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夏が来ると、言った。

湿り気を帯びた小道の
先の先へと
春の彩の褪せた小道の
先へ先へと
轍はまだ新しく
泥の光沢は残っている

人を小馬鹿にしたような
小鳥たちが喚き立てる
君は言った、君たちは言った
夏が来ると
夏が来ると、言った。
芽吹きの季節は時代遅れ、と。

一つきりの小道の沿線は
やや乾き、やや湿り
私は無心に歩いている。
足跡はまだ新しく
砂利混じりに
泥の光沢は残っている。

人を小馬鹿にしたような
小鳥たちが悩んでいる
君は言った、君たちは言った
夏が来ると
夏が来ると、言った。
青々とした葉がそうだと言った。

あの感動の日々は
私の歩いてきたぬかるみにあったか
これから歩く乾いた砂利道にあったか
おそらくどちらも、どちらにも
君たち小鳥たちは、新緑の中に
歌を覚えたのだろう

ならば喚き立てるな、悩むことをやめよ
そして後とも先とも言わず
古くも新しくもなく
そうだ、日々そのものを歌え。

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