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図書館は「会話」をする場所である。

――ノルウェーの公共図書館法には、次のような文章があります。「公共図書館は、公共性をもつ会話と議論のための独立した出逢いと活動の場である。」


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「これからの図書館は『仲間』と『体験』を追求した場所である」というテーマで話していこうと思います。


📚これからの図書館って?

昨日の記事では「未来の図書館」をテーマにあれこれ綴ってきました。僕なりに、これからの時代は「仲間」と「体験」を追求した空間設計が図書館にも求められているんじゃないかという話でした。つまり、孤独を解消してくれる仲間と交流できる居心地の良い場所、そして、ハレを感じられるような非日常的な体験ができる場所こそがこれからの図書館だと考えました。

そんな仮説を立てたこともあり、図書館について知りたくなった僕は、すかさず大学の図書館で図書館に関する本を4冊くらい借りて、昨日の昼間、ざっと全部に目を通してみたんです。そしたら、なかなか興味深いことが分かったので、アウトプットしていきたいと思います。

僕の立てた仮説、「仲間」と「体験」を追求する図書館という切り口はあながち間違いではなかった、むしろ正解だったと答え合わせできたので、丁寧に語っていきますね。

今回の記事は『オランダ公共図書館の挑戦 サービスを有料にするのはなぜか?』(吉田右子)という本を参考にしています。


📚図書館は会話をする場所!?

昨日まで知らなかったんですが、図書館の事業やサービスの開発が盛んなのは北欧諸国らしいんです。デンマークとか、ノルウェーとか、オランダとか。

特にサービス開発に力を入れている国はデンマークでして、「オープンライブラリー」というシステムを試みています。つまり、職員がいない時間に利用者が図書館のサービスを使える仕組みです。デンマークでは朝8時から10時までと、夜17時から22時頃まで開放している図書館が多いとのこと。

職員が不在ともなると、本を勝手に持ち出したり、犯罪の温床になるような不安がよぎりますが、デンマークの人たちはお互いがお互いを信頼し合う「社会信頼度」が高いので、あらゆる心配事はほとんど起こることはなく、杞憂に終わったそうです。

また、本書で紹介されていたデンマーク人の学生は、こう語ります。

「図書館はすでに本を借りるだけの場所ではなくなっています。」

『オランダ公共図書館の挑戦 サービスを有料にするのはなぜか?』(吉田右子)

そうなんです。僕らは「図書館」=「本を借りる場所」という公式がすぐに浮かんでしまいますが、デンマーク、あるいは北欧の図書館ではそうではないんです。勉強する場所、コンピュータを使う場所、音楽を聴く場所、映画を観る場所、ビデオゲームをする場所、飲食する場所、友達と話し合う場所、イベントに参加する場所、誕生日を祝う場所……様々な用途で図書館が利用されているんです。

ミシェル・ヌードセンの『としょかんライオン』という絵本のなかで、図書館で静かにしないライオンを追い出す場面があります。掟を守れない者は図書館を利用する権利がなかったのです。そのように、図書館は静かにする場所というイメージがありますが、デンマークの公共図書館はそんな掟は通じません。ビデオゲームをする子どもがいれば、飲食しながら歓談しているグループもいるからです。

図書館が賑やかだと静かに本を読んでいる人の妨げになるじゃないかというクレームが飛んできそうですが、デンマーク公共図書館では「賑やか」にこそ重きを置いているのです。それは、デンマークが対話を中心とする学びを重視しているから

老若男女すべての人が教育の機会を得ることができる図書館という公共性の高い場所こそ、賑やかといわれるほど自由な会話や対話が生まれる空間である必要があります。賑やかだからこそ、利用者すべてにとって、対話をきっかけとした学びの場となっているのです。

北欧の教育には僕自身関心があって、いつかがっつり調べてみたいなと思いながら、もうすぐ大学卒業という時期になってしまいました。世界で最も進んでいる教育先進国はフィンランドといわれていますし、北欧の教育環境、教育システムに関心があったというわけです。学びの研究が進んでいるからこそ、それに紐づく図書館の事業やサービスも進んでいるのかもしれませんね。


📚「仲間」と「体験」の図書館

デンマークではありませんが、同じく北欧のノルウェーの公共図書館法には、次のような文章があります。

「公共図書館は、国に住むすべての人に、図書やその他のメディアを無料で提供することによって、知識、教育、その他の文化活動を積極的に推進する。公共図書館は、公共性をもつ会話議論のための独立した出逢いと活動の場である。」

『オランダ公共図書館の挑戦 サービスを有料にするのはなぜか?』(吉田右子)

世界初、「図書館は会話をする場所である」と定義した法律です。元々はなかった要素なんですが、2013年に改訂されて上のような内容になったそうなんです。

このような時代の流れを汲むと、「図書館は本を借りるだけの場所である」という考えは前時代的でアップデートするべきものであるといえます。人と人とが待ち合わせる場所、交流が始まる場所、イベントが開かれる場所、対話をすることで学びが生まれる場所……そういった捉え方が、今後の図書館を考える上で必要なのではないでしょうか。

昨日の僕の記事の話につなげると、これからの図書館というのは、本をきっかけに利用者たちの交流や対話によって成立するものであり、イベントや日常のなかのハレを体験することのできる場所。一言でいえば、「仲間」と「体験」を追求した図書館といえそうです。

もっと図書館の歴史や世界各国の図書館の実態を調べてみたいなと思いました。なんならまとまった時間を見つけて北欧に行きたいですね。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240126 横山黎


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