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何をもって「おわった」といえるのか 【水俣を訪れて】
2022年8月末。秋の兆しを感じる少し肌寒くなった東京から、まだ真夏日和がつづく熊本県水俣市を訪れた。
戦後の経済成長を牽引した企業チッソによる工場廃水の水銀が引き起こした文明の病「水俣病」。人々が豊かさを追い求めた裏側で生まれた犠牲と、現在まで残るその遺産をこの目で見て、少しでも学びを深めたかった。
水俣病について関心をもったきっかけは、大学院の授業で読んだ石牟礼道子さんによる『苦海浄土ーわ
平和を祈る、「過激」と「綺麗」の狭間で
小学6年の修学旅行以来、実に12年ぶりに広島を訪れた。
数年前にリニューアルされたという平和記念資料館にきてみたかったからだ。
歴史学を専攻する院生として、歴史の負の遺産に関心をもつ者として、そして一人の人間として。
資料館は文字通りリニューアルされ、CG映像を用いたり、第三者の語りではなく、主語を感情を持つ一人の「私」としたことで展示にどんどんと引き込まれていく感覚を覚えた。
一方で、原子爆
「美しさ」のヴェールに隠された「野蛮さ」【奴隷制プランテーションから考える】
アンジェラ・デイヴィスの『監獄ビジネスーグローバリズムと産獄複合体』(2008, 岩波書店)を読んでいて、ふとある言葉に引っかかった。
奴隷制プランテーションの中に建てられた今も残っている19世紀の大邸宅がどんなに美しくとも、われわれがその芸術的賞賛で満足してしまうことはほとんどない。黒人奴隷の苦役についての充分に視覚的なイメージがわれわれの周りには広く行き渡っており、すばらしい大邸宅の表面のす
大学院、修士1年目を終えて
2021年4月に一橋大学大学院社会学研究科の修士課程に入学し、あっという間に1年目が終わりました。まだ春休み中で事実上学年は修士1年ですが、1年目のすべての授業が終わったので、勝手に総括しておくこととします。笑
今春、桜が散りかけた国立キャンパスに初めて一人で足を踏み入れ、友達も知り合いも誰もいない、あのコンフォートゾーンから抜け出した直後の居心地の悪さと適度な緊張感を昨日のことのように思い出し
Black Lives Matter抗議デモが映したアメリカ社会の実態 【400年の黒人差別の歴史と、Systemic Racism: 制度的人種差別とは?】
自己紹介こんにちは、吉田梨乃(@rinyooon1997)です。
昨年、トビタテ!留学JAPANの奨学生として「人種問題」をテーマに米ジョージア州に1年間の留学をしていました。
現地では奴隷制度や公民権運動、人種にまつわる授業を受けながら、NAACP(公民権運動組織) にも参加し、アメリカの人種差別の実態を学んできました。現地でフィールドワークやインタビュー調査、文献調査を行い「アフリカ系アメリカ