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時計ブランコのシャンソン
垂らした秒針の刻む
影のうねりと二重の意味
はちみつの儀礼の祭壇に
老師の杖のなびきがある
九月の落葉は川辺にあり
伝う山脈は遺児
空と土がはるかに
交わるところが海である
天体観測の様相は
緊迫した定めを断じ
御業の書の恩恵は
等しく我らを分解する
数字は分解されうる
もともと土でできているから
飲み薬は太古を求める
破片、もまたしかり。
筆の並びと歯並びと
木々の催し物の幕間に
猿が柿の実を投
燃やしているのか、自らの情熱のかわりに……
燃やしているのか
自らの情熱のかわりに。
まだあどけなさの残る空を
焚き付けているのか。
知らなければ良かった世迷い言のために
惑わされているね
枯れかけたえのころぐさの
伸びやかなのぎの硬く脆くなる頃に似て
意志が柔軟さを失い
自らが呼び寄せた秋のために
ひどく憔悴して瞳孔は閉じ
見ることも聞くことも
感じ入ることもやめ
いつか君の言っていた
魂の燃える音さえ
どこかに忘れてきたのだね
置き去り
扉の前に今しがた。……
扉の
前に
今しがた
日は差し込み
夏の
ベランダに
今しがた
陽炎立ち
喜々として男
釣り竿を持って川辺に
一人座り
釣り糸を投げ入れ
日暮れまで
一人座り
猫柳が
彼の背を撫で
それは俺の
浅はかな
イメージ。
騒がしい野外の
夏の日
布団の中に
一人眠り
今しがた。……
四行詩(2022年6月11日)
私は死に向かって歩いているのだけれど
なぜか昨日の方が死に近い
いくつもの死を後ろに残してきたとして
私が向かっているのは本当に死か