見出し画像

二〇二二年 俳句集

二〇二二年に創りし俳句

初富士や雲に紛れぬ其姿     一月二日

冬空は何時の間にやら陽がのびて 一月四日

街静か久方振りなる白化粧    一月六日


木の枝やその身しなりし雪の後  

晴れた日の残雪白き光哉

晴れた日に残雪白木日陰哉    一月七日


寒風が吹けば落ちたりパナマ帽

冬空に浮かぶ真昼の青き月    一月十四日


あの夏と変わらぬ月をただ一人

あの夏と変わらず見つめる昼の月

あの夏は二人で見つめし白き月

水鳥や寒くはないか冬の波

寒き日にタバコ屋入る女子学生

品川の富士塚登れど海見えず   一月十五日


新しき枕で見たる或る女     一月十七日


寒き日に何処かで匂う焚き火哉  一月十八日


暗闇やストーブ紅く孤独哉    一月二十一日


肉体が思い出されし冬の夜    一月二十二日


漆黒の水面淀める光哉

何処やらで春を待つ様な鳥の声    二月三日


真昼月白頭並ぶ冬の山        

だるま屋のわさびが効きしちらし寿司 二月二十三日


山並みに隠れず高し富士の山     二月二十六日


眠られぬ街にこそ来る春もある    三月六日


江戸川の水面の流れに春を見て

長き冬漸く終わるぞ恋人よ

長き冬よくぞ耐えたり恋人よ     三月十三日


春雨に浮かぶは愛せし君の顔     三月十八日


静まりし春の街角夢を見る      三月二十日


薄野が揺れて春来て思い出す     三月二十一日


当然に流れる雲にも定めあり     三月二十三日


鉄の柵東京狭し今日もまた      

歴史とてはや消え去りて荒野哉    四月二日


憂鬱や雨の最中の桜哉        四月五日


朧夜や川と鳴きたる蛙哉          四月十三日


川面にて恋の憂いや夏の朝

変わざりし赤信号と夏の雲

石つぶて川面に揺れる夏の空

川面から飛び出す程の魚群あり       五月十五日


愛情は五月雨式の心痛か          五月十七日


焼却炉驟雨叩きし車窓哉          七月二十二日


渋谷にて未だ見ざるフランスの白昼夢    七月二十四日


夏の日の蝉時雨たる山の空         七月二十六日


今年とて寂しさ変わらぬ残暑かな      

日暮に孤独とぞ思ふ残暑かな

熱帯夜枕につきし我が血かな        八月二十四日


海風に初秋漂う港の灯           八月二十八日


日暮や我が身悲しき秋近く         九月七日


十五夜も過ぎて終わらむ或一夜       九月十七日


鈴虫や遠のく我が夢慰めよ         十月十一日


鈴虫や祖父の背中に陽が落ちる       十月十五日

秋深し通帳繁く見る老婆          十月二十七日


荒川は流れ映せし天の川          十月二十九日


秋の日に流るゝ荒川陽は暮るゝ  

茜さす冬支度する街の空

秋深し未だ帰らぬ子供達          濹東集


晩秋に憂う彼女と散歩道          十一月十八日


人知れず葉を撫で行けり秋の水

美しき命の果ての桜哉

墨水の流れに写る冬の街

夏の葉や涼しき影の水面哉         十一月十三日


我が罪や木枯らし吹ける木立哉

冬支度また薄野も耐えるかな

誰が声届かぬ冬の空模様

どこやらに冬を憎みしみちのおく

年の瀬や恋孤悲来ひと思ひけり

冬空やその様まるで去し恋

誰も居ぬそれが我が旅死ぬる迄       俤、そして武蔵野


木枯らしを幾度過ぎしか祖父の顔

年の瀬や後悔あらぬ今はもふ

友情の暖かさあり冬木立          十二月二十三日


以上、八十三句

是非、ご支援のほどよろしく👍良い記事書きます。