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記事一覧
英文学とラノベの融合【読書感想文】ジャスパー・フォード『文学刑事サ-ズデイ・ネクスト (1)ジェイン・エアを探せ!』(2005)
初回は20年以上前、訳本を読んで強く印象に残っていたが、今回は Jane Eyre を読んだのをきっかけに、満を持して原書で読んでみた。
内容はほとんど忘れてしまっていたが、まごうかたなき傑作だった。
舞台は、第一次大戦も第二次大戦も起きておらず、クリミア戦争(史実では1853-1856)が今も延々と続き、ウェールズが独立し、飛行線が空を飛び、シェイクスピア劇を本当は誰が書いたのかが人々の最大
天才的な中学生による、ちょっと変わった中学生の観察日記【読書感想文】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
4話目で挫折。
1話目は95点、2話目は90点と高得点だったが、3話目と4話目は普通の小説だった。
学園モノ?はほとんど読まないが、数少ない経験から言わせてもらうと、ジャンル的には重松清みたいな感じだろうか。
申し訳ないが、興味の範疇外である。
しかし1話目は本当によかった。
プログレ華やかなりしころに現れたセックス・ピストルズ、LAメタル全盛期にデビューしたニルヴァーナくらいのインパク
年末大そうじ【読書感想文】ソン・ウォンピョン『三十の反撃』
ふと「クリスマスケーキ」という言葉を思い出した。
知らない方のために簡単に説明すると、二十五を越えると売れ残り、という意味だ。「オールドミス」なんて言葉もあった。最後に耳にしたのは、それこそ四半世紀ほど前のことだろうか。
しかし今や三十にもなって、まだ結婚もしてないどころか、どんな大人になりたいだとか、自分探しだとか、他の人と違う自分らしさとは何か、などと言ってるわけである。
クリスマスどこ
牧野陽子さん、ごめんなさい【読書感想文】平野啓一郎『マチネの終わりに』
主人公の二人は、ずっと「牧野」と「陽子」だと思って朗読を聞いていたら、「蒔野」と「洋子」だった。
聴き終わってから気付いた。
これって結構大問題だ。イメージ変わる。
具体的に言うと、「蒔野」の方がイケメン濃度が高そうだし、「洋子」の方がクールっぽい感じがする(全国の牧野陽子さん、気を悪くされたらごめんなさい)。
今聴いてる韓国の小説では、韓国近現代史についての注が多くて、話の途中でいちいち
文章化することで失われるもの、朗読することで失われるもの【読書感想文】若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』
読み始めは東北弁が新鮮で、まさにジャズのように思え、芥川賞は新人賞だから自分史のような作品では後が続かなさそうだからいかがなものかとも思うが、そういう欠点を補ってあまりある作品だとまで思えたが、途中でAudible に切り替えたらその魅力がすっかり消えてしまったので、我ながら驚いた。
ナレーターがうますぎて、本当にふつうの、なまった老女の自分語りのように聞こえてしまうのだ。
語りから文章に変換
【本の話】SFの正しい装丁について
いまさらだけど、ハヤカワ文庫のフィリップ・K・ディックの装丁って、かっこいいよね。
私が昔読んだ『マイノリティ・リポート』って、こんなんだったなあ。これはこれで味わい深いんだけど。
それに引き換え、ロバート・A・ハインラインの原書は、いまこんな事になってる。
『月は無慈悲な夜の女王』
『異星の客』
『宇宙の戦士』
これはダメでしょう。これじゃイメージ湧かんよ。
もしかしてあちらではイ
なぜ働いていると本は読めないのにパズドラはできるのか【読書感想文】三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
パズドラはしたことがないので推測に過ぎないが、疲れていてもパズドラができるのは、それが現代技術の粋を集めた純粋な刺激と快楽だからだろう。甘いものは別腹、たらふく飲み食いしたあとの豚骨ラーメンみたいなものだ。
私がこの本を手に取ったのは、著者が導入部で紹介している映画『花束みたいな恋をした』を私も観て、同じ様な感想を持っていたからだが、そもそもこの映画を観ようと思ったのは、ネットで著者のその文章を