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藍色の空と君と

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小説と詩の混合作。 ブルーアワーを撮る君に惹かれた僕は目を擦り空を仰いだ。綺麗な空が1日に何度も色を変える。 素敵な事実を教えてくれた君に僕は何かを届けたいと思い…
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#自由詩

朝の怖さを知らない僕

朝が怖い。本に記載されていた、自分には理解が及ばない文字列。きっと、僕はさして痛みを知らないのだろう。気付かないうちに多くの人によって守られているのだろう。前進に伴う痛みと、現状を維持するための痛みは違うのだ。おそらくは。僕は前者しか知らない。

もしかしたら遠くない未来、僕も朝が怖くなるかもしれない。写真が好きなあの子からムラサキ色した空が送られる。

ストーリーにアップされない、個別チャットで

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藍に恋をして

日没前と夜明け前の
空の色の移り変わりようを
気にも留めなかった

視線を向けるようになったのは
君と出会ってから

不可視な心の形に写真の構図を重ねる
不可視な心の余白に空の色を塗りたくる

心という
言葉にするには躊躇いがちな漢字一文字

君は声にしないで
その様相を教えてくれた

現実を切り取って
僕に届けて
空に連なる不可侵な想いが
画面に浮かぶことを知った日

君に恋をした瞬間
#詩  

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注がれる輝き

不安がベッドに根付くから
未明に跨ぐ藍色の空を写真に収める

白昼の空に映る青は掴めない

藍色の滲み具合は
円形をなさない私の心に寄り添ってくれる

光が眩しいから
前髪を長くして

笑顔が苦しいから
耽美なものを好んで

そうした心地に慣れた頃

君は私の在り方を知ってか知らずしてか
光を届けてくれた

前髪が長い私を褒めてくれた
バッドエンドな映画を見て感想をくれた

私がこっそり撮る藍色の

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プロローグを経て

どこかで誰かが号泣必死の映画を観て泣く

「今日から人に優しくしよう」とSNSで決意した誰かは数日後、クラスメイトに平気な顔して罵詈雑言を浴びせる

物語は届かないの?
言葉は届かないの?
思いは届かないの?

私はそっと目を閉じた
私は部屋に閉じ籠った
私は前髪をより伸ばした

現実から逃げたくて
私は藍色の空を撮り始めた

明日なんて来るな
金輪際、夜は空けるな

祈りが通じるはずもなくて

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騎月雨の詩

夜を彷徨う雨がしずかな時を奏でてくれる

未明にブルーアワーを撮る君も今日は天井を眺め朝を迎えるだろう

年を跨ぐ度 月を跨ぐ度 夜を跨ぐ度
胸に手を当てて鼓動に耳を澄ます

夜に交わすメッセージは
世界を潤す雨のように僕の心を君で満たす

雨は月を隠すね 月が隠れても露わになっても
この想いは不変で雲に覆われた方が君を考える時間は長い

月が変わっても月が変わる直前でも
雨の日は電波を通して君と

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未明の刻に

君は歌う。未明から桟橋で横たわり歌を歌う。

空の色が藍色と紫と黒のグラデーションで曖昧な今に自己投影する。朝が来たら毅然とした青空と太陽が君を炙り出す。

陽が登らない頃にだけ見える世界。不安も高揚も過去も未来も、この刻だけは許容できる。

18時30分になれば星空が跨ぐ、君は誰も星を仰がない時間に自分を見つめる。

君が最も君らしいこの時刻に寝ている僕は、君を理解したそぶりを見

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ブルーアワーを君に送る

未明の頃合いに私は外に出て桟橋に横たわり写真を撮る

この時間にだけ姿を現す紫と青が入り混じった空、ブルーアワーを瞳とカメラに収めるのが日課だ

私がこの空を撮る理由はまだ私が始まっていないから
陽が登らないこの時間が私に味方してくれるような気がした

私は未熟で未完で未成年で
物語は始まってさえいない

誰か1人、理解者が欲しかった
派手なブランドや飾りのための恋愛、
見栄だけに留まらない人と繋

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ブルーアワーを撮り続けて

君が撮ったブルーアワーが
コンテストで大賞を受賞して
第三者に評価された それは喜ばしい

でも実際のところは

君の辛さや願いが込められた
その写真が誰かに届いたこと

君が早く起きて撮り納め
努力が報われたこと

その背景に僕は心打たれるんだ

君が切り取る世界は
白昼に空を仰ぐことを躊躇う人に
きっと届くだろうね

明るくない空でも
日が出づる前の空でも
夜明けを望む空は綺麗だって

想いは

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マジックアワーをお返しに送る

いつか君に聞いたカメラの機種

そのカメラを購入して空の色が移ろいゆく中

日の入り後に映える、柔らかな金色の空を収めたよ

君が日の出前の空を送るから
僕は日の入り後の空を送るとしよう

君と共有できる趣味
君と僕を繋ぐ空

季節も空も留まることを知らない
1日でさえ幾度も空は色を変える

確かなものなんてあるのだろうか

思考も習慣も想いも不確かで
不変は約束できない

だから僕は写真を撮る

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