記事一覧
「アンナ」 ドラマ鑑賞録
人は何のために嘘をつくのだろう。誰かのためのささいな嘘ならば、みんな無意識について生きているのかもしれない。では、自分のための大きな嘘は糾弾されるべき罪であるのか。
主人公のユミは田舎の貧しい家庭に生まれるが、持ち前の頭の良さや恵まれた容姿、そして数奇な運命によって、嘘の人生——アンナとしての人生——を生きることになる。
事の発端は、ユミが成績優秀でありながら高校の教師との恋愛がばれ、傷心
短編小説: 間違えた恋人
寒い朝に、食パンを一切れ取り出す。八枚切りのそれは薄っぺらくて、この後の仕事の量を考えてから三枚をトースターの網に載せる。焼き上がると、紫帆ははじめにピーナッツバターを厚めに塗り、それからバターナイフを替え、薄く苺ジャムを塗った。母はいつも一つのスプーンを使っていたから、ジャムの瓶にはいつもピーナッツバターが当然のように混じっていた。
「またそれ」
キッチンに顔を出した雪彦が、背後でスーツの
読書日記 01「全部を賭けない恋がはじまれば」
"どこまでも逃げる人生って、悪くない。途中で何か幸せなものに引っかかるはずだから。いい思いをしながら停止することがあるから。
そのループの中で、ずっと生きていって。"
「全部を賭けない恋がはじまれば」稲田万里
全速力で走りだす、あの感じ。滑り出す、魂が吸い寄せられる、引っ張られる、引力を感じる。林檎がすとんと落ちる身軽さで、心が持っていかれる。ここにいるのに、あちらにいる。そんな風になって
愛の言葉のその種類 「別れる決心」パク・チャヌク
言葉というものはとても厄介なもので、それのために苦悩したり勘違いしたり早とちりをしたりして、そのために苦労することがある。
私は時間があれば本を読むかツイッターアプリを開くかあるいは音楽を聞いてその歌詞について空想を拡げたり、映画やドラマのセリフをいちいちメモして大事にとっておいたり、言葉というものに傾倒し、それなしでは人生なんて生きてはいけないと思うのだけれど、それでも普段言葉を扱うのにはかなり