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貫け、海神ポセイドン(3LDK)
当作は800字以内に小説の書き出しを凝縮するプラクティスで書かれたものです。
ガキの頃から疑問だったのは、どうしてマンションってのは仰々しい名前を付けるのか、ってことだ。だが今なら分かる。オーナー連中はこういう時代が来るのを見越してたんだ。丸く限られた視界の先、宙を舞う二棟のマンション『グランフェニックス奥山手』『岳本荘』の高度差を見れば、名称強度の差は歴然としている。
「状況を報告せよ!」
窓側席のプチ・ソルシエール
今日のグリーン席争奪戦には無事勝利した。
座席をすこし倒して一息ついたところで、ぞくぞくと席が埋まっていく。あっという間に、車内は家族連れや旅行客の賑やかな談笑と、サラリーマンが駅弁をあけるあの独特なにおいで満たされた。
数駅過ぎたところで、父親とその娘であろう少女が席を探して通路を歩いてきた。だが辺りを見回しても座席は満席で、父親がやっと見つけた一人分の座席に娘を座らせようとしていたと
アンダーグランド・エクスプレス 死の影の底を歩むとも
最初に死んだのはディルハム、次にジョージ、それから新兵のルーディ、不平屋のアーチーは最期まで補給についてこぼしていた。長腕ビルと骸骨エルマーは一緒に上半身を吹き飛ばされた。奴らが知ったら笑うだろう。
ルーキーいじめでさんざん恨まれていたジェス。後ろからの流れ弾で死ぬだろうと誰もが思っていたが、やつは、あの村の事件で抗命罪で銃殺になった。だいのおとなが涙を流して命乞いをしながら、しかし命令に従うこ
ドルネシア・サイクル
丘の向こうには風力発電の風車群が広がる。僕は、はっきりとは異郷にやってきたことを実感した。人工の風は強く吹いている。ハンドベルト端末でスケジュールを確認するとアリエス9の市街地に向かうため自動運転車を探しに向かうため、契約したモータープールに向かうことにした。
巨大軌道コロニー『アリエス』企業連が共同で建造した宇宙コロニーである。住民は企業連関係者が多いと言われているが知ったことではない。僕がな
超神戦妖暦 DAWN BRINGER
我は死神なり、世界の破壊者なり。――『バガヴァッド・ギーター』
令和XX年、日本は神の再来を見た。
神無月の早朝、諏訪湖から突如出現した巨大半人型土偶生命体(後に超越神体壱號と認定)は「建御名方」を僭称。精神感応を用いて「天津神とその裔に占有された豊葦原中国の奪還」を宣言し、同時期に青森県から出現した超越神体弐號「荒吐」、島根県に出現した超越神体参號「八岐大蛇」と接触した。続いて信仰を失い
白紙のnoteを持って
その日、俺は酒場のカウンターで目覚めた。意識の覚醒と共に違和感が湧き上がる。この状況は、おかしい。何故なら俺は酒場に来た憶えは無いしそんな予定も無い。そもそも俺は下戸だ。
「いらっしゃい」
驚いて声の主を探す。カウンター越しに壮年の男性が立っていた。店員、いや店主だろうか?
「あ、あの」
「兄さん、見ない顔だな。まぁこの時期にウチに来るってことは、目的はこれだろう?」
依然困惑する俺をよそに勝
魔人清志郎大いに湯欲む
段々を一つ上る度に、落とした指の痛みが増し、人の領域から一歩外れる。何段上ればそこはお山か。気づいたときはもう遅い。 祖母の歌で聞いた通り、あちらとこちらを区切る境界線は不明確で、ゆえに誰でも踏み越えられる。超えたとわかるのは、こちらを値踏みする者たちの目の数がいずれも二つではないと気づいた時だ。
「あんたの腐れた指なんて何本あっても足りゃしない」
「……責任はとります」
「湿気た鉄砲玉に何が
こちら、百鬼夜行結婚相談所
「でーすーかーらー、結婚相手は携帯食料じゃないんですって」
「なんだよ、ケチ臭いな」
「ケチとかではなくて、結婚した相手を捕食されてしまっては弊社の信用ガタ落ちなんです」
スカッと日本晴れの昼下がり、悠久の時を生き延びた古屋敷の和室では厚手の卓を挟んで二人の男女が喧喧囂囂丁々発止の言い争いの真っ最中。
女は燃え上がる様な紅蓮の髪に、額より艶やかな二本の角を突き出した見た目だけなら見目麗しい美女