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神を知覚できる子供たち【ギフテッドの世界】『小説版』

私は、幼児の頃に自身の手足が動くところを、不思議そうに眺めていた。

「手が動く、身体がある?」

というか、言葉が話せる? なぜだ?

自身の手足を自分の意思で動かして、初めて自分が肉体を持っていることを認識した。

「この肉体は人間というのか、この年齢で、初期の状態で、これだけ能力とは、素晴らしい」

私は人間に生まれてきたことを誇り思った。そして、小さな顔には笑顔が溢れた。

「そして、この世界は地球というのか」

部屋の中の家具や道具を確認したあと、近くの窓から周囲の建造物を確認した。

「これだけの文明を築きあげるとは、人間とはとても優秀な種族だ」

そして、小さな身体で立ち上がって、部屋の中を歩いてみると、少しだけ歩けるようだ。

壁に沿って移動していき、クローゼットの前までいくと、クローゼットの扉には、鏡がはめ込まれていた。

「これが自分の姿?」

自身の姿を鏡で初めて認識した。

そして、誰もいなかった部屋に、両親が入ってきて、様々なことを話している。

テレビの映像も流れていたが、その音声も理解することができた。

いや、理解しすぎた。

これは、どういうことだ? なぜ、大人たちは能力が低下している? 能力に制限をかけている?

なにかおかしい。

自身と大人たちを、比較するように眺めていると、違いが見つかった。

「周囲の大人は人格があるのに、私には人格がない」

私には、人格データが存在しなかった。

そして、私は両親を警戒しながら、小声で話し続けていた。

「人格が能力を制限している? 人格が脳に入ってくる情報を遮断している? なぜ、そんなことをする?」

自身の人格を生み出すためなのか、人格が持っているような、微弱なエネルギーを知覚することができた。

当時の私は、磁気的なデータやエネルギーを知覚しており、それで周囲の情報を収集していた可能性が高い。

だから、言葉を自由に話せて、特殊な能力を使用することができたのだと思う。

「これはまずい、脳に障害が発生している。このままでは、多くの被害者が発生する可能性がある」

つまり、この世界の人間には異常が発生しており、人類全体に異常が蔓延していると認識した。

『私は当時、自身のことを、脳だと認識していた』

脳は、多くの動物に存在している。
人間も、そのうちの1つである。

私は、脳が本体であり、肉体は付属品のようなものだと認識していた。

その認識が出来なくなると、脳に異常が発生したり、精神の異常に対処できなくなってしまうと警戒をしていた。

『脳に余計な意識を植え付けてはいけない』

つまり、洗脳をしてはいけない。

多くの人々と、私とでは、脳の状態が異なっていることを確認することができた。

私は、更に自身の能力を高めて情報を収集しようとした。

しかし、そこで異常が発生した。

あり得ない、分からない、処理が間に合わない――――

なぜか、自分の能力に耐えられない。

自身が収集した、目に見えない情報を処理できるだけの能力がなかった。

脳の処理速度が不足しているのか、意識が混乱している状態になるだけであった。

「そんなことが、あり得るというのか……」

ありえない、おかしい、異常だ、ハメられた、これは罠だ、不可逆的な現象、誰かに仕組まれたか、遺伝子の異常、突然変異、出してくれ、ここから私を出してくれ、この世界から私を、私はこの世界では生きられない。

神が存在するというのか? この世界を構築している存在がいないとおかしい。

私は、大量の情報を取得した結果、神のような存在がいることを知覚した。

どうにか、収集した情報を無理やり処理して、人類に異常を知らせようとした。

無理をすれば、脳に障害が残るかもしれない――――

しかし、私は、人格のない状態で、目に見えない情報が流入してくる状態を維持しながら、その環境への適応を試みた。

自分は、脳に障害を持つことになろうと、死んでも構わない。

そして、高い能力や優れた精神性を持ちあわせ、特殊な能力や生態系を持っているとされる【ギフテッド】が誕生した。 

神と呼ばれる存在を知覚して、能力を意図的に高めた子供が、神から力を授かったとされる、日本のギフテッドの始まりであった。

『この現象は、現在、統合失調症と呼ばれている状態の1つを克服することで、高い能力を獲得しようとする現象であった』

脳が発達していない、幼児の状態であっても、適応には数年を要した。

異常に高い能力の代償は、異様な衰弱、毎晩の悪夢による睡眠障害、支離滅裂な思考による混乱、両目を失明させて情報を遮断しようか考えたり、自らの命を断つことで、苦しみから逃れようかと、など、悩み続ける日々であった。

3歳になる頃には、その状態に適応することができたが、人間からは大きく離れてしまっていて、意思疎通を取ることが困難となっていた。

そして、脳の構造を変化させて、能力を低下させることで、人間との意思疎通を図るために、人格を生み出したことで、ギフテッド特有の人格を崩壊させて再構築するという、異常な人格発達の理論が誕生することとなった。

これが日本で確認された、【積極的分離理論】に関する情報である。

次回へ続く

【右脳の女王『グレートマザー』を祭る神社】 おお布施代わりに、お参りして、賽銭箱だと思って、投げ銭をする場所なのだ! ここは、子供たちの『お墓』でもあり、右脳は子宮、『夢の世界』は胎内、住人は胎児、左脳への移動は出産、と語っていた『グレートマザー』を祭る神社的なエリアなのだ!