SUZUKI

弟が自死したことをきっかけに「書く」ことを決めました。 言語化して様々な苦しみを昇華さ…

SUZUKI

弟が自死したことをきっかけに「書く」ことを決めました。 言語化して様々な苦しみを昇華させたい。 苦しいことだけでなく、好きなことも書きます。 自死遺族/重度知的障害児の親/会社員→教員(退職済)/韓国ドラマ/BTS/向田邦子/須賀敦子/山月記 等

マガジン

  • てんかんと私

    てんかんを発症した私の体験記です。

  • 省略した話(自死した弟のこと)

    マガジン「自死した弟のこと」で省略した話を書きます。 読んで頂けたら嬉しいです。

  • 自死した弟のこと

    2022年秋に32歳の若さで自ら彼岸に行った弟のことを書きます。弟の子ども時代からのこと、自死した場所の片づけやローンの返済等の処理、自死遺族としての心境、自死が家族に与えた影響、まだ悩んでいること等について。

記事一覧

てんかんと私⑤(終)

 前回、自分の父親を「ミソジニー野郎」と総括したことが、自分の心堪えたようで、なかなか文章を書く気になれなかった。30年以上会ってはいないし、これからも会うことは…

SUZUKI
3週間前
7

てんかんと私④

「靴が、靴が」  父に無理矢理乗せられた車の中で幼い私は必死に訴えている。 「靴なんて後で買ってやる」  靴なんて本当はどうだっていい。ただ、車から降りて母のとこ…

SUZUKI
1か月前
8

てんかんと私③

 気を失うということが何度か続き、母が私を地元の子ども病院に連れて行ったらしい。ここで「らしい」と書いたのは、病院の記憶が全く無いためである。母に突然平手打ちさ…

SUZUKI
2か月前
9

てんかんと私②

 小1の私は台所で何となく座っていた。  少し離れたところで母は友人と電話している。その頃は携帯電話なんて無かったので、固定電話だ。コードを指でくるくる回しなが…

SUZUKI
2か月前
13

てんかんと私①

 私は小学校1年生の頃、両親の離婚によるストレスが原因でてんかんを発症したことがある。自分は何故プールの授業に参加出来ないのか、何の薬を飲んでいるのか分からない…

SUZUKI
2か月前
15

大好きな漫画家の訃報

 子どもの頃より「闘う女子」の漫画やアニメが大好きだった。それは『美少女戦士セーラームーン』や『怪盗セイント・テール』、『魔法騎士レイアース』といった1990年代を…

SUZUKI
7か月前
7

お正月の味、雪苺娘

 お正月になると必ず食べるものがある。それは、山崎製パンの「雪苺娘」である。子どもの頃、お年玉を貰うと私、妹、弟の3人は近くのコンビニへ行き、揃ってこれを買って…

SUZUKI
7か月前
12

「書くこと」と「読むこと」に救われた1年でした。
私の文を読んでくださった方、ありがとうございました。
皆様が幸せでありますように。

SUZUKI
8か月前
7

羨望と後悔のミックスジュース

 『ぼくのミックスジュース』という童謡を聴いたことがおありだろうか。良いことも悪いこともミキサーにぶち込んで、飲み干せばそこに希望が見えてくるという歌である。作…

SUZUKI
9か月前
21

公園のベンチで嬉し涙が止まらなくなった

 何度か書いているが、私の息子には重度知的障害がある。就学前の相談では支援学校の判定が出ず、地域の小学校の支援級に在籍している。  我が家から歩いて3分のところ…

SUZUKI
10か月前
16

一周忌と寄付

 11月になってしまった。去年の11月に弟が亡くなったので、今月は一周忌である。この1年、ずいぶんと苦しい思いをした。  ふとした時に、「どうして助けられなかったの…

SUZUKI
10か月前
19

アライグマ、お前だったのか……

 つい最近のことである。  重度知的障害児である息子が、そりゃあもう派手に癇癪を起こしていた。18時過ぎまで公園で遊んでいた彼は、どうやらお腹が空いたようで、怒り…

SUZUKI
10か月前
11

道端で死んだフリをした小5の自分

 これはあまり思い出したくない記憶なので、書くかどうか迷いました。しかし、ここ最近、朝の小学校で泣いている子どもを何人も見かけることが増えたため、学校が辛い子に…

SUZUKI
11か月前
10

「あ」

 母からの教えで特に印象に残っているものが三つある。一つ、お世話になった相手に対しては当日、後日ともに必ずお礼を述べること。二つ、仕事で誰かが話している時には、…

SUZUKI
11か月前
16

そう遠くない障害の世界

 少し前の出来事だが、障害児の親として60人程度の前で自分の体験を語る機会があった。聞き手は普段、障害児者の支援をしている方々だ。  まずは話し手である自分と聞き…

SUZUKI
1年前
20

自由の回復(自死報道によせて)

 7月12日の夜、つけっぱなしになっていたテレビから有名人が自死したというニュースが流れた。正確に言うと、その番組では「自殺」という言葉を使っていたのだが、自死で…

SUZUKI
1年前
11

てんかんと私⑤(終)

 前回、自分の父親を「ミソジニー野郎」と総括したことが、自分の心堪えたようで、なかなか文章を書く気になれなかった。30年以上会ってはいないし、これからも会うことは無いとはいえ、やはり自分の親がクソ人間であることを認めるのは気の重いことであった。
 以前読んだ「毒親」に関する本でこのような記述があった。毒親に育てられた方が、たまたま親に心に響く言葉を掛けられ、それを周囲に吹聴して歩くのが楽しかった、

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てんかんと私④

「靴が、靴が」
 父に無理矢理乗せられた車の中で幼い私は必死に訴えている。
「靴なんて後で買ってやる」
 靴なんて本当はどうだっていい。ただ、車から降りて母のところへ行きたいだけだ。

 朝、気がつくと母が泣いている。両手で顔を覆い、
「地獄だ」
 そう言いながら泣いている。
 母に何が起きたのか分からないまま、私と妹、そして弟の3人は父によって車に乗せられてしまった。妹も小さいけれど、弟はまだ赤

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てんかんと私③

 気を失うということが何度か続き、母が私を地元の子ども病院に連れて行ったらしい。ここで「らしい」と書いたのは、病院の記憶が全く無いためである。母に突然平手打ちされたことやプールの授業に参加出来なかったことは鮮明に覚えているものの、何故か病院の記憶が全くない。病院の……正確には「診察」の記憶がない。
 病院を出たところに人力で移動する昔ながらの石焼き芋屋さんがいて、そこで焼き芋を買ってもらえて嬉しか

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てんかんと私②

 小1の私は台所で何となく座っていた。

 少し離れたところで母は友人と電話している。その頃は携帯電話なんて無かったので、固定電話だ。コードを指でくるくる回しながら母は何かを話している。その表情は固い。

 バチン
 急に母の平手打ちが飛んできた。
 何もしていないのに。ただ座っていただけなのに。

 そんなことが何度か続き、母に嫌われているんだと思って悲しくなった。でも、母が私を嫌う理由も何とな

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てんかんと私①

 私は小学校1年生の頃、両親の離婚によるストレスが原因でてんかんを発症したことがある。自分は何故プールの授業に参加出来ないのか、何の薬を飲んでいるのか分からないまま小学校時代を過ごし、自分がてんかんを発症していたと母から聞かされたのは大学生になってからだった。

「私、てんかん発作があるんです」

 私にこう言ったのは学生寮の同じ部屋で生活することになったRちゃんだ。

 Rちゃんは中学時代にてん

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大好きな漫画家の訃報

 子どもの頃より「闘う女子」の漫画やアニメが大好きだった。それは『美少女戦士セーラームーン』や『怪盗セイント・テール』、『魔法騎士レイアース』といった1990年代を代表する女子向けファンタジー作品に始まり、現在は社会で闘う女子(女性)が出てくる作品を好んで読んでいる。例えば、『3月のライオン』のあかりやひなた、『ミステリと言う勿れ』の風呂光が大好きなキャラクターだ。そして、『セクシー田中さん』の朱

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お正月の味、雪苺娘

 お正月になると必ず食べるものがある。それは、山崎製パンの「雪苺娘」である。子どもの頃、お年玉を貰うと私、妹、弟の3人は近くのコンビニへ行き、揃ってこれを買っていた。こたつに入って皆で食べる。母はお正月も仕事だったから、子どもだけの秘密のお楽しみだった。
 一気に食べる弟、普通の速度で食べる妹、チビチビと食べる私。3人それぞれのスピードで食べる。私は好きなものは味わってゆっくり食べたいので、よく家

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「書くこと」と「読むこと」に救われた1年でした。
私の文を読んでくださった方、ありがとうございました。
皆様が幸せでありますように。

羨望と後悔のミックスジュース

羨望と後悔のミックスジュース

 『ぼくのミックスジュース』という童謡を聴いたことがおありだろうか。良いことも悪いこともミキサーにぶち込んで、飲み干せばそこに希望が見えてくるという歌である。作詞は『きんぎょが にげた』という絵本の作者・五味太郎さんで、この歌は『きんぎょが にげた』と同様、とことん子どもの味方でいるという優しさに包まれている。

 先日、精神疾患を患いながら社会復帰を果たしたAさんという方とお話する機会があった。

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公園のベンチで嬉し涙が止まらなくなった

公園のベンチで嬉し涙が止まらなくなった

 何度か書いているが、私の息子には重度知的障害がある。就学前の相談では支援学校の判定が出ず、地域の小学校の支援級に在籍している。
 我が家から歩いて3分のところに大きな公園がある。遊具はブランコと滑り台のみだが、広場が大きいここで毎日たくさんの子どもがサッカーや野球、鬼ごっこをしたり、その間を縫うように自転車に乗っている。この公園で遊んでいるのは最寄りの小学校・中学校に通う子どもがほとんどだ。

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一周忌と寄付

 11月になってしまった。去年の11月に弟が亡くなったので、今月は一周忌である。この1年、ずいぶんと苦しい思いをした。
 ふとした時に、「どうして助けられなかったのか」と自分を責める言葉と「やれることはやった」と自分を守る言葉が対立し、混乱してしまう。ああ、苦しいなぁ。

 命日には弟の遺したお金を寄付しようと決めていた。まだ少し早いが、居ても立っても居られなくなり、パレスチナの女性支援、地元の児

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アライグマ、お前だったのか……

アライグマ、お前だったのか……

 つい最近のことである。
 重度知的障害児である息子が、そりゃあもう派手に癇癪を起こしていた。18時過ぎまで公園で遊んでいた彼は、どうやらお腹が空いたようで、怒りながら「セブンイレブン 行く!!!」と騒いでいる。15時から3時間も公園遊びに付き合い、何度も「帰るよ」と声をかけた私からしたら、ふ・ざ・け・ん・な である。意地でもセブンイレブンには行くもんか。大至急ご飯を作りながら、何度も大きな声を出

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道端で死んだフリをした小5の自分

道端で死んだフリをした小5の自分

 これはあまり思い出したくない記憶なので、書くかどうか迷いました。しかし、ここ最近、朝の小学校で泣いている子どもを何人も見かけることが増えたため、学校が辛い子に向けて書きます。
 学校が嫌いでも大丈夫!大人になれる!自分で稼いで、焼肉を食べられる!BTSのDVDだって買える!希望はあるよ。

 小学校5年生の時の担任は最悪な人物だった。何が最悪かというと、丸だしの「依怙贔屓(えこひいき)」である。

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「あ」

「あ」

 母からの教えで特に印象に残っているものが三つある。一つ、お世話になった相手に対しては当日、後日ともに必ずお礼を述べること。二つ、仕事で誰かが話している時には、「あいうえお」でも構わないから、メモを取ること。そして三つ、誰であろうとお金は貸さないこと。貸すのであれば、あげたと思うこと。
 一つ目と二つ目の教えは社会に出るとその効果を発揮し、仕事上で生じる面倒な人間関係のいざこざを和らげてくれること

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そう遠くない障害の世界

そう遠くない障害の世界

 少し前の出来事だが、障害児の親として60人程度の前で自分の体験を語る機会があった。聞き手は普段、障害児者の支援をしている方々だ。
 まずは話し手である自分と聞き手の距離を縮めようとし、開口一番「こんにちは!美人がやってきました」と元気に挨拶をした。こういうのは、ご年配の方には特に受けがいい。
 前半は重度知的障害のある息子の成育歴を大変だったことを交えながら話し、後半は支援者に知って欲しいことを

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自由の回復(自死報道によせて)

 7月12日の夜、つけっぱなしになっていたテレビから有名人が自死したというニュースが流れた。正確に言うと、その番組では「自殺」という言葉を使っていたのだが、自死で弟を失った遺族の一人として、私は「自死」という言葉を選びたい。自殺という単語は、弟と同様、そうせざるを得なかった人がまるで罪を犯したように感じられて、使おうとは思わない。追い込まれて亡くなった方々を死後も追い込みたくはないのだ。
 自死の

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