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和歌(あなたのせいで/周りへの恨み)

前回の内容はこちら▼

あなたのせいで

相手のせいで傷つけられる。
苦しい思いをする。



①取り残される

衣手に 取りとどこほり 泣く子にも
まされる我れを 置きていかにせむ


着物の袖にとりすがって泣く子以上に
悲しむ私を置いて行くなんて、
私はどうすればよいのでしょうか。

(『万葉集』第四巻 492番 / 田部櫟子)




まそ鏡 見飽かぬ君に 後れてや
朝夕に さびつつ居らむ


いくら見ても見飽きないあなたに取り残され、
朝も夕方も寂しく暮らしていくのでしょう。

(『万葉集』第四巻 572番 / 沙弥満誓)




②振り回される


難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき


難波の入江に生えている芦の刈った根の一節ほどの
短い一夜をあなたと過ごしただけなのに、
私はこれからこの身をつくして、
あなたに恋し続けなければならないのでしょうか。

(『百人一首』88番 / 皇嘉門院別当)




③振り回されないように

音に聞く 高師の浜の あだ波は
かけじや袖の ぬれもこそすれ

噂に高い、高師の浜に寄せてはかえす波で、
袖を濡らさないようにしましょう。
(浮気者だと噂の高い、あなたの言葉に心をかけて、
わたしの袖を濡らさないようにしましょう。)

(『百人一首』72番 / 祐子内親王家紀伊)




④恨む

ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ
末の松山 波こさじとは


あなたと固く約束を交わしたのに。
お互いに涙で濡れた袖をしぼりながら。
波があの末の松山を決して越すことがないように、
二人の仲も決して変わることはありますまいと。

(『百人一首』42番 / 清原元輔)




忘らるる 身をば思はず ちかひてし
人の命の 惜しくもあるかな


あなたに忘れられる私の身のことは
何ほどのこともありませんが、ただ、神にかけて
(私をいつまでも愛してくださると)誓ったあなたの命が、
(誓いを破った神罰を受けて)失われるのが
借しく思われてなりません。

(『百人一首』38番 / 右近)


周りの人への恨み

周りの人に苦しめられる。



①あの人の話をしないでほしい

我が聞きに 懸けてな言ひそ 刈り薦の
乱れて思ふ 君が直香ぞ


私に聞こえるようにあの方と分かるような
話をしないでください。
耳にするだけで、刈り薦のように
心が乱れて苦しいじゃありませんか。
あの人を彷彿とさせて。

(『万葉集』第四巻 697番 / 大伴像見)




聞かずして 黙もあらましを 何しかも
君が直香を 人の告げつる

聞かせないで黙っていてほしかった。
どうしてあなたの消息を里人は知らせたのかしら。

(『万葉集』第十三巻 3304番 / 作者不詳)

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