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道端で死んだフリをした小5の自分

 これはあまり思い出したくない記憶なので、書くかどうか迷いました。しかし、ここ最近、朝の小学校で泣いている子どもを何人も見かけることが増えたため、学校が辛い子に向けて書きます。
 学校が嫌いでも大丈夫!大人になれる!自分で稼いで、焼肉を食べられる!BTSのDVDだって買える!希望はあるよ。


 小学校5年生の時の担任は最悪な人物だった。何が最悪かというと、丸だしの「依怙贔屓(えこひいき)」である。担任は、勉強が出来る子、運動が出来る子、自分を慕う明るい子の順に好きらしかった。勉強は普通、運動は出来ない、暗くてオドオドしている私は明らかに嫌われていた。私にてんかん発作があったことも嫌われていた原因の一つかもしれない。色々と面倒くさかったんだろうな。てんかん発作は小学校1年生以来ずっと出ていなかったのだけど。

 当時の私は、知らない人に対してはオドオドせずに接することが出来るのに、学校となると上手くいかなかった。学校の子と近所で遊ぶことは出来ても、学校で同じ子と遊ぶことは出来ない。私にとってだけでなく、多くの子にとって学校は閉鎖的で苦しい空間で、ギスギスしたものに包まれていたのかもしれない。

 担任は、クラスで一番勉強の出来る子に対して話す時と私に対して話す時とではトーンも選ぶ言葉もまるで異なる。一度、図工で作った私の作品に対して、「汚いから持って帰って」と言ってきたことがある。悲しくて悔しかったけれど、父親と離婚してからずっと女手一つで3人の子どもを育てている母親には何も言えなかった。

 その担任が嫌で嫌で、平日の朝になるとお腹が痛くなる。母が学校へ休みの連絡をすると、痛みが引いてゆく。そんな毎日を繰り返し、私は一刻も早く自分の手で人生を終わらせたい欲求に何度も駆られた。
 しかし、自ら人生の幕を閉じる上で、ある一つの問題が生じた。それは、『焼肉』である。私は昔から焼肉が大好きなのだ。死んでしまったら、焼肉が食べられなくなるじゃないか……。ふざけていると思われるかもしれないが、当時の私は大真面目にそう考えていたのだ。悩んだ結果、焼肉を飽きるまで食べたら、その時は人生を終わらせようという結論に至った。なお、今現在でも焼肉に飽きていないので、私はまだまだ生きる。飽きたとしても、大人になった今は焼肉以外の楽しみがあるので、やはり生きることを選ぶ。
 そうして、最悪の選択をすることは免れたけれど、学校が嫌で嫌で堪らない。母も毎日は休ませてくれず、怒鳴られながらランドセルと共に締め出されたことが何度もあった。そういう日は仕方ないので多少遅刻して登校する。すると、担任の機嫌がますます悪くなり、余計私に辛く当たるのだった。

 やはりその日も母に締め出された朝だった。
 どうしても、どうしても学校に行きたくない。
 だって、担任は私の下手くそなポスターを見せしめに1日中、黒板の上部に貼ったおいた。その翌日だったから。
 担任は、私が環境問題のポスターの缶ジュースを全部緑に塗ったのが気に入らなかったらしい。面倒になって全部の缶ジュースを緑で塗った私にも非はあるが、クラスで糾弾した後、終日貼っておくこともなかったんじゃないか。缶ジュース以外はきちんと塗ったんだし。

 登校途中、団地内の通路。ここならば車は通らない。
「よし」
 と思って、倒れ込み死んだフリをした。誰かが救急車でも呼んでくれれば、学校に行かずに済む。(※変質者が多いので、決して真似しないでください
 案の定、数分後に私を見つけてくれた中年女性が駆け付け、自宅に送り届けてくれた。その日は学校を休むことが許されたのだ!ヤッタネ!

 その後、元々体調を崩しがちだった担任は長期で休むことになり、代替として優しい男の先生が来てくれた。この代替の先生は戦争を経験された方で、時折語ってくださった戦争体験が、私が平和というものを考える第一歩となっている。

 代替の先生と穏やかに過ごす中、担任が中学校へ異動になると年度末に発表された。もう顔を見ずに済む!離任式の行われる体育館で思い切り叫びたい程嬉しかった。
 ちなみに、この担任は、異動先の中学校で大いに嫌われ、なんと授業をボイコットされたそうだ。何故それを知っているかというと、私の高校の同級生が、この担任が異動した先の中学校出身だったためである。優等生タイプである私の同級生でさえもボイコットに参加し、参加しなかったのはたった3人だけだったそうな……。当時、この中学校は大変荒れていたのだが、クラスのほぼ全員が団結してボイコットするとは……。根性のある中学生たちである。

 もし、今、学校へ行くことが辛いと感じている子がいたら、事情も知らない私が安易に「行かなくてもいいんだよ」とか「行った方がいいよ」と書くことは出来ない。ただ、死んだフリをするくらい学校が嫌いで、追い詰められていた私も、小学校6年生からは少しだけ学校が楽しくなったことは伝えておきたい。
 大人になっても苦しいことはあるけれど、今、生きていることが楽しい。焼肉きんぐのプレミアムコースを注文できる。寄席に行ける。大きい画面でBTSのDVDを観ることが出来る。旅行だってできる。本だって何冊も買える。
 
 小さな、小さな希望を持っていて欲しい。好きな食べ物だっていいし、アイドルだっていい。もちろん、好きなものがなくたって構わない。
 人間、生きているとあらぬ方向から救いの手が差し伸べられることがある。かつて死んだフリをするくらい学校が嫌いだったおばちゃんが保証する。















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