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#文学

生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

「頭の狂った人間を病院に運ぶための黄色い救急車がある」という古い都市伝説があるが、私にはこれがひどくなまなましいのだ。内容の無根拠さとはうらはらにやけにイメージしやすいのも恐い。なんでだろう。黄色というのが妙に不気味の印象を煽る。子供の頃なら恐いのも分かるけど、今も恐い。というよりむしろ今の方が恐い。精神分析学上、これは興味深い問題だ。

フーコー的な「生権力」が支配的となった時代の人間には、多か

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言語快楽の骨頂は「比喩の発明」にある

言語快楽の骨頂は「比喩の発明」にある

三島由紀夫の『仮面の告白』に「若い僧侶のような世故に長けた微笑」という表現が出て来る。ヤングアダルトの時分に小説を読み始めて最初に記憶したのがこれだ。そんな微笑など肉眼で見たことがないはずなのに「うまい、卓抜だ」と唸らされました。その後何かにつけて模倣しまくったのは言うまでもない。全ては模倣から始まるのだ。

ところで名人鬼才の手になるこんな比喩ストックを脳にたくさん詰め込んでおくと何かと重宝にな

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あまりに雑駁な

あまりに雑駁な

私はいわゆる「ゆとり第一世代」に当たるらしいから、「ゆとり世代は円周率を三と教わった」とかいうデマ(ゆとり神話)がいまだに一部で通用しているらしいことにすっかり呆れている。「ゆとり世代」という括りが文脈上蔑称として機能しうることも最近まで知らなかった。つまり「ゆとり世代は打たれ弱い」という種類の物言いを好む人間が一定数あることを知らなかった。だいたいにおいて私は日本の粗雑で底の浅い世代論的言説の大

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