展覧会レポ:東京都写真美術館「TOPコレクション 何が見える? "覗き見る"まなざしの系譜」
【約3,000文字、写真約40枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)の「覗き見るまなざしの系譜」というコレクション展に行ってきました。その感想を書きます。
結論から言うと、予想外の視点から写真について考察されていることに加え、展示方法は触れる、覗けるなどの工夫や、写真だけでなく立体物、実用品、インスタレーションなど展示物のジャンルが多岐に渡るため飽きずに楽しめました。美術館にあまり行かない人でも楽しめる展覧会だと思います。
▶︎「TOPコレクション 何が見える? "覗き見る"まなざしの系譜」
展示室内は全て撮影okでした。
全5章から成る展示の流れが興味深かったです。私は、カメラオブスクラから始まり、カメラの構造的・機能的な仕組みや歴史を粛々と展示するものを想定していましたが、実際はそれと違う視点からの展示でした。
私が想定していた内容の例 「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展」↓
今回の構成
1)覗き見る愉しみ:おもちゃ、娯楽としての「覗き」がスタート
2)観察する眼:顕微鏡、望遠鏡、連続写真など「覗き」が科学的に進化
3)立体的に見る:見え方が平面から立体へ進化
4)動き出すイメージ:写真を連続することで動画に進化
5)「覗き見る」まなざしの先に:現代の「覗き」の可能性
今回の展示は、写真を眺めるだけではありませんでした。覗く、触れる、電気のスイッチを付けるなど、触れる工夫がたくさんありました。また、写真以外の実用品、立体作品、動画、インスタレーションもありました。
そのほか、写真の進歩が、芸術だけではなく、科学などに及ぼした影響が示されていました。そのため、普段、美術館にあまり行かない人にとっても、関心を抱く構成だったと思います。
また、椅子が多くて助かりました(子供はすぐに飽きてしまうため)。なお、体験型の展示はどれも子供は身長が足りなかったため、台が備え付けてあるとバリアフリーで良いと思いました。
1)覗き見る愉しみ
まずは娯楽としての"覗き"からスタート。
「ピープショー」とは、一つ以上の覗き穴があり、そこから箱などの閉ざされた空間を覗き込むと、中の絵が立体的に見える装置のことです。
昔、カメラみたいなおもちゃがあったのを思い出しました。ボタンをカチャカチャすると画面が変わりました。楽しむ原理としては上記と同じですね。
2)観察する眼
娯楽から顕微鏡、望遠鏡、連続写真など「覗き」が科学的に発展し進化。例えば、馬の歩く姿を連続写真で撮影することで、正しく絵を描くことができ、関節の動きなども正しく理解できるようになりました。また、ハロルド・ユージンの作品は科学と芸術が融合しており素敵だと思いました。
3)立体的に見る
平面的に見ていた写真を立体的に見たくなる。映画などで使う「3Dメガネ」と同じ発想です。当時、この発見をした人はびっくりしたでしょう。
4)動き出すイメージ
写真を連続させることで動画に発展します。
5)「覗き見る」まなざしの先に
現代の覗くことへの可能性を探ります。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?TOPが写真の歴史を粛々と展示すると思いきや、意外に攻めた内容でした。TOP独自の視点で写真を深掘りすることに加え、展示方法には数多くの工夫がされている点は「セレンディピティ展」と同様にTOPの挑戦を感じました。博物館的な学びもあるため、普段、美術館に行くことが少ない人にとっても楽しめる展覧会だと思いました。
▶︎おまけ(「風景論以後」)
展示室に入ると、いきなり個人別の展示が始まります。私は、この展覧会の趣旨がよく分かりませんでした(展示室に入る前のスペースに説明があったのかも)。「風景論」の詳しく、分かりやすい説明が必要だと思います。
個人個人の作品は良かったとしても、巨視的にどういうメッセージで作品が集められたのか理解できないと、納得感がありません。
いつもTOPの地下会場は不思議な展覧会が多いように思います。入場者は多かったです。子供が早々に飽きてしまったため、足早に退散しました。
▶︎今日の美術館飯
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