さんだるさんばる

大阪生まれ奈良育ち。新聞社を経て出版社勤務。理化学系の取材してます。旅行と中国と柴犬が…

さんだるさんばる

大阪生まれ奈良育ち。新聞社を経て出版社勤務。理化学系の取材してます。旅行と中国と柴犬が好き。新HSK6級。大学の専攻は中国史(東北の方)。

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最近の記事

コロナが私から奪ったもの

これまで定期的に海外に行っていたのは、なぜなのか。 遊びたいから、食べたいから、知りたいから、だと思っていた。 新型コロナが流行し、海外へ行くのが難しくなっても、さして困難はなかった。日々の生活を過ごし、いつか解放される日が来ると信じるだけで生きていけた。 でも今日。撮りだめたドラマが終わったので、以前撮った旅行番組を見ることにした。中国・雲南省を撮影した番組だ。 好きな番組だったので、過去に何度か見たことがある。でも、今回だけは涙が出てきた。この町、この路地、すべて

    • 引き出しを、あけて

      今年1月に友人から、家族旅行のお土産だと言ってもらった石鹸。大事に使わなきゃと思って箪笥にしまっていた。 今日、引き出しをあけて茫然とする。もう、その友人はいないのだ。あの時目の前にいて、笑っていた人はもういない。 何度言い聞かせてもついていけない。時折道端にうずくまり、体から絞り出るように涙が溢れる。 あれほど健康だった人の心臓が止まるとは。病魔はどれほど強いのか。 最後まで優しく、鋭かった。もう一度、話を聞いてください。

      • 「並びたがり」の日本人

        右頬に、突如シミが現れた。 今までも小さなシミはあったが、これはかなり存在感がある。 鏡に映る自分の姿にうなだれながら、これを知人(日本人)に相談したらどうなるだろうと考えた。きっと、こうなるだろう。 「そんなの全然気にならないって、大丈夫。○○さんなんて、もっと大きなシミがあったり・・・」 「私たちの年代だったら普通だから。私もココやココにも・・・」 気遣いはありがたいが、本音のところ、○○さんや知人本人や、ひいては同世代のシミ事情などに興味はない。私には、私の

        • 口下手な人間の会議対処法(というほどでもないが)

          「ちょっと、言っていることがよく分からないので、書面で出して」 遠くに聞こえる上司の乾いた声。 あー、またやってしまった。私はとにかく話すのが苦手だ。 特に、会議で自分の企画を論理的に説明し、理解を得るという作業の失敗率はかなり高い。 社会人として致命的だし、キミよく記者やってるよねと思われるだろう。でも、言いたいことがあれこれ出てきて、それを言葉にしないと気が済まないのだ。 一方、一息ついて、文書にして書くと、割と理解が得られやすい。 だから最初に会議の前に、1か

        コロナが私から奪ったもの

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        記事

          長崎とキリスト教信仰=神田千里著『島原の乱』を読んで

          4月下旬に長崎へ行ってきましたが、写真の本は、その前勉強として購入したものです。この中で『原城と島原の乱』以外は、一通り読みました。 私が「長崎のキリスト教」に関心を持ったのは、直接的には広野真嗣著「消された信仰」を読んだことがきっかけです。ただ、それ以前より、島原の乱(1637年)には惹かれるものがあり、それは、圧倒的な権力の下で人々はどう生きていくのか、どう自己表現していくのかという点で、1つのケースを示しているように感じたからです。 「支配と被支配の関係」は、私の重

          長崎とキリスト教信仰=神田千里著『島原の乱』を読んで

          シリーズ深読み読書会 『敦煌』を見て

          NHK BSプレミアムで不定期に放送されている「シリーズ深読み読書会」。 4月6日は、井上靖の『敦煌』でした。 人生に影響を与えた5冊のうちの1冊。 ひとまずビデオに撮り、1度見ただけでは理解しきれず、続けて2度見て、やっと咀嚼できるようになりました。 最も頷いたのは、この作品が井上自身の自伝小説であるということ。 科挙に失敗する主人公・趙行徳と、医学部受験に失敗し、最後は文学部哲学科に入る井上との共通点。 主人公が西夏軍に編入され、おびただしい数の死と向き合う姿

          シリーズ深読み読書会 『敦煌』を見て

          夫の海外赴任が決まった日の、不安定なアップダウンを忘れないための記録

          夫の海外赴任が決まった。 実は、少し前から話はあった。決まったと仮定して悩んだ結果、「ついて行かない」ことで気持ちは固まっていた。 しかし今日、昼に主人からのLINEを見たとき、うわずったような「ウソ…」の声とともに、いてもたってもいられなくなり、階下のローソンへ走った。酒でも呷りたい気分だったが、さすがにまずいので、10年に一度くらいしか買わないコーラを買って、飲み干した。 いつも文章を書くときは、同じ悩みを持っている人や、その情報を求めている人に届いてほしいと願って

          夫の海外赴任が決まった日の、不安定なアップダウンを忘れないための記録

          めげずに続けよ、未来はある

          15歳から男性多数の世界にいたが、22歳までは男性はただ数が多いだけで、全て対等だと思っていた。 でも、22歳を過ぎて状況は変わり、いつの間にか、大多数の男性に囲まれながら、分かったような顔をして相槌を打つ習慣が身についてしまった。どうせ私が何を言っても、「頑張ってるお嬢ちゃん(今はおばさん)」としか見られない。 だから、書いた記事を見て驚く人もいたけど、評価はありがたいと思いつつ、よくよく読めば平凡な記事だし、私が女性だったからだろうと思った。 日本は、女性の社会進

          めげずに続けよ、未来はある

          年賀状を出す理由、出さない理由

          また、この季節が来てしまった。 数年前に「年賀状、書きません宣言」をぶちまけたものの、家族・親戚には送らないといけないし、ありがたく送ってくれる友人たちへはお返ししたいしで、結局、私の年賀状は細々と続いている。 ただの物臭である。 黒の水性ペンがないとか、今日は寒いからとか理由をつけて、いつも後回しになる。 宛先をExcelに打ち込むことすら面倒なので、宛名も漫然と手で書き続けているという、カイゼンの意欲の欠片もない物臭だ。 家族の幸せ写真でも使ってみたら楽しいかと

          年賀状を出す理由、出さない理由

          三重大学の環境人材育成講座を始めてみる

          自分を高めるために大学院へ行ったり、資格を取ったりする方が多い中で、どうしてもその一歩が踏み出せず、いまだに、持っていても話せない語学資格とか、持っていることに意味がない資格ばかりの私。 文学部卒なんてそんなもんだよなと、世の中の文学部生の反感を買いそうな理由でここまできましたが、ようやく関心のあるテーマを見つけました。 仕事で大学回りをしているときに、三重大学が社会人向けの環境人材育成講座「SciLets(サイレッツ)」を開いていることを知りました。 環境対策と言えば

          三重大学の環境人材育成講座を始めてみる

          沢田研二さんのドタキャン騒動について

          この騒動を聞いて思ったのは、私には絶対的スターがいなかったなということ。大階段を歩くスターを、その真下から、両手を合わせながら見上げるようなことは一切なかった。 私は、強いて言えばSMAP世代で、アイドルがバラエティに進出し、神秘的な存在からどんどん親近感のある存在になっていった。 その後、「会いに行けるアイドル」としてAKB48らが登場し、さらにSNSの普及で、アイドル自らが発信するようになってからは、益々その傾向が顕著になった。 こうして、ファン・ファーストなアイド

          沢田研二さんのドタキャン騒動について

          「ついつい話してしまう」が理想的

          人に話を聞くときに、相手の想定より多くを語ってもらってこそ意味がある。 そのため、尋ね方には細心の注意を払っているつもりだが、それでもやはり至らない部分があり、ICレコーダーを聞き直しては反省といった毎日だ。 どうすれば、相手は話してくれるのだろうか。 私の場合、まずその場を楽しくすることに意を注ぐ。取材と言えば、どんな方であれ少しは緊張されるので、私の方からよく笑うようにして場を和ませ、相手のバリアをほどくようにする。 そして相手が通常モードになれば、今

          「ついつい話してしまう」が理想的

          誰かを傷つけてはいけない、ただそれだけ

          「新潮45」の問題の背景には、雑誌が売れない時代に先鋭的な意見を集めて、一定の支持を得たいという狙いがあったのは間違いないだろうが、編集部が「営業」と割り切って部数をかき集めているのか、本心から支持しているのかでは評価の質が異なってくる。 当初私は前者であろうと考え、出版業として誉められたものではないが、大手出版社も苦境なのだと同情する部分はあった。しかし、今回改めて「反論」を掲載したことで、編集部は心から「杉田水脈発言」を容認し、称賛しているのではないかと薄ら寒いものを感

          誰かを傷つけてはいけない、ただそれだけ

          あきらめ感に抗うには

          友人と話していて、結局最後は泣いているというシーンは珍しくない。 昔から私はよく泣いた。言葉でうまく表現できないので、気持ちが言葉を追い越してしまい、それが涙となってあふれてくる。 でも最近は、少し違っていた。涙に至らない会話が増えてきたせいだろう。誰かや何かを強烈に好きになったり、嫌いになったりすることもなく、良くも悪くも安定し、時間は淡々と過ぎていた。 ◇        ◇ 先日、大阪にあるおしゃれなバーで、友人4人でテーブルを囲み、他愛ない世間話に花を咲かせてい

          あきらめ感に抗うには

          「の」か「に」か

          『地図のない場所で眠りたい』(高野秀行、角幡唯介著)は、ノンフィクション作家で、同じ早大探検部OBの2人による対談本。対談本は編集が容易なので、あまりお金を出して買いたくなかったが、先日読んだ高野氏と清水克行氏による『世界の辺境とハードボイルド室町時代』が面白かったので、読んでみることにした。 高野氏の本は結構読んでいるが、角幡氏のものは『空白の五マイル』のみ。新聞記者方式の取材で事実を固める角幡氏に対し、高野氏は生活の中から見えてきた真実を、作者の目線でまとめていく。その

          「の」か「に」か

          嫌いな「写真」を好きになるまで

          私は写真が苦手だった。今も本音を言えば、あまり得意ではない。文章なら後から修正できるが、写真は一瞬を逃すとおしまいであり、その緊張感に滅入ってしまうこともしばしばだ(どんなに弱いんだ、私)。 これは新聞社時代のトラウマが大きい。入社した当時はフィルムとデジタルを併用していた頃で、写真部出身の上司はデジタルが好きじゃなかったらしく、「写真はフィルムだろ」と常々言っていた。だから、しばらくは支局のカメラもフィルムオンリーだったのだが、現像するまで出来が分からないという不要なスリ

          嫌いな「写真」を好きになるまで