OKOPEOPLE - お香とわたしの物語

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オープン・フェア・スロー──お香と社会の3つの「隙間」

こんにちは、お香の交差点OKOCROSSINGを運営している麻布 香雅堂代表の山田です。

お香をはじめとする和のかおりの専門店・香雅堂を手伝い始めておよそ10年が経ちました。思うところがあって初めてこのような文章を書くに至っています。みなさまにあまり馴染みのないと思われるお香業界の今をさまざまな観点で紹介しながら、お香の未来について考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

香木・香

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“香木としての白檀の香り”を気軽に楽しむには?──天の海シリーズ「星の林」

こんにちは、京都より200年の系譜をもつ香木・香道具店 「麻布 香雅堂」 代表の山田悠介と申します。「オープン・フェア・スロー」をキーワードにお香の世界に関わっています。

先日店頭でお客様から「白檀のお線香の香りと、日用品にある“白檀の香り”は印象が異なりますね」という言葉をいただきました。ときどき聞いてくださる方がいるので、今日はこの言葉を踏まえて香雅堂のお線香を紹介したいと思います。

いろ

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「Scents of Heaven」 ~ 今ここの記

「三渓園、行ってみたいですね」
「それならぜひ「観蓮会」に。早朝のハスの開花は本当に見事、こんなに香り高い花だったのかと驚きますよ」

──真夏の日本庭園を思い浮かべながら、ワインバーのカウンターで今年最後のボトルを空ける。店に年末の挨拶をと半年ぶりに自粛を押してやって来たのだ。せめてもう一本頼んで店主を喜ばせたいところだが、22時の閉店時間が切ない。

三渓園は以前に一度行ったことがある。本牧に

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「金木犀」 ~ 思い出でもないくせに

嗅覚にも得手不得手があるのだろう。
私はもしかすると“花”系の香りを感じにくいのかもしれない。

去年今頃のしっとりとした夕方、買い物帰りの住宅街で何ともいえない華やかな香りが鼻をくすぐった。突然景色が変わってしまうような芳香の先には緑の庭木と枇杷色の細かい花の集まり。後からキンモクセイの香りと知ったときには驚くよりほとんど自分の“馬鹿鼻”に呆れてしまった。

その名を知らなかったわけでは無い。秋

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小麦粉よ!

ウェブマガジン「アパートメント」の管理人をはじめ、ユニークな活動を展開する浅井真理子さんにご寄稿いただきました。打ち合わせで「食と香りについて書いていただけないか」と相談したところ、ベーグル作りの話に。社会の変化をきっかけに、新しい香りが漂いはじめた浅井さんの暮らしに、触れてみてください。

最近、ベーグルを作るようになった。

もともと料理は好きだし、お菓子作りも手慣れたものだけれど、パン作りに

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なんたって源氏物語②

前回の記事はコチラから:なんたって源氏物語①

「源氏物語を通読したことがありますか?」という問いに、おずおずと手を挙げたのは、なんとわずかお二人だけ。しかもそのうちのおひとりは「『あさきゆめみし』なんですけど、、、、」。
えええ~意外!!! ふうぅ、助かった、、、という心からの安堵を顔には出さず、穏やかに言葉を続ける。「大丈夫です、全く問題ありません。『源氏物語』を全部読んでいなくても、源氏香は

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ゆびさきとタブレットは苺の匂い、味はどこまで味なのか

子どもがわたしの頰に手をおくと、ふわっとただよう苺の匂い。手づかみ食べの季節は過ぎて、フォークで食べているはずなのに、しっかり香るこれはたしかに甘酸っぱい、間違えようのない苺のもの。

苺の匂いはとても強いんだなあと思って、それから、匂いからこんなにはっきり想起される苺とはつまり、この匂いなんではないか、と思った。

ためしに鼻をつまんで苺を食べてみる。甘みと酸味のあるジューシーな何かだとは感じる

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今日はいい日になりますよ。
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「無為」 ~ つらつら匂い考 ~

香りは苦手、匂いが好き。

香道のお稽古を十年以上続けておきながら、敢えてそう言ってしまう。

香りは表現、匂いはありよう。
匂いは内から、香りは外へ。
香りは手招きをし、匂いは後ろ髪を引く

「香り」が人や物の“佇まい”に重なったその時、私の中はでえも言われぬ「匂い」に昇華する。

そんな言葉遊びはさておき、隠しおおせぬ本質が滲み出るのは”におい”の領域ではないだろうか。
かぐわしい「匂い」はも

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白檀の香りと記憶の明滅

それは、パソコンの前で自動書記のようにつづられた物語だった(注:オカルトな話は出てきません)。編集者さんとの打ち合わせではエッセイを書くはずだったのに、いざ画面の前に座ってみると短編小説が生まれていた。

「OKOPEOPLE」で公開された「ながれながれて」のことだ。香りがきっかけとなった面白い体験だったので、小説のあとがき的に書いておこうと思う。

香りにいざなわれて物語の世界へ

お香の定期便

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大日如来✨
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境をつくる香り

子供の頃から、一時期を除いて和室で寝ている。毎朝、布団の中でひとつの暗闇と化している私を、仏壇から漂う1本の線香の香りが包み込む。

その度に、当たり前の日常がスタートする事。今日も東の空から太陽が昇る事。目が覚めた事。生きている事を自覚する。清澄な朝の空気に馴染む白檀の香りは、私にとって朝と夜の境であり、また大袈裟に言えば生と死の境である。

最近になって、お供物としてだけではなく、読書をする時

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「ラストダンス」 ~ 師走の街に ~

12月はダンスの季節だ。
父が生前ソシアルダンスを長く続けていたことから、この時期あちこちで開かれるダンスパーティの情報が何となく目に留まる。

そんな折、わがレモングラスの紳士、Yさんを街でお見かけした。

白髪が似合う長身は二年前と変わらない。
奥様と思しき老婦人の脚をいたわりながら、手を取って古いマンションに入って行かれるお二人の表情は、寒さのせいか少し硬く、私は何となく意外な思いで見送った

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