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あの世に行ったかもしれない友へ捧ぐ《3/4》

〚2101文字〛 ※読み終えるまでに分程度掛かります。

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■顔に似合わず行動力のあるF

思い返すと僕とFの関係は不思議だった。表面上は僕がFに何かを新しいものを提案しながら、実際に行動でリードするのはFだった。
旅行もそうだが、Fは顔に似合わず積極的だった。自分は何もない奴というコンプを抱き、それを自虐で公言していて、どうにかしたいと考えていたためか、Fはがむしゃらにどこかへ出掛けたり、何かしたいという感じを前面に出していた。
そんなことから、細田守の映画がやるから観に行こう、とか、築地に寿司を食べに行こう、とか、カレーの美味しい店を見つけたらから行こう、とか、その行動力のお陰でたくさんの思い出が出来た。
ある時入った飲食店があまりにも2人に場違いな所で、それが可笑しくて笑いを堪えて店を飛び出しこともあった。映画の中のシーンがきつすぎてブルーになり、その後でサイゼリアにて恋愛や結婚観についての談議に花を咲かせた。こうして社会人になってからも学生ノリから解放されず、会えば馬鹿な話をしてばかりだった。

■2011年~2012年

2011年の1月、一時的にFと連絡が取れなくなった。持病の再生不良性貧血が悪化し、輸血が必要な身体になり、そのためにしばらく入院していたのことだった。
Fはそれまで勤めた仕事を辞め、それから2年間療養生活に入った。
僕自身もその頃は身体の調子が悪く、この時期が最もFと濃い付き合いをした期間だった。
他の友達に話せない病気の悩みを始めとした、健康な者には分からない苦しみや将来の不安を互いに打ち明け、傷の舐め合いではあったけれど、それでも心に吹き溜まったものを吐き出せた。他の友達になら言うことも憚れるような愚痴や不満を、あんなにも清々しく言い合える相手はFを除いて他にはいなかった。
そういう意味でFは貴重な友達だった。もっとも彼がをを同じように思ってくれいていたかは不明だが。
ネガティブである一方、前向きでもあるFは将来を見据えて職業訓練に通い、合宿で運転免許を取得した。
それまで目の関係で無理だと思っていた運転免許を取ることになったきっかけもFが齎してくれたものだった。先に自分が経験することで色々と参考資料を与えてくれ、僕自身も免許取得によって世界も広げることができた。

■F再就職

2013年、2年間の療養期間の後、某会社に再就職を果たし、Fはスーツを着込んだ営業マンとなった。
その仕事では大学時代に共に取った資格を必要とするもので、時間は掛かったけれど、Fは学んだ甲斐のある職業に就いたのだ。
勿論Fには奨学金返済やその他の借金もあり、自身の人生に対する意地のようなものもあったと思う。
Fはよく「自分は消費者のまま」でいたくない言っていたけれど、再就職後は、正社員であることを自身のプライドとして誇示するようになった。
と言っても、その業界も知識と話術を必要とする体育会系の業界で、Fは仕事を始めて早々、「仕事も人間関係もきつすぎる」と言ってよく電話を掛けて来た。
確かに僕もきつい業界だと思う。それでも挑戦せずにいた自分よりは彼には勇気と意欲があった。一方僕もこの時期以降は契約ではあったけれど、しばらくは安定して仕事が出来た時期もでもあった。

■徐々に精神を蝕まれたF

再就職してしばらく僕とFはしばらく連絡を取らなくなった。
というのも、Fの愚痴やネガティブ発言が多くなり、それが自分が今まで共有可能な部分と許容範囲を超えて、それらを烈火の如くぶつけて来るようになったからだ。
自分が会社で上司先輩からされている説教を何故か僕にするようになり、段々それに辟易するようになった。
その業界は基本裕福な金持ちを相手にするものだから、Fにとっては残酷だったのかもしれない。彼は電話の中でその部分をよく強調していた。
心が離れるのと比例するかのように、当時自分も夜勤仕事に変わり、Fとのタイミングも次第に合わなくなり、今まで週に1回は電話と、月に1度は会っていた交流が2ヶ月、3ヶ月と空き、半年くらい音信不通となった。

■最後に会ったF

2014年の6月、僕はFと久しぶりに会った。
Fは敢えて僕の前で羽振りの良い所を演じて見せたりした来たけれど、今思えば、その強がりをもっと優しく応じてあげれば良かったと思う。
そして彼と最後に会ったはその年の8月の中旬だった。
僕の地元にFが来て一緒に食事をして、その後でドライブをしたが、隣に座るFの顔が妙にこけていて、血色も悪く、そしてどこか寂しそうさえに見えた。
僕が「大丈夫か?」と訊ねると、Fは「飲む薬が増えたよ」と一言と溜め息まじりに答えるだけだった。
何故かその日のFは、ここ最近の虚栄心に取り憑かれた彼ではなかった。以前のようなFで、懐かしい思い出話を急にしたがったり、昔一緒に嵌って観ていたアニメの話など、以前ファミレスで下らない話をしていた頃のような空気で始終過ごした。その日は昼前に会って終電近くまで一緒に過ごしていたと思う。
その日のFはあまりにも不自然だった。

ここまで読んで下さりありがとうございます。次回最終《4/4》へ続きます。


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