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【うた#2】「Twilight」

傘を片手に持ちながら 家に帰る夜道
小雨の粒が これからの僕の道を濡らす
顔を上げて 街灯の光 傘越しに見てた
ビニールに溜まる水滴に描く 明日の予定
 
テレビ点けてもつまらない すぐに消した僕は
日記に“早く明日になって”と筆を走らせる
君の微笑み 今度はいくつ見られるかな
時計はいつも望むときに針を遅らせる
 
新たな光が新たな風を
少し寝坊かな 君のこと考えすぎたかも
待ち続けた 三ヵ月の記念日
早く君に会いたいな
口元緩む 足が躍る
 
大都会 真ん中 君の隣
笑顔こぼれる 本当に愛しい時の中で
強く手をつないで 君の声聴く
それだけで 愛の歌 あふれる
まばらな歩幅も向きは同じ
 
たとえ黙ったまま 時が過ぎることがあっても
心と心 会話する時間 だから平気
 
たとえプラン通りにいかず 慌てふためいても
二人の誓う未来には きっと幸せ待ってる
 
嫉妬は突然人を変える
素直だからかな 少しだけ強がっていじけるんだ
全てが始まったあの日のことを思い出して
偽りのない青空 目を凝らして
 
公園のベンチで少しだけ泣いた君
涙が出るのは本当の自分と出逢うためさ
潤んだ瞳の君は“優しいね”と小さく
拭った分だけ人って前より強くなれる
 
今日はありがとう
君を心のままに抱きしめる
なかなか帰れない改札口
通った後も何度も振り返り
 
いつまでも君を信じているよ
笑顔こぼれる 本当に愛しい時の中で
強く手をつないで 君の声聴く
それだけで 愛の歌 あふれる
まばらな歩幅も向きは同じ
 
長い影法師 連れながら 家に帰る坂道
沈んでいく陽は これからの僕らの道を照らす


――――――――――


人は誰しも、
夕陽のような思い出を抱えて生きている。

いつ思い出しても美しく、
心が目を開けられないほど眩しい思い出。

一日の終わりかけに蘇ってくる思い出。

昼にしがみつきながら沈んでいく太陽のように、
執拗に残り続ける思い出。

思い出した後には闇だけが待っている思い出。

それでも、
夜の後で
世界を同じように染めていく陽のように、
再び思い出してしまう思い出。

 
このうたは、
僕が中学3年生のときに綴ったもの。
当時付き合っていた子とのエピソードが
元になっている。

読めば分かるように、
3カ月記念のデートの前日から
当日の帰り道までを描いている。
 
ひたむきに恋と向き合っていた
あの頃の僕が、
ステキな時間を忘れないように
記録した言葉たち。
彼女はそこに音をくれた。
僕の誕生日に
木漏れ日のような声で歌ってくれた。
それがこのうた、
この思い出。
 
沈んでいく陽は
僕らの道を照らしてくれなかったけど、
夕陽は終わりの前の前兆に過ぎなかったけど、
今でもこの胸に降り注ぐ薄明りは、
あの日の涙と笑顔を連れてくる。
 
思い出とは、そういうものだ。


――――――――――


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