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展覧会レポ:資生堂ギャラリー「あいだ に あるものー1970年代の資生堂雑誌広告からー」

【約2,900文字、写真約20枚】
初めて銀座の資生堂ギャラリーに行きました。その感想を書きます。

結論から言うと、資生堂のクリエイティブの面白さが端的に伝わる展示でした。特にデザインやコピーに携わる人におすすめの展覧会だと思います。

▶︎ アクセス

真っ赤なビルが目印。1階は資生堂パーラー

新橋駅と銀座駅の間くらいに位置しています。近くにはZARA、アバクロ、ユニクロなどがあります。そのほか、gggやノエビア銀座ギャラリーなど、企業が運営するギャラリーも付近に多いです。

休日の銀座は楽しそう
ユニクロ銀座店(ジュリアンオピーみたいな風景)

住所:東京都中央区銀座8丁目8−3 資生堂銀座ビル B1F

▶︎ 資生堂ギャラリーとは

ギャラリー入り口

資生堂ギャラリーは1919年にオープンした、現存する日本で最古の画廊(略)「新しい美の発見と創造」に取り組み、日本の芸術文化の振興に寄与してきました。これまでに開催した展覧会は3,100回以上(略)2001年には、「東京銀座資生堂ビル」の地下1階にリニューアルオープン(略)

公式サイト

公式サイトにはものすごく細かい沿革が書かれており(全部は読みきれない)、深淵な歴史があることは読み取れました。しかし、事実よりも、どういう”思い”で資生堂がギャラリーを運営しているのかを書いてほしいです。そこで、資生堂の企業理念(ミッション)を調べました。

OUR MISSION is BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力があると信じています。資生堂は創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造を行ってきました。これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。美の力でよりよい世界を。それが、 私たちの企業使命です。

公式サイト

つまり、資生堂は美の可能性を広げ、新しい価値の発見・想像を行っている。その美の革新でより良い世界にする一環で、資生堂ギャラリーが運営されている、ということでしょうか。ただ資金を出すだけのメセナ活動とは違い、企業の考えとギャラリーの意義を紐付け、資生堂が主体的に運営していることをHPにわかりやすく書いていただくと納得感があると思いました。

▶︎ 「あいだ に あるものー1970年代の資生堂雑誌広告からー」

面白いタイポグラフィック
太田和彦:「シフォネット」などを担当した資生堂 宣伝制作室でアートディレクターを務めた方

資生堂ギャラリーは大きく2部屋のみで構成されています。大展示室では過去のポスターや雑誌広告を展示、小展示室ではそれらのビジュアルイメージを映像と音のインスタレーションにして展示しています。

大展示室(中央の机には、担当者の割印がある校正刷りや、実際の雑誌が置かれています)
小展示室
一番印象に残ったコピー。「ん、」を入れるセンスが面白い。「シフォネット」シリーズは前衛的すぎて、資生堂内で賛否両論を招いたそうです

全体で感じたことは、短いコピーとレイアウト(余白)の面白さでした。

化粧品の良し悪しは使ってみないと分からない。使ってみよう、手にとってみよう、その前にまずは目に留まることが大切です。そこで化粧品メーカーにとって、広告やラッピングが力を入れるポイントになります。

クリエイティブは、文字一つ、余白、その配置の使い方が1mm変わっただけでも印象がガラッと変わります。ライターやデザイナーの腕の見せ所でしょう。そこには無限の可能性があり、それが私には面白く感じました。

「あいだ に あるもの」という展覧会タイトルの「に」の前後に半角スペースが空いているのも面白いアイデアと思いました(今気づきました)。

資生堂の「アート & ヘリテージマネジメント部」とはどういう業務なのか、どういう社員がいるのか、気になる
資生堂を代表する「シフォネット」「ナチュラルグロウ」「MG5」など
「鏡との対話によって女性は完成されてゆく」。確かに、と思うコピーとともに、鏡が地面に置いてあるのが面白い
「爪ほど生き生きとしたアクセサリーはない」。言われてみれば確かに。ボディコピーにある”生きたアクセサリー”としてビジュアルに虫をもってくるのも斬新
「目は光。この生きた美しさを生かすものは?」。自動車のヘッドライトとモデルの目が連動している面白いアイデア。空の余白も良い
「ブラバス」の雑誌広告。商品の特徴とは全然関係ないコピー。中でも「もてますか、あなた」とは直接的過ぎて少し笑った
「MG5」の雑誌広告。文字の大きさ、余白、白黒の使い方、ビジュアルの大きさなど、同じ商品でも色々な見せ方がある
「モア」の雑誌広告。時代が変わると要素も大きく変わる。商品だけに色を入れて、コピーも近づかないと読めないくらい小さい。洗練された感じがする
子供が「あいだ」に書いた絵
地下に続く階段は少しワクワクする

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか。資生堂が考える「あいだ」やコピーの面白さが端的に伝わってきました。デザインやコピーに関する仕事をしている方、またそれに携わる企業の方にはインスピレーションが得られる展覧会だと思いました。また資生堂のクリエイティブの高さも伝わりました。

なお、このような場を通してもう少し直接的に資生堂のミッション、フィロソフィーが通じる工夫があれば良いと思いました。

▶︎ おまけ(統合報告書)

ギャラリーを作るくらい資生堂はクリエイティブに凝っているので、統合報告書はどうなのか見てみました。

冊子形式ではなく「オンライン 統合レポート」として、webでコンテンツをわかりやすく見せる工夫をしています。テキスト版も作成していますが、基本はwebページをA4にして体裁を整えているだけのようです(136ページと大ボリュームで読みきれない…)。

ある程度ビジュアライズされているものの、広告とは違い、HPのトンマナに合わせて報告書っぽいつくりになっています。全体から何となく資生堂っぽさは伝わってきますが、冒頭や各所に製品やビジュアルの写真を入れた方が、初めて資生堂を知る人にとって何の会社か分かりやすいと思いました。

オンライン 統合レポート」の内容は、基本的に会社HPに同じことが書かれているし、”統合報告書”をつくるのであれば、冊子形式の方が私は分かりやすいと思います。読者(投資家)はどう感じているのでしょうかね…?

▶︎ 今日の美術館飯

METoA Cafe & Kitchen (東京都/銀座駅) - パドルバーガーランチ (¥1,298)

▶︎ 補足

展覧会名:あいだ に あるものー1970年代の資生堂雑誌広告からー
場所:資生堂ギャラリー
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ー
会期:2023年6月6日(火)~7月30日(日)
住所:東京都中央区銀座 8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下 1階
アクセス:銀座駅から徒歩約10分
入場料(一般):無料
事前予約:不要
展覧所要時間:約15〜30分
混み具合:ストレスなし
展覧撮影:机の上の資料以外撮影可
URL:https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/

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