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亜熱帯のさなか

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書いた詩を ここにまとめています。 若いころに書いた詩なんかも、織り交ぜながら 記憶を どこかに メモするように 細々と 書いています。
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#記憶

過去

わたしの
生きた証を
のこさないでね

あなたに宛てた手紙も
あなたの隣に写った写真も

全部まるごと
消してしまってね

あなたの記憶からも
わたしが
生きた証を

わたしは
あなたの事
ずっと ずっと
忘れずにいるから

あなたと刹那を生きた証は

わたしが
忘れずにいるから

どうぞ
思う存分 わたしを
忘れてね
#詩 #詩を書く#詩作#記憶#生きる#ポエム

氷柱

とても寒い朝
雨戸を開けて
軒先にぶら下がる
氷柱を
ほら、見て
と いいながらはしゃぐ あなた

まばゆい朝の光を
全身に受けて

なんだか
選ばれた者のよう

なぜ 生きるのか

あなたは
考えていたのでしょう?

答えは 見つかった?
氷柱が溶けて
水に戻るとき

僕には
教えてほしい

あなたの見ているものを

なぜ 生きるのか

僕がいるからと
答えて

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夢うつつ

遠くなって行く意識
深くて
浅い眠りに
夜通し やるせなくなって

軒先に 垂れる
雨音が

ぽつりぽつりと

音が 混じり合う
優しい 調べ

なのに わたしは

取り入れ忘れた
洗濯物を 思っている
ベッドに もぐりこみながら

ただただ
独りで過ごす時間の
長いことに
圧倒されている
#詩 #詩作#詩を書く#ポエム#記憶#孤独

無題

ソファに
ごろりと横たわって

真新しい気持ちとは
うらはらに

身体は
だらりと
力が抜けたままで

均等を保てない

時折 思い出す
使い古した言葉で
つづった 詩の一節を

かすれた声で
小さく ひとりごちる

日が ずいぶんと
短くなった

いよいよ 秋は到来したのだ
#詩 #詩を書く#ポエム#記憶

初冬に降る雨

つやつやと光る
レモンドロップを
あなたにもらって

それは
雨のひとつぶに似ている

あの時でも
充分に あなたは
老いてみえたけど

あなたは あの時よりも
更に 年老いた
#詩 #詩作#詩を書く#記憶

回想

絶望的なまでに
もう二度と 逢うことはない

私たちは
若すぎたのだ

まるい地球は
少し 楕円を帯びているから

直線を描こうとも
きっと
どこかで
少しずつ
まるみをおびてくるだろう

楕円の上で
這いつくばっている私たちだから
まるい地球だから

私たちは
絶望的に
もう 二度と逢うことはない

見える世界が
絶望的なまでに
楕円を帯びて

歪曲した
私たちであるから

さようなら
さよう

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オーケストラ

古い追憶の
音の中にいる

空洞の
階段の先には

鏡の世界

むせぶほどの
砂ぼこりに
まかれて

漂うわたしの黒髪
未完成な道しるべ
#詩 #詩作#詩を書く#記憶#生きる#ポエム#感情#オーケストラ#道しるべ#昇華

あの岬の向こうに

あの岬の向こうに
何があるのか
知りたくて 知りたくて

だけど
あの岬の向こうに
行く勇気が出なくて

時間が
たっぷり 経ってしまった

僕等は
何に ためらっていたのだろう

灯台のある岬を
荒れ果てる海を
絵に書いた

僕等は
夏休みの宿題に

行った事もなければ
見たこともない
あの岬を

そして
その向こうを

僕等は
絵に書いた

どうしようもない
もどかしさ

幾重にも もつれ合う

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あの時 猫がいた

芽吹く季節の変わり目

あの時
猫がいた

孤独の裏側
あなたに

幸せの絶頂にいる
あなたに

羨ましさが募る

いや 違う
嫉妬に似た安堵感

わたしはとうとう
逃げ場をなくした

猫がいた
緑に囲まれた 記憶の断片

思いおこすことでしか
あなたに 逢えない

猫がいた

思いおこすことさえ
許されない

あなたは
誰かのものになった

猫がいた
あの時

芽吹く季節の変わり目

たしかに

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あなたが

あなたが
他の誰かのものになったと
聞いてから

僕は あなたが 欲しくなった

あなたを 好きだった
あなたを 好きだった

好きだったから
あなたが
自由でいられることが
いっとう いいことなんだと
僕は そう おもっていたんだ

そして あなたが
僕と別れた後
ずっと ひとりでいるのは

僕を待っていてくれてるんだと
ちょっと
うぬぼれていたんだ

あなたが 誰かのものに
なるなんて

まさ

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躍動

吐く息が白く
血管を流れる血潮が
自身の身体の 重みが

融通の利かない
わたしに

今は まだ 死にたくない
まだ 死ねない

生きるべき しかるべき
理由が たくさん あるから

生きるべきことがなくとも
生きなければならない

生きるべきなのだ
生かされている以上は
#詩 #詩作#詩を書く事#日常的#記憶#忘れないように#感情

無題

自分の
過去の残骸を
掻き集めて

ただ
がむしゃらに 恥じる

落としてきた
言葉を
拾い集める

枯葉を 踏みしめるみたいに

きらきらしたものは
欲しくない

どちらかというと
じめっとした
湿り気のあるような 過去
#詩 #詩作#詩を書く事#言葉#紡ぎ出す#記憶#思った事#生きる

孤独

宇宙の広さを知ってる

近くにある
まぶたの奥

全部
うそっぱち

あなたも
あの人も

宇宙の広さは
時として
自由を奪う

ひとりごちる
計れない 時間の長さ

闇を生む
宇宙の片隅に
寄る辺なく
力つきるわたしを

賛美歌が
駆け巡る

行かなければならない場所は
この 宇宙のどこにあるのだろう
まぶたの奥
すぐ そばの気もするけど

わからなくて
日々のささやかな積み重ねを
震えるほど

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含まれているのだ、僕らは

宇宙が
手の届く範囲にある場所
に 僕等は 今 居る

宇宙って なんだろう
僕等は 今 宇宙の中にいる

宇宙の中にいる

何ひとつ
隙がない
宇宙の中にいる

だのに 僕は
なんだか 少し 淋しかった

ため池で
さかなが
泳いだ後みたいな
天の川が

ああ、そうか
宇宙って 淋しいんだ

涼しくて
無駄なものが なんにもなくて
ないから 淋しいんだ

流れているから
淋しいんだ

僕等は

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