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木彫りの熊を掘るように。

――木彫りの熊って、最初は木なんですよね。木を削って、熊の形にしていくんです。当然のことをいっているんですが結構大事なことだと思っていて、「つくる」という意識だけでなく「削る」という意識で作品と向き合うべきなんですよね。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「木彫りの熊を掘るように。」というテーマで話していこうと思います。


🏨昨日の記事のコメント欄で…

昨日、「言葉探しの旅」という記事を書きました。「花火の幽霊」という歌詞をつくったんですが、歌詞のなかに描かれる物語やタイトルにより似つかわしい言葉選びをしていたことに触れました。

「花火の幽霊」の「花火」は、線香花火のことを指しているあら、打ち上げ花火を思わせる単語を使うのは好ましくないよね……といった具合です。正解はないけれど、自分が納得するまで言葉を探し続ける。そんな言葉探しの旅の意義を綴ったんです。

で、この記事を読んでくれたnoteの知り合いの大谷さんから、以下のようなコメントをいただいたんです。

非常に、わかります。最初、「正解」はわからないけど、「違う」ことだけわかる。「正解」がわかるまで、「違うところ」を削っていく。私は、「木彫りの熊をつくる」と名付けています(「熊」を彫るというより、丸太から「熊じゃないところ」を削る行為なので)

僕のnoteの記事「言葉探しの旅」のコメント欄より

このコメントをいただいたとき、するっと腑に落ちたんですよね。「木彫りの熊」のたとえが秀逸すぎて、思わず誰かに伝えたくなっちゃって、受け売りではありますが、今回の記事のネタにさせていただいたというわけです。


🏨木彫りの熊を掘る

木彫りの熊って、最初は木なんですよね。木を削って、熊の形にしていくんです。当然のことをいっているんですが結構大事なことだと思っていて、「つくる」という意識だけでなく「削る」という意識で作品と向き合うべきなんですよね。

より完全な熊に近付けるためには、「熊をつくろう」という意識よりも「熊にするために削ろう」という意識が必要。粗削りなものにやすりをかけて削っていき、磨いていく。その結果、作品を光らせることができると考えるのです。

創作とは何もないところに何かを生むものだから、はじめは足し算の作業をしなければいけないんだけれど、一通り足していった後は、求めたい数値に近付けるために、ミクロな数字を引いていく引き算の作業が求められてくるといえます。

「木彫りの熊を掘る」や「引き算をする」を心掛けることで、より精度の高い作品の制作を追求することができるというわけです。

こういう内容を書いているうちに、大谷さんからのコメントを引用しているということもあり、とある記憶に辿り着きました。僕の初書籍『Message』の共同創作のことです。

僕は自分の20歳の1年の経験をベースにした『Message』という物語をつくったんです。つくったといっても、僕ひとりではなくて、何人かの仲間と一緒にああでもないこうでもないと議論しながら創作と向き合っていたんです。

共同創作は全部で2回行いました。1度目は物語を書き上げるため。2度目は物語を磨き上げるためです。大幅に加筆したこともありますが、2度目の共同創作の方が時間がかかりました。2ヶ月で書き上げた物語を、4ヶ月かけて磨き上げたんです。

その2度目の共同創作のメンバーのひとりが大谷さんでした。

他のメンバーと共に表現や構成を議論しながら、磨き上げる作業を繰り返していったんです。言葉ひとつを取り上げて時間をかけて議論することもありました。

その果てに生まれた『Message』は、普段本を読まない人から「読みやすい」と言われ、「涙が出た」という言葉をもらうほど誰かの心を動かす物語になったのです。もちろんいくつもの要因が重なっているとは思いますが、「木彫りの熊を掘る」作業なくしてこれらの結果は生まれなかったと振り返っています。


🏨逸早く磨き上げるために

僕は今、泊まれる謎解き『花火の幽霊~木の家ゲストハウスからの脱出~』という謎解き体験コンテンツのシナリオをつくっています。僕の職場である木の家ゲストハウスを舞台に、宿泊型の謎解き体験コンテンツをつくることが決まり、そのシナリオを僕が担当することになったんです。

ちなみに、お気づきだとは思いますが、昨日の記事でも触れた「花火の幽霊」という歌詞は、このイベントを彩るテーマソングの歌詞なんです。

物語は完成して、メンバーの合意も取れたんですが、シナリオはまだまだで、今日、明日でつくりあげないといけません。というのも、プレ公演が月末にあるから。鬼のスケジュールで動いているんですが、とにもかくにもいったん書き上げる作業を終えないと磨き上げる作業はできなので、粗削りでいいからシナリオをつくりたいんです。そして、粗削りでもいいからプレ公演を行いたいんです。

謎解き体験コンテンツのシナリオをつくるなんて初めてのことで、右も左も分からないからとにかく早くつくって、やってみて、ブラッシュアップしていかないといけません。木彫りの熊を掘る作業と向き合い、より理想的な作品にするためにも、今が踏ん張りどき。

やらなければいけないことはたくさんあるけれど、磨き上げることで作品を輝くことを知っているから、そして、見たい景色とつくりたい未来があるので頑張ります。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240710 横山黎







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