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 結局は"人"なんすよ。 /『海賊とよばれた男(下)』感想

こんにちわ、ラマ王です
先日、『海賊とよばれた男(上)』を読んだ感想をnoteにあげました

そしてこの度、下巻を読み終わりました、、、
いやぁね、凄いっすよこの物語は。

明治から大正、昭和と、日本の激動の時代を生きた男・国岡徹造を
追った物語なんでね、そりゃぁもう読んでる身としてもなかなかしんどかったっすよw

この時代の大きな出来事と言えばやっぱり「第二次世界大戦」ね。
日本がアメリカ、ソ連、イギリスにフランスなんかと戦ったこの大戦(おおいくさ)が、国岡徹造の生涯を追ったこの物語にばっちり重なっているってなると、必然的にその人生は壮絶で、波乱万丈なものになるんですよね。

でも、国岡徹造という男がこの荒波の時代を決して難破せずに乗りきったのは、やっぱり国岡徹造自身が豪快で大胆な人物であったからなのかもしれません。

上巻を読み終えた時、僕は国岡徹造という男に完全に惚れていました。
なんというカッコよさ。なんという度胸と勇気。それに柔軟な発想と決断力なんだと。しかし、同時に下巻へ不安を募らせてもいました。この先、時代はめまぐるしく変化していき、かつての「武士道」もだんだんと人々に忘れられていくかもしれない。そして国岡徹造自身も、新たな時代で国岡商店を発展させるために、"人"より"利益"や"影響力"を重要視した経営方針へと転換するかもしれない、と。

ですが、その不安は杞憂でした。
国岡徹造の根本的な部分は何も変わっていなかったのです。

その根幹には、いつも人間尊重があったのです。

一、出光商会の主義の第一は人間尊重であり、第二も人、第三も人である。

出光HP「出光の5つの主義方針

僕自身、「海賊とよばれた男」を読み終えて、国岡商店の発展の一番の要因は人材のすばらしさだと思います。

社員の士気の高さ、働きっぷり、活力があってこそ、国岡商店は発展したのだと思います。その大本には国岡徹造がいて、国岡徹造の理念の「人間尊重」があるのです。

そう、、うん、、やっぱり突き詰めては、人間力が大事なんだなぁと痛感しました。

間違いなく、国岡商店が歩んだのは、国岡徹造を中心とした多くの社員たちが自ら切り開いた道です。何度も高い壁が立ちはだかり、何度も行く手を阻まれ、何度もその息の根を止めんと襲い掛かってくる敵襲に遭遇しました。それでも、国岡商店が生き長らえたのは、そこにいる人たちが一生懸命その難局を打開しようともがいた結果です。神様のあらかじめ決めたシナリオでは、あっけなく国岡商店は潰れていたかもしれません。しかし、国岡商店の面々は、そんなシナリオをも書き換えさせるような活躍を見せました。

徹造が天命を待つ場面もありました。ただ、それもできることはとことんやり、全力で策を講じた末のものでありました。「成功」とは、血のにじむような努力の末に、やっとその片鱗が見えてくるようなものだと思います。なかなか自分で掴み切ることは難しく、限界まで腕を伸ばす、つまりはその手の指の先がしびれるほど伸ばし、伸ばしきった時、神様によって風向きが変えられ、その手中に収められるようなものなんだと思いました(伝わりますかね)。

国岡徹造は多くの人を動かしました。自分の信念や理念、熱い真っすぐな志によって、融資を頼む銀行の重役やアメリカの石油会社、さらにはGHQのメンバーまでも動かしたのです。ただ一人の男の生き様が、彼らを動かしました。

国岡商店の働きで、印象的なものが2つあります。

一つは戦後まもなくGHQから請け負った、海軍燃料タンクの底に残った残油を浚う作業です。

国岡商店は、単なる油を販売する元売会社です。その社員の中には、元軍人で、第二次世界大戦で過酷な戦闘を経験した者もいました。戦前からいた社員にとっては不慣れな肉体労働ですし、元軍人の社員にとっては誇り持って国のために戦った後の自分たちの仕事がタンク底の油を回収する作業なのか、と屈辱を感じるものだったかもしれません。

それでも彼らは立派にこの仕事を果たしたのです。

その働きっぷりは、のちにある銀行の融資を実現させるなど、多くの人に国岡商店の凄さを知らしめるものでした。

もう一つの印象的な働きには徳山の製油所の建設です。

これは国岡商店の社員だけでなく、その他多くの建設会社の社員たちの働きもあって成し遂げられたものです。

元来、この工事を10か月で執り行うのは不可能と言われていました。その道のプロである設計者や技術者たちはどうしても二年はかかると、徹造の「10か月で完成させろ」という要望を受けていた責任者の東雲に対して断言してました。

東雲にそのことを告げられた徹造でしたが、頑なに"10か月での完成"を命令しました。

僕はこの場面を読んで、徹造の真意がわからず、「なんでそんな急かすん?」「とうとう老人特有の乱暴な頑固さが出てきたか?」と、なんだか憤りを感じていました。(のちに明かされた徹造の真意に度肝を抜かれました)

しかし蓋を開けてみると作業員たちの取りつかれたような必死の働きでなんと製油所は10か月で見事完成したのです。

印象的なこの二つの働きに共通しているのが、関わった人たちの士気の高さです。タンク底の油回収にしろ、製油所の建設にしろ、みんなが一丸となって、それは一種の催眠のようなレベルで、狂ったように仕事に励んでいるのです。データを上回る人間の底力が発揮されたのがこの二つの例でした。

社員の士気の高さが功を奏したのはこの二つだけではありません。

それは普段の油販売でもたびたび発揮されていました。

作中、「国岡商店の店員の働きっぷりはすさまじい」というような文章が何度も出てきました。国岡商店の発展の陰には、間違いなく店員たちの他社を圧倒する仕事ぶりがありました。

石油連盟やセブン・シスターズといった巨大な権力に負けじと国岡商店が生存できたのは、間違いなく店員たちの士気の高さ、その仕事ぶりなのです。

今回、『海賊とよばれた男(上・下)』という本を読みましたが、そこで得た気づきは今後の僕にとってとても大事なものになってきそうだと思います。この本はモデルの出光佐三さんの伝記のようでありながら(一部脚色あり)、同時に最高の"ビジネス書"でした。さらに、僕にとっては"人生の教科書"にもなりうる一冊でした。ほんとうに出会えてよかったです。『永遠の0』も読んでみようかな。

他にも読んだ本の感想を書いているのでよければご覧ください。それでは。

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