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記事集・H

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私は蓮實重彥(蓮實重彦ではなく)の文章にうながされて書くことがよくあります。そうやって書いた連載記事や緩やかにつながる記事を集めました。
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2024年3月の記事一覧

タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

 引きつづき、梶井基次郎の作品を読んでいきます。今回も『檸檬』です。

・「共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)」:対象作品『愛撫』
・「出す、出さない、ほのめかす(『檸檬』を読む・01)」:対象作品『檸檬』

 引用にさいして使用するのは『梶井基次郎全集 全一巻』(ちくま文庫)ですが、青空文庫でも読めます。

◆表象に対する紡錘形の立体のささやかな抵抗*タブロー、テーブル、タブラ

 丸善の

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立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

 今回は、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』のうち、「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」をめぐっての読書感想文です。

 この「フーコー論」は、「薄っぺらいもの」というシリーズを始めるきっかけになった文章の一つでもあります。初めて読んだのはずいぶん前のことですが、以来私にとって気になる文章であり続けています。

引用文の余白に書く

*「顔と視線との離脱現象」

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蝶のように鳥のように(断片集)

蝶のように鳥のように(断片集)

 今回の記事では、アスタリスク(*)ではじまる各文章を連想だけでつないでありますので――言葉やイメージを「掛ける」ことでつないでいくという意味です――、テーマに統一感がなく結びつきが緩く感じられると思います。

 それぞれを独立した断片としてお読みください。

     *

 ない。ないから、そのないところに何かを掛ける――。

 何かに、それとは別の何かを見る――。これが「何か」との出会い。遭

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「かける」と「かける」(かける、かかる・03)

「かける」と「かける」(かける、かかる・03)


かけるとかける
 かけるとかける。
「かける」と「かける」。

 上のフレーズは「AするとAする」と読めば、「Aすると(その結果)Aする(ことになる)」とも、「「Aすること」と「Aすること」」とも読めます。

 いずれにせよ、前者と後者は別物でなければなりません。

     *

 かける、掛ける、懸ける、架ける、賭ける、欠ける、駆ける、翔る、駈ける、掻ける、書ける、描ける、画ける

「かける

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