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ロウマン・ロアー・ナッコゥ

俺はつい先日まで自慢の機動従機で運び屋稼業に勤しんでいた。だってのに、今の俺は運送スケジュールの事よりも、斥力場と機体の制御で頭が一杯になっちまっている。クソ機械共から身を守るためだ。

幸い、相棒の斥力場は金とこだわりを注ぎ込んだだけあって高性能だ。大抵のデブリは蹴散らして進めるし、趣味で宙間ドライブを楽しむために車体下部に擬似道路を生成できるレベルの偏向機能がある。

奴らの豆鉄砲を防ぎつつ、展開した両アームに斥力を偏向発生。邪魔になるコンテナを遺憾ながらパージして身軽になっている相棒を駆り、手近な相手にパンチをブチ込む。荒事になった際の奥の手ってやつだ。だが、デブリを容易く砕く一撃をくれてやっても奴らには傷一つ付いちゃいねぇ。

「運び屋サマ。彼らに無言での攻撃は無意味です。今までに計4回の説明を
行ったと記録しておりますが、5回目の説明が必要ですか」
「要らん!」

人様が必死な時にイラ立つ通信を送って来やがるコイツは、俺が漂着したこの機械天体で出会ったヒューマノイドで、自らをフウと名乗った。彼女が言うには、ここを運行していた人間達はとうの昔に全滅。残された機械共はいつからか暴走してこの星の支配者となっているらしい。

何故ここまでの暴挙を許したのか、俺は当然疑問に思ったさ。そしてその回答がさっきのアレだ。――信じがたいことだが、奴らには"人間が技名を叫んだ攻撃"しか通用しないらしい。

技名?叫ぶ?馬鹿馬鹿しい!だが、奴らのデタラメさは先程見た通りだ。

「やれば良いんだろう畜生がっ!」
ああもう、どうにでもなれ、だ。

『バッ……バリアァ、パァーーンチ!!』

そうして年甲斐もなく赤面して放ったその拳は、機械生命体のボディを易々と砕き吹き飛ばしたのだった。

「……マジかよ」
「有効打を確認。ですが威力が足りませんので、もっとナイスな技名を付けてください」
「はあぁぁ!?」

何なんだ、このメチャクチャな星は。

【続く】


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