蛙鳴戦争(アメイセンソウ)
薄暗く湿った路地を、群青のスケイルスーツに身を包んだ男が洗練された動作で移動していく。水たまりを避け、生い茂る苔や藻の上を飛び石のように無音跳躍。派手に水音を立てようものなら、標的にすぐさま感知されてしまうからだ。
(それにしても、嫌になるね)
周囲の壁や屋根の縁からそれぞれ一定の間隔で滴り落ちる多重水滴音は、故郷の雨音を想起させる。
(こんな日に限って晴れとは。相変わらず、運がない)
いつもの天候であれば水たまりや多少の音など気にせずに済むのに、と独りごちつつ目標地点に到