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過疎地域の教育の未来と塾事情

2017年春に数学塾を開業しました。塾長のオカサカ(@okasakaR)です。
場所は兵庫県の端の端、ご多分にもれず過疎と少子化に嘆く地域、新温泉町。

(ちなみに「新温泉町」は「人口減少」で韻を踏めます。)

そんな田舎町で開塾した私ですが、
田舎の教育事情について思うことがあるのでつらつらと書いていきます。
特に田舎の教育事情を考えている方には考える種になるかなと。

目次
・商売エリアと筆者プロフィール
・新規開業して勝算はあるのか
・地域内の学生数と塾生数の見込み
・これからの過疎地域での教育で求められること


商売エリアと筆者プロフィール

商売エリアプロフィール
場所:兵庫県美方郡新温泉町
面積:241平方km(町の中心から辺地エリアまで車で30分。広い!)
人口:約1万4000人
一学年の出生数:約100人(参考:H21年度は118人、H28年度は82人)
小学校:町内6校(うち95%が町内中学に進学)
中学校:町内2校(うち80%が町内高校に進学)
高校:公立校1校(ただし、公共交通機関で通える範囲の学校が8校くらい)(うち30%が大学進学希望者)
大学:なし

商圏は単純に町内で、塾生は町内に在学在住の学生となります。
単純に1学年100人で計算すると、中学生95人、高校生76人。
このうち塾に行く学生は何人でしょう。。。

筆者プロフィール
年齢:29歳
出身:新温泉町
学歴:公立浜坂高校→国立電気通信大学
職業:塾経営のほか、デザイン、企画業で地域活動をしている
塾プロフィール
対象:(集団)小5,6、中1,2,3、高1,2 +個別指導3枠
科目:数学
料金:小=4,000円、中1,2=8,000円、中3=12,000円、高1,2=12,000円、個別指導=要相談
場所:町内の住宅街、一軒家で住居と一体型
名称:学習塾MoCT
備考:数学参考書等多数&デザインなどの書籍多数の自習室あり、オフライン版スクラッチがインストールされたPCを無料開放、今後はプログラミング教室等も行う予定




新規開業して勝算はあるのか

過疎地域での新規開塾は結論から言えば、バカを自認する人じゃない限りやっちゃダメです。
でも、僕としては勝算はあります。
ただし、かなりハードルの低い勝算。

通常、塾経営だと月商50万円程度は必要なようなのですが、僕は25万円で及第点としています。
家賃+水道光熱通信費の10万程度は塾とプライベートの按分で済ませられますし、塾経営はあまり経費がかからないので25万でも一応黒字です。
あと、塾以外の事業で10万程度稼げば良いかなと思っているからです。

月商25万円は、だいたい30人の生徒がいれば達成できます。
小5〜高2の7学年なので、各学年4,5人でOK

あと、競合が問題かと思うのですが、新温泉町では中学数学までの塾はたくさんあるのですが、高校数学は山陰地域大手塾が1校と個別指導私塾のみ。
子供の数が急激に減っている地域なので、新規参入する塾はまぁないだろうと思えるのも安心材料です。
むしろ、年齢高めの方が運営してる塾が多いので今後は撤退、閉塾が増えてくることが予想されます。

そんなこんなで僕の塾は長くて25年程度続けれるかと思います。
しかし25年後の出生数はおそらく1学年30人を下回ると思うので尻すぼみにもほどがありますね。。笑
そのうえ、地元高校がいつ閉校するかもわかりません。

25年後の僕の年齢は54歳。子育ての最中なので仕事はやめられません。
つまり、40代で別事業の収益をしっかり立てなくてはいけません。
まぁなんとかなるでしょう(なんとかする)

過疎地域での塾経営は、今後塾一本では厳しい状況となりますから、僕のように別事業で柱を持つ人が塾を行うか、地域の塾は壊滅するかの2択じゃないかと思います。
でもアプリやウェブサービスがガンガン出ているので、過疎地域だから教育格差が広がるかと言えば、むしろオンライン学習環境の台頭によって格差は縮められると僕は考えています。この辺は最後の章で述べます。


地域内の学生数と塾生数の見込み

前章でさっくりと25年後には1学年30人と言いました。
もちろん徐々に下降していく訳ですが、単純に減った人口がそのままターゲットとなりうるかと言うとそうでもないです。

地域内の学生数というのは、町内学校に在学し、町内に在住している子のこと。基本この子達しか塾の生徒にはなりません

現状でもそうですが、
小学生の時点で上位の大学等を目指すことを決めている場合、隣県(鳥取県)の県大附属中学に進学したりします。
この時点で最上位の子は塾生候補から居なくなります。

公立中学といえばカオスの代名詞。
医学部に行く素材を持つ子から高校すら進学しない子も居ます。
学力的に玉石混交の公立中学からさらに上位生の半分は地域外の高校に流れます。

当然、残った子が地元高校に進学するわけですが、残ったから悪いというわけではありません。
ただ、残った子のなかで教育費にコストをかける家庭は相当少ないという現実だけが塾経営者を襲います。
言い方は悪いですが、地元高校は成績が悪くても卒業できる高校ですので、塾の必要性を感じるのは大学進学希望者くらいです。
中学で通塾していても、大学進学を希望していなければ高校進学と同時に退塾するケースも多々。

んー辛い。

さらに、高校が無くなる可能性も除外はできません。
新温泉町が属する美方郡には3つの公立高校がありますが、どの高校が生き残るか議論されています。現在、どの高校も1学年100人以下。

このような状況のなかで塾生を1学年4,5名入れなくてはいけないので、意外としんどそうです。



これからの過疎地域での教育で求められること

ここから地域を超えた教育の話になります。

オンライン学習環境の台頭によって格差は縮められる。
僕はそう考えています。

オンライン学習で変わるのは学校教育というよりも家庭学習。
大人が子どもに有効なサービスの使い方を教えられれば、自習でどこまででもいけます。
トライイットやアオイゼミなどの有料サービスはもちろん素晴らしいですし、無料でもyoutuberによる授業はとてもわかりやすく、さらにSNSなどで分からない問題の質問をすれば丁寧に回答をもらえます。

これまで過疎地域は、選べない学校とあんまり選べない塾そして教材の少ない家庭でしか学習できませんでしたが、
今後は、選べない学校とほぼ選べない塾そして教材豊富な家庭学習となります。
家庭学習はもともと大事でしたが、家庭外で期待できないのであれば家庭内でうまく成長できる教育をするのが手っ取り早いですね。
家庭内でうまく成長するためには、なによりも親が大事となります。

また、選べない学校も問題ですよね。
地方の学校は都市部に比べて数年遅れているなんて言われたり言われなかったりしてますが、まぁ遅れてるんじゃないかなと思ってます。
学校としては、学び合いの導入だったりICT機器の導入だったり公営塾の開設だったり色々できるわけですが、これも意欲のある町でなければ難しい。
保護者が意見を出した所で色々準備している間に我が子が卒業しちゃうから、保護者も自分ごとにならないんですよね。だから基本的にはトップが動くしか無い。こればっかりは運かなぁ。

学校が既存の形式を続ける一方で、家庭は最新の技術を取り入れられる。
家なら分からないことをすぐにググれるのに、学校だと先生に聞かなきゃわからない。下手したら教えてくれないときもある。不要な環境ギャップが子どもを困らせることは必至です。
写真を撮って画像加工ソフトで加工してネットにアップしてユーザーから反応もらってるのに、学校では筆で色を塗ってポスター作って先生からのコメントもらうだけ。基本や変遷を辿るは大事だけど、炊飯器の使い方教えずにかまどから飯炊かないでしょ。

そんなギャップのなか、塾の役割は何かというと、時代を反映した理想的な学校であり理想的な家庭になることかなと思います。
時代のニーズを捉えてすぐに反映するのは学校でも家庭でも現実的には難しいので、それを塾が代行するイメージ。
他にも、進学塾であればレベルの高い生徒と交流できることが従来からある塾のメリットでもあるので、そういった指向性を持った塾とすることで子どもが自己肯定しやすい環境を担えるかと思います。

分母の少ない過疎地域では、様々なレベルに合わせたコースを用意したところで十分な売上は上がらないので、自学力を高めるためのコーチングとマネジメントと学習環境の整備が究極かと思ってます。
だから僕はその方向にシフトしますし、一部生徒にはすでにやっています。

いやー、でも正直、幼児教育および親への教育をちゃんとしたいところではあります。
実績のない現状の僕だと商売ベースに持っていけないのと、そもそもそこの分母も極小なのでホントにしたいけど出来ない。

分母が極小だから出来ないことが多い
これこそ過疎地域のゲンメツポイントです。
部活とかでも明らかですよね。

都市部ならあらゆる分野のスクールがあり、イベントがあり、オルタナティブスクールがあり、コミュニティがある。
田舎では人が居ないからそんな細分化はできません。
だからこそ、ネットを上手に使える場所を用意して、チャレンジできる環境を用意して、なんでも受け入れてやる基地が1つで良いから必要。

固定観念の強い田舎だから、世界基準でしゃべる子を受け入れてやる大人が必要。将来ビッグになる人が田舎の常識なんて覚える必要ない。可能性を引き出したいですよね。そっちの方が絶対おもしろいし。
塾に行くまで普通ぶってて、塾に入ったら好きに自分を表現して世界とアクセスできる。それって最高。
過疎地域がいろいろ遅いのであれば、逆に塾はそうなれる可能性がある。

塾としての結論は「従来型の塾は絶滅する」です。

そして、過疎地域の教育としての結論は「もっとオルタナティブに行こう」です。


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