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年末大そうじ【読書感想文】ソン・ウォンピョン『三十の反撃』
ふと「クリスマスケーキ」という言葉を思い出した。
知らない方のために簡単に説明すると、二十五を越えると売れ残り、という意味だ。「オールドミス」なんて言葉もあった。最後に耳にしたのは、それこそ四半世紀ほど前のことだろうか。
しかし今や三十にもなって、まだ結婚もしてないどころか、どんな大人になりたいだとか、自分探しだとか、他の人と違う自分らしさとは何か、などと言ってるわけである。
クリスマスどころか、年末大そうじの最中だというのにである。何を寝ぼけたことを言っとるのだ!
と、昭和のがんこ親父みたいなことを書いてみたが、こういう現代の若者を書いた小説はめったに読まないので、タイトルだけ見ても、なんだか隔世の感があった。
これは先進国に特有の現象なのだろうか。現代の若者に共通する自己認識なのだろうか。
謎めいた同僚、上司、元カレ、幼なじみ、弟、同じ目的のもとに集まった仲間たちなど、個々の登場人物もエピソードもいきいきとして魅力的だし、丁寧に注のついた韓国文化や現代史は勉強になるし、ハッとさせられるような表現もちりばめられていて満足度は高いが、それらの要素が一つの作品として有機的に結びついていないような感じがした。
もうしばらく練ってから出してもよかったと思うけど、そうすると内容としても作者のキャリアとしても旬を逃してしまいかねないから難しいところだなと思ったら、デビュー前から温めていたとのこと。そうすると、作者の意図していたものが私の好みと合致していないだけかもしれない。
タイトルも、反撃にしてはささやかだし、子どもじみてるなあと思ったら、オリジナルタイトルは『普通の人』、次に『1988年生まれ』だったとのこと。このどちらの方が作品に合ってると思うけど、それでは売れなさそうだから、これまた難しいところだ。
87点。
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