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【短編小説】ひとりぼっちの稽古場
ある日稽古場で1人になった。
使い慣れない稽古場は広く、ただでさえ広い稽古場は鏡のせいか余計広く感じた。
ここで何をしようか。頭を巡らせるも起きてから空腹の胃は脳を働かせてくれない。
試しに「ない」窓を開けてみることにした。
世間でいう「パントマイム」の練習だ。
誰かに倣ったわけではないが見様見真似でなんとか形にしてみる。
鍵を開け、窓をスライドさせた。
外は快晴、雲ひとつない青空が広がってると自分に言い聞かせ、深呼吸をしてみるが、虚しくもそこにはマスクの匂いのみ。
ため息をつきながら窓を閉じようとすると、目の前の自分と目があった。
しかし、そいつは目を逸らした。
私の鏡像に過ぎない存在。
ないはずの存在。
そいつがまるで意思を持ったかのようにはっきりとノーを顕にした。
怖かった。
慌てて窓を閉じた。
信じたくない。
ここからは怖いもの見たさだ。
もう一度存在しないガラスに手を触れ、空中に存在しないその窓を開いた。
今度はいなかった。
安堵をしたのも束の間、鏡の前のカーテンが閉じられた。
暗闇に包まれる。
部屋のスイッチを押しても電気がつかない。
暗く、自分の息遣いだけが聞こえる部屋で体温がわずかに下がるのを感じる。
あかりを求めてドアを開けるも鈍い音がして開く気配がない。
私しか鍵を持っていないのだから外からは鍵がかけられないはずなのに。
まさかそんなわけない。
恐怖を堪え、どうにか状況を変えたい一心でカーテンに手を触れる。
ひんやりとしたガラスが指先の体温を奪った。
そうか。私は閉じ込められてしまったんだ。
このお話は全てフィクションです。
ただ稽古場に誰もいなかったのは本当です、みんな稽古場を間違えて寂しくひとりで30分程パントマイムの練習をしてました。
12/16,18の舞台に向けての稽古です。
短編二本立て公演
私は「ある?ない?」の作・演出・出演です。
「ない」ものを探しに行く人たちのお話です。
ホラーではありません、どちらかといえばコントです。
ご興味あったらぜひ。
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最近更新頻度が落ちているのは本番前だからです
また小説投稿する時をお楽しみに。
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