郎神父から大きな影響を受けたと言っておられます。
森舞台に描かれた松の絵を描いたのは画家

もっとみる
おかえりモネ 4

おかえりモネ 4

「おかえりモネ」では、宮城県登米の森と気仙沼の海が繋がっていることがテーマのひとつ。この元ネタはNPOの「森は海の恋人」運動です。代表の畠山重篤氏は牡蠣養殖漁業家で気仙沼にあるバプテスト教会のクリスチャン。海の環境保全のために森に植樹します。
「森は海の恋人」という言葉は地元気仙沼の歌人、熊谷龍子の歌と旧約聖書詩編42編から着想を得ています。関西学院大学総合政策学部の長峯純一先生のお父様は畠山氏の

もっとみる
おかえりモネ 5

おかえりモネ 5

ドラマの舞台となった宮城県の登米という土地は、戦後にキリスト教への集団改宗が起こった土地です。登米の場合は、キリシタン後藤寿庵の墓が発見されたことと、宣教師の働きが契機となったようです。現在でもキリシタンの里祭りが行われています。

また登米は明治の一時期、ひとつの県を形成していて、内村鑑三の父親、宜之が登米県小参事をつとめています。宜之自身も内村鑑三の影響でのちに信仰を持ちます。このような背景を

もっとみる
おかえりモネ 6

おかえりモネ 6

「おかえりモネ」に石ノ森章太郎の名前が出てくる。ドラマの舞台が石ノ森の出生地だからだ。我々の世代は石ノ森章太郎作品には大変お世話になっている。「サイボーグ009」や「仮面ライダー」は有名だがそれだけではない。
少しマイナーな特撮作品になるかもしれないが、「イナズマン」というのがあった。このヒーローはサナギマンからイナズマンに変身する。変身がなぜか二段構え。この元ネタはヴァンヴォ―クトのSF小説「ス

もっとみる
おかえりモネ 7

おかえりモネ 7

ドラマで1947年9月17日のカスリーン台風が話題になりました。当時は台風に外国人女性の名前がつけられた時代です。この台風では関東の利根川や北上川が氾濫して甚大な浸水被害をもたらしました。

主人公が生まれた1995年9月17日にも戦後最大級の台風が東北地方を通過しています。興味深いことにこの台風もカスリーン台風と似たようなコースを辿りました。台風12号です。9月17日は大型台風の特異日と呼ばれて

もっとみる
おかえりモネ 8

おかえりモネ 8

ドラマにジャズ喫茶が登場します。店の名前はSwifty。店にはソニーロリンズやウェインショーターといった巨人の写真が。
おそらくこの店のモデルは岩手県一関市にあるジャズ喫茶ベイシーです。ベイシーのマスター菅原正二さんのニックネームがSwiftyなのです。名付け親は菅原さんと交流があったアメリカのジャズピアノ奏者故カウントベイシー。店の名前もカウントベイシーからです。ドラマの店主の人物造形に菅原さん

もっとみる
おかえりモネ 9

おかえりモネ 9

「おかえりモネ」の舞台はリアス海岸で知られる宮城県気仙沼。リアス海岸の命名者は地形学の草分け、フェルディナント・フォン・リヒトフォーヘンで、聖地サンディアゴ・デ・コンポステーラの北の巡礼路にあたるスペイン・ガリシア海岸をスペイン語で入り江の複数形でリアス海岸と名付けました。
彼の甥がレッドバロンの異名を持つ飛行機乗りのマンフレート・フォン・リヒトフォーヘン。この人物がモデルになったのが「機動戦士ガ

もっとみる
おかえりモネのモデル

おかえりモネのモデル

ドラマでは東京と宮城県の登米を往復する若い医師が重要な役割を演じます。実はこの医師には実在のモデルがいます。ドラマの医事考証もしておられる「やまと在宅診療所登米」の田上佑輔医師です。
都市と地方を繋ぐ「循環型医療」のひとつのモデルとして地域医療に貢献しておられます。東大病院を飛び出して地方の地域医療に関心をもたれたきっかけは東日本大震災だったそうです。地方の医師不足の現実や医療格差の課題に気づかさ

もっとみる
おかえりモネ 10

おかえりモネ 10

ドラマでは、なぜか鮫に関係するエピソードが重ねられます。気仙沼のサメミュージアムで売られているサメのぬいぐるみを登場人物が持っている。テレビの天気予報コーナーで主人公が使うサメのマスコットのパペット。それに今週は名字に鮫の漢字を持つパラアスリートまで登場。どう考えても意識的だと思われます。サメのぬいぐるみを持つ二人が鮫の字を姓に持つアスリートをサポートするわけですから。

これはドラマの舞台の気仙

もっとみる
おかえりモネ 11

おかえりモネ 11

2014年から始まった物語の時間軸は2019年に入っています。この年は物語の舞台のモデルとなった気仙沼大島に気仙沼大橋がかかった年。橋がなんらかのシンボルとして描かれると思われます。そもそも橋は川や海など水と関係の深い建築物。

フラグは前週から立っていました。主人公が恋人に放物線を描いて投げた鍵。バックは隅田川と勝鬨橋でした。橋の多くは放物線状のアーチを形成します。今までは投げられた大きな果物も

もっとみる
おかえりモネ 12

おかえりモネ 12

ドラマは東京編パートの最終週。主人公の故郷気仙沼を竜巻が襲います。以前も触れましたが、物語では渦に象徴的意味を持たせているように思います。テーマが水の循環ですから。巨大な渦である竜巻が契機で新しくできた橋を渡り故郷に帰還する。

もうひとつの契機はおそらく楽器のホルン。ホルンも渦巻の形をしている。菅波医師の新人時代の挫折と関係する元ホルン奏者が登場しました。この人物が主人公と関わる展開になると思わ

もっとみる