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全部フィクションに決まってるじゃないですか

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言葉の書き溜めを繋げたものたち。何かのプロット
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『そのことをなにもしらない』

『そのことをなにもしらない』

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生きる意味って考えたことある?
私はないんだけど、いや、考えたことはあるけど。別に答えを探してたわけじゃないから。

生きる意味。何のために生まれて何をして生きるのかってやつ。ある?考えたこと。
私はなんかね、生きることに無理やり目標設定したり理由を探すことが偉いことじゃないなって最近思ったんよ。逆に「あーこれで悔いはないわ〜」って、死ぬ瞬間に思えることを見つける方が大切な気がする。

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『嘘だよ』っていう嘘、もう吐きたくないな。

『嘘だよ』っていう嘘、もう吐きたくないな。

「そうだね」って答えが返ってくるように言葉を探した。ねー、君の言ういつかっていつなの、なんて ねえ、今更聞けないんだよ。わたしの、ほんとはね、が遠くに行ってしまって、もう悲しみとはおさらばだ、なんて なんてね、それを強さと勘違いしたり、してね。見て 泣きながら嘘をつくような、強がりなひとだよ。大丈夫だなんてこれっぽっちも思えないのに、君が困った顔をするから、わたしは君に 大丈夫だよ って、嘘をつ

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羽化

羽化

ねえ、逃げて。もうすぐ朝が来る。朝焼けの落とす影を伝って歩くの。遠く、遠く、太陽から逃げて。許せないことを許せないままでいて良かった、って 君には思ってほしい。そのままの君でも愛されてもいいんだって、僕が証明してあげる。そんな 慕情みたいな気持ちを抱くことが恋だというのなら、君に向けている気持ちは間違いなく 愛だ。

どうしようもなく、幸せでいてほしい。
さよなら、黎明。
昨日の僕に手向けた花。

祈い

近頃は見たい夢が無いので眠れない。このまま朝を待つ方が楽だと思った。考えたいことよりも胸のざわめきの方がうるさくて、きっと夜が静かすぎるせいだなんて考えてた。やめたタバコに手を伸ばす瞬間が、一番、孤独で、きみはそれを知らないまま、このまましあわせに生きていけると思っている。多分、そうだと思うよ。だって、この言葉を聞くときっと君は死にたくなると思う。どうか気付きませんように。でも、ずっと私がそうした

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ずっと夏でいい

ずっと夏でいい

ずっと、なんて願っているせいで、どこにも行けなくなってしまった。思い出ばかりが綺麗だってことを忘れたくて、夏の暑い日にだけ耳を澄ます。蝉の鳴く声が脳を覆う。むせ返るアスファルトの熱で息が苦しい。揺れる景色が夢の中みたいで。気分は鬱屈としているのに、世界は燦々と輝いていて、眩しくて、お前みたいになりたかったな、って呟くと、また蝉が鳴いている。でも、この瞬間だけ、透明になれる気がするんです。風が身体の

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だから僕は君に言った

『 ずっと、自分ひとりでどうにかしなきゃいけないと思ってきた。
誰かと居てもその考えは変わらなくて、頼れなくて、苦しいって言えなくて。
いるのに、側に。私を好きだと言ってくれる人が。なのに、ずっと孤独で。
そんな事も隠して笑ってたら、みんな私のことを幸せそうだって言う。みんな、私なら大丈夫だって、言う。
そう見える自分を作り上げたのは私自身なのに、その言葉を聞くと、私はそんなにキラキラしてる人間じ

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わたし、本当は君になんて言ってほしいんだろうね。

ずっと秘めておこうと決めていた胸の内を明かしてしまった。

『でも、怖い。きみに嫌われるのが。また描けなくなることが。きみを嫌いになるかも知れないことも。
本当は……頑張ることも、人を好きでいることも諦めたくない。君に出会ってそう思うようになった。変われるかもしれないって。でもまた、どっちか取るとどっちが手放さなきゃいけなくなるんじゃないか、って…。
……もう、さ そう考えただけで、さ。
………わ

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黎明

黎明

君が大丈夫だと言うから、あかりを全て消して独りだった。もう何度もこうやって朝を待っている。

同じ朝日を見ようね、と言う眠れないフリが上手なきみ、朝を待つわたし。明け方射す光は、落ちた花弁に温度を与えるでしょうか。冷めきってしまう前に、

もう、何度もこうやって朝を待っている。

夜明けのオレンジで目を覚ました。最低な空の色。君は知らないままでいいよ。

2020.8.31