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こんなに暑くても、冬より夏が好きです。

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記事一覧

赤字の世界。

制作者の端くれとして、上司やクライアントから赤字をいただくことがある。「ことがある」というよりも、ほとんど必ずといっていいほど、赤字をいただく。切れ味鋭い刀で全…

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4年前
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サボる才能。

 才能というものはなにも選ばれた人間にしか贈られない特別なギフトではない。この世界に生まれた一人ひとりに他人より秀でたものが備わっている(と思っている)。絵を描…

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4年前
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完璧な「横顔」は、存在するかもしれない。

今、都内のスターバックスでこの文章を書いている。資格の勉強をしている女性が僕の前方にいる。彼女の参考書から、資格について学んでいるということが推測できるのだ。何…

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4年前
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悪意の源泉は悪意に限られるのか。

朝、通勤で道を歩いているとき、目の前で鳥の糞が落ちた。 あと一歩、前を歩いていたら、僕の頭上にピタリと命中していただろう。もし髪の毛に当たっていたら、ひどく落ち…

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4年前
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髪型のセットは、心のセット。

男子トイレに入ると、時々、見かける光景があります。鏡の前で、前髪をくねくねし、おでこを少しだけ出し、と思ったら、またおでこを隠す、といった類の髪型のセットです。…

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4年前
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十円玉という旅人。

十円玉を手に取って眺めていた。なんの変哲もない硬貨である。でも、十円玉とにらめっこしていると、こやつはとんでもない旅人かもしれないと思うことがあった。お察しのと…

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4年前
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お祭りに行くと、小学生の僕がいた。

生まれ育った街の祭りに行った。たぶん、15年以上ぶりの参加である。二日間の開催で、数十万人ほどの人が訪れる、にぎやかで規模の大きなお祭りだ。小さい頃、僕は街をあげ…

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4年前
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NBA JAPAN GAMES 観戦記

 何を隠そう(たぶん誰も興味はないと思いますが)、僕はバスケ好きである。中学、高校、大学と僕の学生生活はバスケとともにあった。だから、バスケットの世界最高峰のリ…

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4年前
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駅員「お触りください」

夏の暑い日。僕は山手線のホームで電車を待っていた。次発の電車を待つ列の後ろに並んでいる。前方には、休日のラフな格好をしたおっさんや、肌をさらけ出した若い女性がい…

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4年前
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ハロウィンの日に女神がいた話。

ハロウィンがやってくると、僕は毎年、数年前に起こった出来事を思い出す。 無数の人がコスチュームを着て、ぞろぞろと街を練り歩く日の夜、僕は仲のいい友だちと六本木の…

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4年前
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僕らはみんな夜景の点灯員。

 うちに帰ってまずすることは、お風呂に入ることよりも、ごはんを食べることよりも、音楽をかけることよりも先に明かりをつけることである。電気をつけないことには部屋の…

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4年前
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シーソーゲーム 〜勇敢な”変”の歌〜

 あれは確か僕が小学6年生の修学旅行のときのことだった。栃木の日光にバスで向かう途中、車内ではクラス全員でヒット曲を歌うカラオケ大会のようなイベントが催されてい…

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4年前
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失笑の多い人生を過ごしている。

 僕にはいいかげん直した方がいいよなあと思いつつ、改善されていない悪習がある。駄洒落である。駄洒落を言うのは誰じゃ? と口走ったことはないが、自分のプロフィール…

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4年前

赤字の世界。

制作者の端くれとして、上司やクライアントから赤字をいただくことがある。「ことがある」というよりも、ほとんど必ずといっていいほど、赤字をいただく。切れ味鋭い刀で全身を切り刻まれることもあれば、急所をひと突きするような深手を負うこともある。無傷のまま、作ったものが世の中に出るということはあまり記憶にない。ものを作るということは時に銃弾を、時に刀傷を負うことを覚悟しなければならないと思っている。

先日

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サボる才能。

 才能というものはなにも選ばれた人間にしか贈られない特別なギフトではない。この世界に生まれた一人ひとりに他人より秀でたものが備わっている(と思っている)。絵を描くことが得意な人もいれば、車の運転が上手い人もいる。人を笑わせることが得意な人もいれば、とてもうまく歌える人もいる。そういう、人よりもうまくこなせる特殊なアビリティーに対して「才能がある」というラベルがぺたっぺたっと背中に貼られていく。僕は

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完璧な「横顔」は、存在するかもしれない。

今、都内のスターバックスでこの文章を書いている。資格の勉強をしている女性が僕の前方にいる。彼女の参考書から、資格について学んでいるということが推測できるのだ。何の資格か、具体的にはわからない。本のタイトルまではっきりと読み取ることはできない。

彼女は、ポニーテールの黒髪で、タートルネックの黒いセーターを羽織り、深緑のワイドパンツを履いている。

そしてなにより、とても美しい横顔を持つ女性

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悪意の源泉は悪意に限られるのか。

朝、通勤で道を歩いているとき、目の前で鳥の糞が落ちた。 あと一歩、前を歩いていたら、僕の頭上にピタリと命中していただろう。もし髪の毛に当たっていたら、ひどく落ち込んだ1日になったに違いない。上司に「鳥の糞が落ちてきたんです」と言ったって、「だから?」で終わりである。そこに軽い同情はあったとしても、数秒後には上司は忘れている。他人にとってどうだっていい話だ。

しかし、あの鳥は僕を狙ったのだろうか。

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髪型のセットは、心のセット。

男子トイレに入ると、時々、見かける光景があります。鏡の前で、前髪をくねくねし、おでこを少しだけ出し、と思ったら、またおでこを隠す、といった類の髪型のセットです。女子トイレに入ったことはないので(あったら問題である)わからないですが、女性陣も鏡の前で、多少の髪のお直しはされているのではないかと思います。

そんな男子諸君の髪型のセット事情ですが、時々、そんなにやる? というくらい、長い時間をかけてセ

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十円玉という旅人。

十円玉を手に取って眺めていた。なんの変哲もない硬貨である。でも、十円玉とにらめっこしていると、こやつはとんでもない旅人かもしれないと思うことがあった。お察しのとおり、十円玉は定住の地を持たない。一泊二日や二泊三日、長くても十日間くらいの滞在で次の旅に出る。短いときはものの数十分でその地を去ってしまう。貯金箱という半永住の地につかない限りは、彼らは渡り鳥のように旅をつづてけている。

いま僕が手にし

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お祭りに行くと、小学生の僕がいた。

生まれ育った街の祭りに行った。たぶん、15年以上ぶりの参加である。二日間の開催で、数十万人ほどの人が訪れる、にぎやかで規模の大きなお祭りだ。小さい頃、僕は街をあげてのこのお祭りに毎年のように行っていた。

祭りは、街の中心部から広範囲にわたって催され、どこを歩いても、激しい人だかり。原宿の竹下通りの人混みが延々とつづくような光景と似ている。街のところどころで山車が巡行し、笛、和太鼓、鉦の祭囃子

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NBA JAPAN GAMES 観戦記

 何を隠そう(たぶん誰も興味はないと思いますが)、僕はバスケ好きである。中学、高校、大学と僕の学生生活はバスケとともにあった。だから、バスケットの世界最高峰のリーグであるNBAは、あらゆるスポーツの中でいちばん好きなスポーツです。シーズン中は、うちに帰るとNBAのハイライトを見ながら、ご飯を食べることが日課で、その時間がささやかな幸せだったりする。

 このあいだ、NBA JAPAN GAMESと

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駅員「お触りください」

夏の暑い日。僕は山手線のホームで電車を待っていた。次発の電車を待つ列の後ろに並んでいる。前方には、休日のラフな格好をしたおっさんや、肌をさらけ出した若い女性がいる。ターミナル駅特有の喧騒の中、駅員のアナウンスが聞こえてきた。

「ーーー、お触りください」

え、と思った。最後のフレーズだけ聞こえてきた僕は耳を疑った。駅構内で、「お触りください」とはなんと大胆なアナウンスである。ほうかほうか、触

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ハロウィンの日に女神がいた話。

ハロウィンがやってくると、僕は毎年、数年前に起こった出来事を思い出す。

無数の人がコスチュームを着て、ぞろぞろと街を練り歩く日の夜、僕は仲のいい友だちと六本木のクラブに行った。ふだんからクラブ通いをしていたわけではないんだけど、ハロウィンという、ちょっと浮世離れする日に、浮世離れなことをしてみたいと思ったのかもしれない。僕たちは意気揚々とクラブに乗り込み、酒を飲み、音楽に合わせて、慣れない所作で

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僕らはみんな夜景の点灯員。

 うちに帰ってまずすることは、お風呂に入ることよりも、ごはんを食べることよりも、音楽をかけることよりも先に明かりをつけることである。電気をつけないことには部屋の中をまともに歩けないし、なにをするにも暗闇のままだと困ってしまう。それこそまちがえて猫の尻尾でも踏んでしまったらたいへんだ。ンギャー!と叫びながら部屋中を駆け回り、嵐が過ぎ去ったごとくものが散乱した部屋に様変わりしてしまう。まあ、とにかく平

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シーソーゲーム 〜勇敢な”変”の歌〜

 あれは確か僕が小学6年生の修学旅行のときのことだった。栃木の日光にバスで向かう途中、車内ではクラス全員でヒット曲を歌うカラオケ大会のようなイベントが催されていた。歌の選曲はサザンオールスターズ、Mr.Children、スピッツ、SMAP、globe、安室奈美恵と当時(現在でも)のヒットメーカーがずらりと並んだラインナップである。その有名アーティストの数々の名曲を叫ぶように僕たちは楽しく歌っていた

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失笑の多い人生を過ごしている。

 僕にはいいかげん直した方がいいよなあと思いつつ、改善されていない悪習がある。駄洒落である。駄洒落を言うのは誰じゃ? と口走ったことはないが、自分のプロフィール欄に「癖」の項目があれば、「駄洒落」と記して違和感のないくらい習慣化している。もっとも、「駄洒落」というワードならまだ恥を感じることは少ないが、ほぼ同義語の「おやじギャグ」として周囲のみなみなから指摘されてしまうと、とたんに赤面度はあがる。

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