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今はアウトか【読書感想文】黒岩重吾『ワカタケル王子』(2002)

タイトルも出演していた俳優も忘れてしまったが、10年くらい前の真っ昼間、テレビで昔の西部劇映画(60年代か70年代?)を観るとはなしに観ていた。

林の中を移動中、主役の男性が突然ヒロインに襲いかかった。

敵を欺くために悪漢のふりをしているとか、ヒロインに口を割らせるために芝居をしている、とかなら分かるが、どうやらそういうわけではないらしい。

マジだ。マジ発情である。

恋は突然、とか言ってる場合ではない。びっくりである。

激しく抵抗していたヒロインも、やがて男性を受け入れ、身を委ねる。その間5分もない。二度目のびっくりである。

思うに、たぶん、儀式のようなものなのだ。様式美と言ってもいい。男性のマッチョイズムであり、女性にとってはエクスキューズなのではないか。

だがこの演出、今はアウトだろう。

同じく10年くらい前、同僚(当時60代後半)から勧められて、DVDを借りて、初めて『幸福の黄色いハンカチ』(1977)を観た。

高倉健が倍賞美津子の部屋の前で待ち伏せして、彼女が乗ったバスを走って追いかける。好きだから。健さんステキ。

でもこれ、今はアウトだろう。完全にス○ーカーだ。

数年前にテレビを観ていたら、あるお笑い芸人が、自分が若い頃好きだった映画を娘と一緒に観ていたら、けっこうしっかりしたベッドシーンがあって気まずかった、という話をしていた。

とりあえずベッドシーン、とりあえずシーツで胸を隠した女優と胸毛の男性、という絵づらが、よく金曜ロードショーとかで流れていたが、これも今はアウトだろう。

本題に入るがこの小説、歴史の勉強になるかと思って読み始めたら、確かに勉強にはなったが、露骨なマッチョイズム、バイオレンス、エロティシズムがノイズになって、もうひとつ楽しめなかった。

昨今では司馬遼太郎さえ、若い人たちには受け付けられないことがあるという。

昭和のお父さんたちにとっては、古代史も学べるロマン、という名目の娯楽だったのだろうが、今はアウトだろう。

と思ったら本作、2002年刊行だった。がっつり平成だ。

昭和は遠くなりにけり、である(なんだこのシメは)。

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