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散人の作物

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#俳句

二〇二二年 俳句集

二〇二二年 俳句集

二〇二二年に創りし俳句

初富士や雲に紛れぬ其姿     一月二日

冬空は何時の間にやら陽がのびて 一月四日

街静か久方振りなる白化粧    一月六日

木の枝やその身しなりし雪の後  

晴れた日の残雪白き光哉

晴れた日に残雪白木日陰哉    一月七日

寒風が吹けば落ちたりパナマ帽

冬空に浮かぶ真昼の青き月    一月十四日

あの夏と変わらぬ月をただ一人

あの夏と変わらず見つめる昼

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短編小説『水辺の事語』

短編小説『水辺の事語』

序章 流れ

拙宅の近くに川がある。時として勢い急であるが平静は比較的穏やかな方であろう。幼少期よりその川は遊戯に適した場所であるため親しんでいる。今でこそ泳いだり飛び込んだりはしはしない、がそれでもその流れを眺めに行く事はしばしば。殊更に美景と感じているのではないが、とはいえ、見慣れた水の流れは私に心の平安を与えてくれる。
そんな出自もあってか私は水辺をいつの間にか好む様になった。よしんば私がメ

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2021年度拙作俳句集 謹賀新年に変えて

2021年度拙作俳句集 謹賀新年に変えて

第一部春嵐来たりて路傍の花落ちる 三月廿一日
雨瀟瀟未だ一人の我が身哉  四月十四日
飛び立つに羽毛スゝ゛メ哉  四月十五日
春雨を聴きつゝ独りの我身哉 四月十七日

吉祥寺及井之頭線ノ景

春風に独り打たれて井の頭  四月十八日
子供泣く背中濡れたる親父哉 四月十八日
我目見て泣き止みたる子に罪は無し 四月十八日
窓の内いつかの我等は窓の外 四月十八日

久方の祖父の震える指みたり 四月十九日

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