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展覧会レポ:東京都写真美術館「TOPコレクション 何が見える? "覗き見る"まなざしの系譜」

【約3,000文字、写真約40枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)の「覗き見るまなざしの系譜」というコレクション展に行ってきました。その感想を書きます。

結論から言うと、予想外の視点から写真について考察されていることに加え、展示方法は触れる、覗けるなどの工夫や、写真だけでなく立体物、実用品、インスタレーションなど展示物のジャンルが多岐に渡るため飽きずに楽しめました。美術館にあまり行かない人でも楽しめる展覧会だと思います。

展覧会名:TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜
場所:東京都写真美術館
おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ー
会期:2023.7.19(水)—10.15(日)
休館日:月曜日
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内
アクセス:恵比寿駅から徒歩約10分
入場料(一般):700円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
混み具合:ストレスなし
展覧撮影:すべて撮影可
URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4536.html


▶︎「TOPコレクション 何が見える? "覗き見る"まなざしの系譜」

チケット

展示室内は全て撮影okでした。

全5章から成る展示の流れが興味深かったです。私は、カメラオブスクラから始まり、カメラの構造的・機能的な仕組みや歴史を粛々と展示するものを想定していましたが、実際はそれと違う視点からの展示でした。

私が想定していた内容の例 「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展」↓

今回の構成
1)覗き見る愉しみ:おもちゃ、娯楽としての「覗き」がスタート
2)観察する眼:顕微鏡、望遠鏡、連続写真など「覗き」が科学的に進化
3)立体的に見る:見え方が平面から立体へ進化
4)動き出すイメージ:写真を連続することで動画に進化
5)「覗き見る」まなざしの先に:現代の「覗き」の可能性

一口前にあるフォトスペース

今回の展示は、写真を眺めるだけではありませんでした。覗く、触れる、電気のスイッチを付けるなど、触れる工夫がたくさんありました。また、写真以外の実用品、立体作品、動画、インスタレーションもありました。

そのほか、写真の進歩が、芸術だけではなく、科学などに及ぼした影響が示されていました。そのため、普段、美術館にあまり行かない人にとっても、関心を抱く構成だったと思います。

また、椅子が多くて助かりました(子供はすぐに飽きてしまうため)。なお、体験型の展示はどれも子供は身長が足りなかったため、台が備え付けてあるとバリアフリーで良いと思いました。

1)覗き見る愉しみ

まずは娯楽としての"覗き"からスタート。

カメラ・オブスクラ:布の中に顔を突っ込むと、キャンバスに風景が映り込む仕組み。看視員さんが手をパタパタしてくれて親切
ピープショーを興行する人と、それに驚く人。それぞれの顔芸が面白い

「ピープショー」とは、一つ以上の覗き穴があり、そこから箱などの閉ざされた空間を覗き込むと、中の絵が立体的に見える装置のことです。

折りたたみ式のピープショー。ペーパーピープショーやトンネルブックと呼ばれた
覗くとこんな感じ。奥行きがあって見る角度によって景色が変わる
カルロ・ポンティ《メガレトスコープ》:写真に光を当てることで昼や夜の風景を楽しめる装置
TOPでは初めて見る(?)表示
作家不詳《影からくり浮絵》:これが ↓
後ろの電気で、絵の一部が光る仕組み
いろんな《のぞきからくり》や《覗き眼鏡》

昔、カメラみたいなおもちゃがあったのを思い出しました。ボタンをカチャカチャすると画面が変わりました。楽しむ原理としては上記と同じですね。

「ポケモンムービー」という名前だそうです(引用元

2)観察する眼

娯楽から顕微鏡、望遠鏡、連続写真など「覗き」が科学的に発展し進化。例えば、馬の歩く姿を連続写真で撮影することで、正しく絵を描くことができ、関節の動きなども正しく理解できるようになりました。また、ハロルド・ユージンの作品は科学と芸術が融合しており素敵だと思いました。

伝ブリソン《物理学辞典》、エルンスト・ライツ・ウェツラー社《顕微鏡》
NASA《月の影》:まるでデイヴィッド・ホックニー《竜安寺の石庭を歩く》にような作品
エドワード・マイブリッジ《馬と人間》
レ・ドキュモン・シネマトグラフィク《マレーの作品集:最初の動くイメージ》
馬の4本足、関節がどのように動くか科学的な裏付けがあることで、絵画も納得性が増す
ハロルド・ユージン・エジャートン《縄跳びの動き》:note記事のトップ画にしようか迷った化学とアートが融合した格好いい作品
ハロルド・ユージン・エジャートン《りんごを貫く30口径の弾丸》:CDのジャケ写にありそう

3)立体的に見る

平面的に見ていた写真を立体的に見たくなる。映画などで使う「3Dメガネ」と同じ発想です。当時、この発見をした人はびっくりしたでしょう。

ステレオスコープのレプリカ:正直、あまり立体的には見えません
左右の目で覗くと立体的に見える(気がします
万国実体写真協会《ステレオスコープ》
作家不詳《ティッシュ・カード》
\カチッ/ ここにもスイッチの仕掛け

4)動き出すイメージ

写真を連続させることで動画に発展します。

《ゾートロープ、ヘリオシネグラフのレプリカ》
作家不明《キネフォン・グラモフォンシネマ》:当時売られていたもの
《キノーラ》:レバーを回すとパラパラ漫画が動きます。大袈裟な装置ですが、当時は画期的だったのかな
《キノーラ》:パラパラ漫画の素材
展示室の風景

5)「覗き見る」まなざしの先に

現代の覗くことへの可能性を探ります。

奈良原一高《インナー・フラワー:ばら、ティネケ》:病をきっかけに、自らの手を使ってX線写真で撮影。挑戦的な作品
オノデラユキ《No.1》《No.4》《No.5》:カメラでカメラを撮る
伊藤隆介《オデッサの階段》:一部屋使うインスタレーション。カタコトと乳母車が無限に走る
TOP所蔵の作品。写真以外も色々と集めていて研究の幅が広い

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?TOPが写真の歴史を粛々と展示すると思いきや、意外に攻めた内容でした。TOP独自の視点で写真を深掘りすることに加え、展示方法には数多くの工夫がされている点は「セレンディピティ展」と同様にTOPの挑戦を感じました。博物館的な学びもあるため、普段、美術館に行くことが少ない人にとっても楽しめる展覧会だと思いました。

▶︎おまけ(「風景論以後」)

チケット

展示室に入ると、いきなり個人別の展示が始まります。私は、この展覧会の趣旨がよく分かりませんでした(展示室に入る前のスペースに説明があったのかも)。「風景論」の詳しく、分かりやすい説明が必要だと思います。

個人個人の作品は良かったとしても、巨視的にどういうメッセージで作品が集められたのか理解できないと、納得感がありません。

いつもTOPの地下会場は不思議な展覧会が多いように思います。入場者は多かったです。子供が早々に飽きてしまったため、足早に退散しました。

展覧会内は撮影不可
恵比寿のタコ公園(恵比寿東公園)にて

▶︎今日の美術館飯

ちょもらんま酒場 恵比寿東口店 (東京都/恵比寿駅) - ランチセット らーめんと半チャーセット (¥1,012)
Urth Caffé 代官山 (東京都/代官山駅) - ストロベリーシェイク (¥830)、クラシックベルギーワッフル (¥1,000)

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