#眠れない夜に
君の重さを空の青さに覚える話。本当にその場の思いつき1場面物語
「それなら、私が囮になるよ」
全員が疲れきっていた。
状況は悪くなる一方で、どうしようもなかった。
崩れかけたコンクリートブロックの壁にもたれてマナカはそう言ってきた。
「いや、それは…」
「全員で抜け出そうよ」
「そ、そうよ。そんな一人見捨てるみたいな…」
昨日までは、こんなサバイバルを体験するとは思っていなかった。
誰も、覚悟なんて出来ないし、今あることも信じたくなかったんだと思う。
思いつき1場面物語。《猫とまたたび》
「猫じゃらしは好き。
だって楽しいもの。」
彼女はそう言って、尻尾をくねらせた。
私はふむふむとメモを取る。
─どんな猫じゃらしがお好きなんです?
彼女の額をワシャワシャっとしながら聞くと、彼女は気持ちよさそうにしながらこたえた。
「そうねぇ。キラキラしてたり、音がなったり、そういうのが楽しいから好き。」
私はまたふむふむとメモをとる。
彼女のガラス玉のような目が私の手をみている。
過去に書いた1場面物語
フカフカとしたシート。
ゴトゴトと揺れる足元。
流れてゆく景色には誰もおらず
窓に反射した自分だけが映る。
名前も知らない花達で埋め尽くされた風景に
少しだけ、ほんの少しだけ笑みが溢れる。
昼間の太陽とは違う、凍るような満月の光が
花畑を青白く照らしている。
熱くも寒くもない車内に一人きり。
外の匂いも感じない。
外はきっと花の香りに包まれている。
そして思っているより寒いはずだ。
『こ
思いつき一場面物語~屋上から~
大切にしたいと思うものは大抵、私の手元には残らないんだ。
と笑った彼女は、なんて名前だったけ?
よく考えれば、あの時に彼女が言った「大切にしたいと思うもの」は自分のことだったんじゃないか?
彼女が言うように、すっかり手元から離れて自分は彼女を薄っすらとしか覚えていない。
あんなに、毎日楽しく話していたのに。戯れあっていたのに。
薄情な奴だと彼女は思っているだろうか?
頭の中でぼんやりした光
一場面物語『サイドᗷ +』ふみ
「ふみはさ、俺のことちゃんと好きじゃん。」
資料をとめる作業を黙々こなしていた私の向かいに座った司はそんなことをいう。
私はチラッと、顔を上げて司を軽く睨む。
「俺の顔がどうだの、なんだのじゃなく、俺のこと好きでしょ?」
まるで独り言のようにそう言う。
私は作業する手をとめることなく、その、独り言に応える。
「うん」
「だから、ふみがいいんだよ。」
私は軽くため息をつく。
「とんだ告
過去の1場面物語~小さな夢の生まれる夜空~
これは1場面物語の独白の間。
過去→ある人の独白
未来→ある者の独白
そして今は小さな歩み。
埃っぽい棚にある埃っぽい箱を開けてみた。
そうしたら、中にはそれが入っていた。
私はそれを優しく撫でて埃を払った。
少し冷たくて、とても軽い。
「それなぁに?」
私の後ろにくっついてきた子達に
そう聞かれて皆の目の前でそれを広げた。
サラサラという音と共に柔らかく広がったそれは
ランプの光をうけて
過去の1場面物語~とある者の独白~
最初に思い出すものと
最後に思い出すものが
一緒というのは幸せだと僕は思う。
僕は始まりの為にいたから
始まってしまった今、終わらなければならない。
あの薄暗く湿った空間で君が目覚めたあの日から
「サヨナラ」に向かって僕は歩きだしていたんだ。
子供達のお喋りする声や
僕の親代わりの人との生活
自分が何者なのか悩んだ日々
そして、君が僕を呼ぶ。
それは、始まりの終わり。
終わりから始まりが
過去の1場面物語「君がつくる物語。僕が其処にいる理由。」
これは過去に書いた1場面物語。
少し手直し。
帰り道って、案外好きだよ。
「好き?」
「うん、好きっ。」
…なんだ、やっぱり好きなんじゃん――――
数歩手前で揺れる鞄につけられた間抜けな顔のサルと目が合った。
なんだか妙にその顔が面白く
声を殺して笑っていたら鞄の持ち主である彼女が振り返った。
慌てて顔をキリッとさせたが
「なに?何笑ってるの〜?」
隠せなかった。
無駄だったらし
1場面物語:彼女の物語『物語と踊る』
世界が物語のように捲られていくのを眺めている。
過ぎたページに戻ることは出来ず、先を見つめるしかない。
確かに刻まれたページが積まれ重みを感じる。
音から、一言から、広がっていく物語達。
それは幻想の世界。
しかし私の感じるものは時に
誰かの世界。
私の森に辿り着く物語と
ひととき踊りましょう。
そして風が連れていくでしょう。
見たこともないあなたの頬を撫で
私達は旅に出ます
1場面物語~風達の歌~
風の強い嵐の夜。
みんなは大木のウロに縮こまり朝になるのを待つことにしました。
『大丈夫かな?折れたりしない?』
まだ小さな子達は不安そうに揺れる枝を見ています。
『大丈夫。この木は私達を何時も護ってくれる。折れやしませんよ』
大きな子達がそう言ってなだめます。
風はまるで怒ったようにウワンウワン唸りみんなのいる大木を容赦なく揺らしていくのでした。
森の大木はウロに小さな仲間たちを招き