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リンダ・グラットン氏「生き方のイノベーションと、都市のカタチ。」を聴講して

皆様、こんにちは。一般社団法人REIONEの河西です。10月23日から千葉県柏市でスタートしました、”KASHIWANOHA INNOVATION FES 2021”、このイベントのオープニングトークとしてロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン先生(以下、「リンダ先生」と表記)が講演をされました。リンダ先生と言えば、「WORK SHIFT」「LIFE SHIFT」の著者として、大変有名ですが、同時に日本社会にも大きな影響を与えて下さったものだと、私は考えています。今回は、先般のコロナウイルスの感染症拡大を経て、先生が世界の変化をどのように捉えられたのか、私自身非常に興味を持って、拝聴させて頂きました。簡単ではありますが、私なりに考察をいたしましたので、本記事にまとめてみました。

https://kashiwanoha-innovation.jp/

高齢化が「個」に与える影響


最初のトピックとして、日本が高齢化先進国である事にまず、触れられました。そして、近い将来アジアの大きな隣国が後を追い、高齢化の課題に直面する事に言及し、だからこそ今、この課題に真っ先に取組む日本のアドバンテージについて言及されておられました。

と、ここまでの内容は、「経済」という視点から、様々なメディアでも取り上げられている話題でもあります。しかしこの後、この高齢化を「個人」という視点で捉えたリンダ先生の話に、私も身体の奥から湧き上がるエキサイティングな感覚を感じずにはいられませんでした。

「長寿になるという事は、何度でもやり直したり、チャレンジが出来る事です」
「私たちはいつでも起業家になれるのです」

考えてみれば、織田信長が幸若舞「敦盛」を好み、桶狭間の戦いの前夜に舞った話として有名なくだり、「人間五十年…」と歌い、舞った頃から考えますと、約2倍もの時間と機会が与えられているわけです。

そう考えますと、最も大きな制約である、「時間」というものを、人類史上最も多く手に入れらている私たちは、それをどのように活用するのか、その為の仕組みをどのように作るべきか…そんな事を、私の中に湧き上がってきた少しの使命感と共に、想いを巡らせておりました。

そしてもう一つ、リンダ先生の言葉で、

「What is my life’s story?」

誰もが、なりうる自分像を持っていますか?という投げかけがありました。
私たち自身が、プラットフォームを持っていて、それぞれの自分像へ近づいていける社会になってきており、プラットフォーム=コミュニティの活用がその鍵であるというお話がありました。

日本の働く環境について


次に、日本での「働く環境」や「価値観」については、リンダ先生より「遅れている」という厳しい指摘がありました。ここにも、「個」に寄り添った、リンダ先生ならでは視点で解説がありました。

「そもそも、20歳前後で人は学びを終えるべきではない」
「学び続ける事を、助ける会社を求めるのです」

ここでは、人生100年時代において、これまで、人が「働く」という事に費やす時間が増えいくことに対して、その時間の充実の為に、個人は学び続けていく必要があるという事と、それを叶えていく会社がこれからは、支持されるという変化があるという事のようです。

この点、22歳で就職活動をし、企業の為に働こうとする日本人の価値観が、既に世界で起きている変化と乖離がある事を言及しているのではと感じました。

いつでも新しい事を学び、いつでも新しいチャレンジをしていく「個」があって、それを支える社会システムとして「企業」というような関係性のあり方について、日本社会は真摯に受け止め、考えるべきだという提言のように私は受取りました。

会社と従業員は”親と子”ではなく”大人と大人”

その後、更に働く環境について、その中でも特に「企業」のスタンスについて話が進んでいきました。

「会社と従業員は”親子の関係”ではなく、従業員は”大人同士の関係”なのです。」

この言葉の重みを、グッと感じながら拝聴をしておりました。
会社の為、お金の為に働く以前に、1人の尊重すべき「大人」であるというメッセージだったと私は受取りました。

加えて、リンダ先生はその後に、企業と個人の関係において、このようにもお話されました。

「企業の雇用は、もっと出入りが自由な場所であるべきです。」
「何歳でもエントリー(入社)できる制度が重要だと考えます。」

おそらく、日本の雇用環境の流動性が低い事に対する意見であったように考えられます。
日本企業には伝統的な長期雇用と、その前提の教育に対する投資という考えがあったと思います。前のパートでは、個人の学びを支援するのも企業の役割であるとお話され、一方で、その従業員が退職する事も許容する、これは従来の日本企業の教育に対する投資についての価値観では相反するように聞こえると思います。せっかく投資した従業員が退職するわけですから。

しかし、もっと長期的なスパンで、企業と従業員が良い関係を築くという視点にたつべきと言われているように感じました。”出入りが自由”という言葉には、最もお互いに良いパフォーマンスが出来るときに雇用関係にある状態が、双方にとって良いという事を言われているのだと思います。仮に一度退職しても、また、一緒に働いてもいい、目的とスキルが合致している時に企業と個人は協業し、共に高い成果を得られ、その為の場と機会を企業は提供するという事なのだと思います。

ここからは私見になりますが、断続的に不況と繰り返し向き合ってきた私たちの世代において、企業と個人の力関係は、企業側に力があったように思います。
しかし、リンダ先生が言われているのは、個の力が企業を上回りつつあるという事ではないでしょうか。各々の個が、人生の目的を叶える為のプラットフォームとして、或いはコミュニティとして「企業」が存在している。その形は、時と場合によって集まる人が代わり、集まった人たちの価値観の統合によって、目的を有するという事なのかもしれません。

これまでの大企業が、本来価値観の違った人材を、強引に「ビジョン」の基に統合していく経営スタイルの終焉が近いという意味にも、捉える事ができると思います。

”個”中心の街づくりとコミュニティ


後半は街づくりの要素について、お話が移っていきました。
特に、街の個人がそれぞれの目的を達する一つの方法に、「起業」を挙げており、それを叶えやすくする機能を有する街をどう作るか。というお話がありました。

「起業家精神を有する人の存在、金融機関の存在、大学等の研究機関の存在」
「日本人の起業家精神は、他国と比べてやや低いのは残念」

少し、厳しい指摘もありましたが、街の機能として上記のものが揃っているのが良いというは、私も日ごろからインキュベーションに関わる者として、同意するところです。
しかしながら、これはあくまで、ハード面の話であり、それらを活用する人が、実際に情報やノウハウをシェアし、共創、共助する仕組みとしてコミュニティが必要であるという指摘もありました。このコミュニティについては、もう一度最後に触れたいと思います。

意外にも、全てがデジタルに替わられない、今


さて、今回、このプレゼンテーションは、千葉県柏市の柏の葉キャンパス地区が先導して行われた企画のオープニングトークとして企画されました。この地区では、スマートタウンとして街を挙げた、データ活用の準備が進む都市でもあります。このデータ活用、それからバーチャル、テレワークについてもお話がありました。

リンダ先生が取り上げられたのが、今のロンドンの街の様子でした。現在のイギリスでは、ロックダウンも終わり、人々がオフィスに戻り始めていて、先生も休日には美術館に足を運ばれたというお話がありました。しかし一方で、ロックダウンの期間に、多くの人がデジタルの活用やワークスタイル、ライフスタイルを考えるきっかけになったのも事実であるとの事。その上で、また、人の繋がりの大切さも実感し、一部の行動様式は元に戻りつつあるという事でした。これは、利便性をよく理解をした上で選択をしているという点で、ロックダウン前とは違う意識の中で取られている行動であると言えます。

先生の考察では、コロナウイルスの感染症拡大の期間、「人との繋がり」の価値を、今まで以上に学んだ時間だったのではないか、という事でした。コミュニティの力が成しえる事を再認識したという事なのでしょうか。

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コミュニティとエキサイティング


ここまで、再三に渡り、取り上げられたコミュニティについての話。実際にそのベストな形について、リンダ先生から言及がありました。

「多様性のあるコミュニティがベストです。都市には若者も年長者のどちらも存在している事が望ましい」
「異なるタイプの人、違う食べ物や文化、人生観を持つ人が交流できる、まさにエキサイティング!」

このコメントだけを捉えると、これまでも「ダイバーシティが大切」という表現は日本国内でもここ数年で耳にしてきたと思っています。しかしそれは、今の日本企業という形が先にあって、その中に強引に「多様性」の概念を取り入れようとした形であり、少しリンダ先生の言われていたイメージと違うようにも感じました。

私の解釈ですが、おそらく多様な人が行き交う中で、都度、目的やその時々に個人が持った価値観によって形成されるもの。もしかすると、コミュニティの数は多く、1つ1つは少人数で構成されている場合もあるのかもしれません。度々、出来ては、解散したり、統合したりといったように、柔軟性を帯びた形のものなのかもしれません。長く人を縛り付ける事も無く、規模を追う必要もないものなのかもしれません。

”規模の経済”という言葉の中に捨ててきた、個人の幸せと向き合うための、”仕組み”と”価値観”をどう持てるのか、そのような問いに社会全体で向き合い始めたのかもしれないという事を感じました。同時に、この問いに答えを出し、それを形にする事が、私自身の新たな使命のように感じて、新たにこれから取り組むべき課題と強く感じました。

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