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驟雨に流る1【相談No.01】黒い服の女3

「信じる者は救われる」なんて言葉は結果論。救われなかった者は、不平不満をまき散らして、適度に周囲の共感を得て、そのままフェードアウトしていくだけのこと。救われた者が言った言葉だから、世に残っただけのこと。この2つに、それ程大きな違いなんてない。

A県A市の調査が始まった。
私じゃない占い師が言う「土着の呪い」、信じさせてもらう。
A県は関東圏居住の私が気軽に行ける距離ではない。また、もうすでに祖父の家は取り壊されている。周辺の聞き取り調査は探偵みたいで憧れはするが、実際どのくらいの住人が答えてくれるかは不明だ。
でも、距離が離れているからと言って、何も出来ない訳ではない。

地区の歴史や裏山の石仏は、A市の教育委員会文化財課の文化財マップや調査報告書。最近はネット上に公開している市町村が増えている。
地域独自の信仰や儀式、言い伝え等のオカルト要素なら、匿名掲示板や突撃レポを掲載しているWEB記事。
地域での事件についてなら地元新聞。これも最近はネットで読める。古い記事は国立国会図書館で閲覧可能。

こうしてみると、ミステリードラマやホラー小説に登場する、職人気質の“全国をフィールドワークをする民俗学者”は、もう絶滅危惧種なのだろうか?と思ってしまう。とても憧れているのだけど。

季節は完全に夏になっていた。
1ヶ月程度かかったが、ざっとこのくらいだろうか。
歴史と共に歩んできた地域。その分、地域に残る曰くや言い伝えが多いのだろう。
その一つ一つをネットの力で調べあげるのは難しい。けれど現地に飛んでも、地域の文化について語れる住民を捕まえられるとも思えない。
そもそも肝心の“鶏”に関係する伝説や儀式はいまだ見つけられていなかった。

期限がある訳でもないが…何も成果を掴めない時間は、苛立ちや不安にも似た感情を覚える。
実際は自分が見当違いの方向に動いているのではないか、と。

ここまでくると「土着の呪い」ではないのだろうか。まったく、適当な占い師め。
仕方ない、鶏からアプローチしてみようか?

引用:現代国語例解辞典〈第三版〉より

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