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(2024)ドラゴン
昔むかし、私がとても小さく、中つ国のカステラが並んだような集合住宅に住んでいたころ、敷地のはずれに高い煙突のついた焼却炉が建っていた。いつも黒い煙がもくもくと上がっていた。私の母はそれを「ドラゴンの煙だ」と言った。私はドラゴンを知らなかったが、ドラゴンという言葉は知っていた。母が掃除機をかけるとき、「パフ・ザ・マジック・ドラゴン、リブド・バイ・ザ・シー」と歌っていたからだ。パフは掃除機になったのだ
もっとみる【試訳】K.O.ペーテル『ナショナル・ボルシェヴィスト宣言』【2】エピグラフ/序
エピグラフ良き同志へ捧げる。
“新しい石板が新しい時代の令状となる
老人どもには遺産を楽しませておけばいい
遠雷は彼らの耳には届かない。
だがあなたは、若者どもを奴隷と呼ぶだろう
いま、感傷的な音楽に耽溺する彼ら
薔薇の鎖に繋がれて深淵を避ける彼らを。
あなたはデカダンと腐敗に唾を吐き
月桂冠に匕首を隠し
新しい十字軍の歩みと響きに合わせて行くだろう。”
【試訳】K.O.ペーテル『ナショナル・ボルシェヴィスト宣言』【1】BOGMILによる解説
『ナショナル・ボルシェヴィスト宣言』解説 by BOGMIL
幼少期の家庭環境
カール・オットー・ペーテルは1906年11月、ベルリンのシャルロッテンべルクに住む中流階級の質実な家庭に生まれた。
本屋の息子であったペーテルは早くから文学など知的な方面に関心を抱いていたが、同世代の多くの若者と同じく、彼の思想や世界観は、第一次世界大戦とそれに続く戦間期ドイツの苦難の経験に深く影響を受けている。また
【試訳】シェイマス・マーフィー『ハンマー』
ハンマー
by シェイマス・マーフィー
もし誰かが彼の話をしたとして、物静かでわきまえていて、ちょっとばかり物知りで、道を歩くときは端を歩くような男だと言うんだろうが、同じ作業小屋で働いていても誰も気づかずに日が過ぎていく男だと言ってもまあ間違いじゃあない。もし誰かが興味を持ったとして、実際は持たれなかったんだが、まあそんなにはね、計算してみたとしたら彼は六十七だった、それは、彼が見習いの時分