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#雨の日の午前3時

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古性のちと佐田真人のゆるい共同マガジン。 10日に1度、お互い交代でお題を出しあい同じテーマでショートショートを書いています。 24:02に更新。 やさしい時間をとどけます。
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#エッセイ

はらはらと舞い散る雨の様にそっと、そっと

はらはらと舞い散る雨の様にそっと、そっと

気づけば雨が降ってきたので、こんな日は日記を書かなければ、とnoteを開きました。ふーっと体の芯が深いところから呼吸を繰り返すような。この感覚は寒い日に、バンホーテンのココアを飲んだときとよく似ているような気がする。

「いい天気」と聞くと、きっとどうしても頭を覆うのは、つるっとした真っ青な空と、もくもく美味しそうな雲と、全力で笑う太陽だけれど。

わたしのいい天気は、俄然雨の日で。
お布団に

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小さなちいさな反逆者

小さなちいさな反逆者

(お題:黒髪)

そろり、そろりと息を潜めて登校する。まだ暑さを存分に含んだ8月の太陽が、じりじりと腕を容赦なく焦がしていく。 
夏休み。校内には、当たり前ながら生徒の影はひとつもない。 
頭に乗せたスクールバックのむわっとした暑さに、里奈はうっすら汗をかいていた。 

” 染毛禁止 ”

当時、市で上から3番目に頭が良い(と言われていた)Y校は、それなりに規則が厳しく、だけれどみんな優秀だったの

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眠れない夜と、その同士たち

眠れない夜と、その同士たち

(今週のテーマ:眠れない夜)

「いまその商品は売り切れてまして...」

コンビニの店員さんが申し訳なさそうにそう伝える。なんとなくそうだと思っていたが、ここまで安眠グッズが売り切れてるとは思わなかった。どれだけ東京の人は眠れないのだろう。ちょっとした同士がすぐ近くにいると思うと、すこし嬉しくなった。



もう何日も眠れない日が続くと、眠れない自分がおかしいんじゃなくて、夜は眠らないといけな

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理想の朝ごはん

理想の朝ごはん

(今週のテーマ:朝ごはん)



会議のための資料を急ぎで作る。

「明日の朝一でも間に合うだろう」と昨夜帰ってしまった結果が、いまのこの状況だ。

「こうなることは想像できただろう!」と問われると、想像できたに決まってる。できたとしても帰りたくなることだってあるはずだ。

そんなことを頭の片隅で考えながら、ラップトップのキーボードを指先立てて叩いている。

マルチタスクと呼ばれるものが大の苦手

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映画、はじまり

映画、はじまり

(今週のテーマ:映画館)



特にやりたいことがあるわけでもなく、東京に出てきてからも、なんだかパッとしない毎日がつづく。

こんなにも人がいるはずの東京で、なぜだかわからないけど、とつぜん孤独に苛まれることがある。

深夜の自販機でさえもこんな自分に同情しているのか、足元を優しく照らしてくれているような気がした。

こうしてまた眠りに落ちて、明日の朝には綺麗さっぱり忘れてる。そう自分に言い聞

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雨の空港

雨の空港

(今週のテーマ:空港)



夜中の空港は昼間の活気とまではいかないけれど、これから始まるであろう大なり小なりの心踊る”なにか”を感じることができる。

友達同士で旅行の最終計画を練っている人たちやカフェでPCとにらめっこするビジネスマン、ベンチで肩を寄せ合うカップル。

ここをはなれるまでのほんの数時間、みな思いおもいのひとときを過ごす。夜中の空港は昼間のそれとは違い、一人ひとりの旅路を鮮明に

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真夜中のさんぽ

真夜中のさんぽ

(今週の共通テーマ:真夜中の散歩)



またどこからか、何度目かわからぬ夜がやってきた。

右、左、右、左、右。
自分の足が地面をとらえていることに、それを頭がきちんと自覚できていることに、とたん、嬉しくなる。
静かなまち。誰もいない道。ドクン、ドクン、と一定のリズムを刻む自分の心臓の音だけに、耳がかたむいていく。

どうやら今日もちゃんと「わたし」が帰ってきた。
おかえりなさい。
ただいま。

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真夜中散歩

真夜中散歩

(今週のテーマ:真夜中の散歩)



スマホとサイフ、家の鍵をポケットに入れ、まだ冷めきらぬ身体を外に出す。まだ乾ききらない髪の湿気を振るいながら、歩き始める。

白いTシャツに肌触りのよい短パンの寝間着姿だったが、日中の暑さからは一転し、すこし肌寒いぐらいだった。

自宅から徒歩9分歩いたところに、ひっそりと住宅街に溶け込むコンビニがある。そこでまずは食べたいアイスを買って散歩するのが、毎週休

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共同マガジン「雨の日の午前3時」はじめます

共同マガジン「雨の日の午前3時」はじめます

一方通行の手紙のような、だけどどこかリレー小説のような。
共同マガジンをはじめます。

「あ、これからなに書こうかな」と迷ってる時間がいちばん好きだ。
あてのない旅と、あてのない文章はよく似てる。とおもう。

ここ最近、ブログだったり、クライアントワークだったり。そんな ”書かなければ” に追われていた日々。ひさびさに開いた、2年前のnoteに綴られていたことばは、
「誰かに正確に何かを届ける

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