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「専業主婦」ならぬ中国「専業子供」たち②

  前回は中国で話題になっている「専業子供」の人物像とそれが増える一部の理由について見てきました。ぜひ↓をご覧ください。

 今回は引き続き、幾つか別の角度からも解析していきたいと思います。 


専業子供が増える理由

・高齢者の介護問題

    実家に住み、両親の世話をして、両親から給料をもらう人、いわゆる「専業子供」が増えるのは子供自身からの理由だけではなく、親世帯からくる理由もあります。
 端的に言うと、親は子供に世話してほしいし、世話が必要だから、です。
 中国統計局によると、2023年2月時点中国の60歳以上の人口は2.8億人で、全人口の19.8%を占めています(65歳以上は14.9% VS日本2020年時点65歳以上は総人口の28.7%)。つまり5人に1人が60歳以上です。その中の要介護の人口も比例して増えることになりますが、長年続いていた一人っ子政策の影響で子供一人が親二人、場合によって親の親まで介護しないといけないことになります。
 一方、中国では日本のように養老院(老人ホーム)や介護施設を利用する環境も意識も違います。少し昔の日本もそうだったかもしれないが、親を老人ホームを入れる子供は親孝行ではないと批判されてしまいます。外部内部の要因から結局今でも介護は家庭の中で行われるのは大半です。「養子防老」(子供を養うのは老後養ってもらうため)の意識が根強く、やはり子供にそばにいて世話してほしいのは親たちの本音です。
 仕事と介護の両立は特に地方にある実家から離れて都市部に働く人には難題です。

 記事に出たリーさんのケースも祖母の介護が子供を専業するきっかけになりました。ほぼ24時間体制で高度な介護が要る場合、アウトソーシングする費用もかなり高く、それを負担できるレベルの収入がなければ、子供にとって人を雇うより自分で介護したほうが経済的な選択肢になるでしょう。

・中国の親子関係

 介護が要る年齢になっていない親たちでも成人の子供が家に住み込むことを大歓迎しています。
 「専業子供」は20代~30代で独身の人がメインでその親たちは50〜60代の方が多いですが、中国では日本と比べて定年が早く(通常60歳、一部の女性は50歳)、そして60歳以上の高齢者の就業率も低いです。定年後の時間を自身で存分に使いながらも、子供と親密な関係を持ち続けるように学業や職場で挫折した子供を温かく近くで守りたいと考える親たちが多いです。子供が一人しかいないのも親子の関係性がこれまで以上に親密になっている理由になっていると思います。
 そして、中国経済成長の波に上手く乗って豊かになった親たちは経済力を持っています。成人した子供に仕送りなど金銭的な支援を期待していませんし、むしろ一人っ子である我が子を全力で支援してあげたいと思っています。ただし、当然それくらい経済的に豊かなのは一部の親だけと言う事実も忘れてはいけません。

・幸福観の変化

 中国人の「一切向銭看」(全てはお金のため)の価値観は急劇な経済成長の中で醸成され、強化されてきました。日本のメディアの影響で、日本人から見る中国人も「爆買いする人」、「インバウンドの主力」など物欲にまみれた人たちと言うイメージではないでしょうか。しかし、その価値観は明らかに変わりつつあります。
 高収入を目指して健康を犠牲するまで長時間労働するのは幸福から遠ざかることになり、それよりも精神的に余裕を持ち、親との一家団らんの時間を大事にしたいと考える人が一時的に専業子供になることを選んでいるのを言えます。

4.まとめ

 「専業子供」という現象を生み出したのは以上様々な社会背景あることを理解できましたら、短絡的に彼ら・彼女らを親のすねかじりと結論付けるのを避けられますでしょう。
 しかし、「専業子供」は一時的でキャッチなフレーズでしかなく、「専業主婦」のように市民権を得る言葉にはなり得ないと私は感じます。


Podcast:Nana在日本
個人HP:https://nana-zai-jp.com/



 

 



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