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はじめてのQUILL【入門編!!】

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新規読者の方に向けて読切の小説作品や、取っ付きやすいエッセイを集めました。著者のおすすめ順になってますので、是非参考にしてください。 陰鬱注意!!⚠️
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#エッセイ

#ウシミツトカゲ__

#ウシミツトカゲ__

大学で久々に顔を合わせた友人が、帰り道に妙なことを言い出した。
『俺さ、シモキタの駅で、見ちゃいけないもの見ちゃった気がするんだよね』
私は怯えを必死に隠しながら、「どうせ見間違いだろ? お前昔から変なこと言ってるから心配だよ」と言った。しかし友人は、食い気味に『お前は見てないからそんなことが言えんだ!』と叫んだ。
「いきなり大きな声出すなよ。そんで、何を見たんだ?」
私は一旦、彼を落ち着かせるた

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「18歳」

「18歳」

はじめにとある時期、刑務作業のようなものをして金を稼いでいたことがあった。死を待つだけの受刑者のように、長時間にわたって単純作業をやっていた。目の前にある窓を大きなカラスが鳴きながら横切っていくと、それだけで僕はドキリとした。ただ、本当に頭を使わないでできる仕事で、日給を受け取れるのは有難かった。常に気を張りながら仕事をすることは、非常に疲れる。だから、この仕事は楽ではあったが、絶対にオンリーワン

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箱根一人旅行記

箱根一人旅行記

【はじめに】

今から一か月前、訳あってひとり旅というものに出掛けることになった。理由はタイトルにもある通り、原稿合宿をしなければならない程、締め切りに追われていたからだ。しかし、この旅行というものが中々に壮絶で、波乱万丈な三日間だったのだ。箱根という未開の地で、俺が経験したことをなるだけ脚色なしでここに残しておきたい。ただまぁ、期待はできないだろう。きっと彩りに満ち満ちた旅行記を俺は書いてしまう

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銃が呼んでいる

銃が呼んでいる

今日もまた俺は、大気圏から地上に向かって降下している。飛行機から飛び降りると、程なくして背中のパラシュートが開いた。戦場に降り立つ前のこの景色が、俺はたまらなく好きだ。共にこのフィールドを制覇しようと志す戦友たちは、今どんな表情を浮かべているのだろう。この空中からの視点では、それを窺うことはできない。地上が段々と近付いてきた。ここで俺は栄えている集落や、大きな湖の周りや、青々とした茂みなど沢山の選

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消えるのが怖いのは

消えるのが怖いのは

こんなことになるなら、一人で部屋にいる方が良かった。俺は四角い箱の中で、酷く後悔していた。

孤独というものは、群衆の中にいるから認識するもので、何を求めることもせずに自室から出ない奴は、そもそも孤独というものを知らずに済む。俺もそれで良いはずだった。

それなのに、どうしてこんな場所に来てしまったのだろう。後悔先に立たず、溜め息は雑音に掻き消された。

インカレサークルの新歓に、何かを求めてやっ

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春が終わる

春が終わる

はじめに日本は四季があって素晴らしいとはよく言われるが、近年は地球温暖化の影響もあって、日本の気候も〝異常〟なんていかにもネガティブな意味合いの言葉で表現され始めている。今年の春だって、一体いつから始まって、いつ終わりなのか、正確に把握している人間はいるのだろうか。俺はなんとなく、5月に入ったらもう〝初夏〟なんて言葉を使ってもいいと思っているのだが。しかしまぁ、日本には四季に加えて〝梅雨〟という割

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夏の総復習

夏の総復習

■恋なんて愚かな気の迷いで、夏のせいにすることでしかこの胸の痛みを言い訳できなくて、けれども実は自分の気持ちに嘘なんてつきたくなくて、俺はただお前が欲しかっただけなのに、あの衝撃的な告白のせいで裏切られた気持ちになったんだ

前略 お元気ですか。
俺はコロナウイルスにかかってしまって、最低な夏休みを過ごしていました。何もすることが無いから、家ではずっと昔のことに思いを馳せています。俺はふと、君と過

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冬の棘

冬の棘

むかしむかしある所に、ひとりの少年が産まれたらしい。その少年は自分が産み出された側にも関わらず、それを忘れて、自分が産み出す側だと宿命のように感じていた。

少年は自分が少年だと呼ばれなくなった頃、周囲が色めき始めたのに気付く。浮かれた男女を見て、しょうもなくて下品な奴らだと見下し始める。しかし、彼はまだ知らなかった。自分が一番下劣で、将来に何の望みも持てない人間であることを。

少年がまだ幼い頃

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セルフ純喫茶セット【エッセイ】

セルフ純喫茶セット【エッセイ】

前回の更新から、だいぶ時間を空けてしまった。俺は悩んでいた。創作が足枷のように感じてしまい、自分自身が最も好きでいれる文章を書くという信念を見失いそうになって、小説連載を中止したのだった。それからも、連載が終わっていないことや、それ以外に実生活で迫ってくる様々な期限に心は粟立ち、終電で帰る我が家はいつも消灯されていた。電気は消えていてもすぐに付けられるが、自分の厭世観や孤独感を明るく照らすような光

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